【会社法入門7】株式会社の機関設計を体系的に解説

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【会社法入門7】株式会社の機関設計を体系的に解説
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この記事を読んで理解できること
  • 機関設計の意義
  • 必須機関と機関設計のルール
  • 主要な機関設計のパターン
  • 各機関の概観
  • 試験答案の構成方法

「株式会社にはどんな機関を必ず置かなければならないの?」

「取締役会と監査役は必ずセットで置く必要があるの?」

「大会社ってどんな会社?機関設計でどう違ってくるの?」

会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

株式会社は法人であり、それ自体は意思を持ちません。そこで、株式会社が現実に意思を決定し行為するためには、株主総会・取締役・取締役会・監査役などの「機関」と呼ばれる仕組みを通じて活動する必要があります。

会社法は、すべての株式会社に共通する必須機関を定めたうえで、会社の規模や公開性に応じて追加的な機関の設置を強制する仕組み(機関設計の強制ルール)を採用しています。

機関設計を正しく理解することは、会社法の各論(株主総会、取締役の責任、株主代表訴訟など)を学ぶ上での基礎となります。本記事では、機関の意義から始め、必須機関と機関設計の強制ルール、典型的な機関設計のパターン、そして各機関の役割について、体系的に解説します。

この記事で学べること

  • 【初級】機関の意義と所有と経営の分離の関係
  • 【初級】株主総会と取締役という二つの必須機関
  • 【初中級】取締役会・監査役・会計監査人・監査役会の設置強制ルール
  • 【中級】代表的な機関設計の類型と各機関の役割
  • 【中級】指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の概要

第1章 機関設計の意義

1-1 機関とは何か

株式会社は法人であり、それ自体は意思や行為能力を持ちません。そこで、法人としての株式会社が現実に意思を決定し行為するためには、自然人や合議体に会社の意思決定や業務執行を担わせる仕組みが必要となります。

これが「機関」と呼ばれる仕組みです。

機関とは、その者の意思決定や行為が法律上当然に会社の意思決定・行為とみなされる地位にある者をいいます。

具体的には、株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、監査等委員会、指名委員会等が、会社法上の機関として定められています。

1-2 所有と経営の分離と機関の分化

株式会社の特徴の一つに、株主による所有と取締役による経営の分離があります。

株主は会社の実質的所有者ですが、株式の譲渡が原則として自由であるため、その構成は変動し、また経営の専門知識や時間的余裕を持たない者も含まれ得ます。

そこで、日常的な経営判断は経営の専門家である取締役らに委ね、株主は重要事項の決定と経営者の選任・監督を通じて会社をコントロールするという仕組みが採用されています。

もっとも、経営者に過度の権限を集中させると、経営者による濫用や株主利益の毀損が生じかねません。

そこで、会社の規模や公開性に応じて、業務執行を担う機関(取締役・代表取締役)、業務執行の決定とその監督を担う機関()、監督・監査を担う機関(監査役・監査役会・会計監査人)などを適切に組み合わせ、相互の牽制と監督を働かせる必要があります。

これが機関設計の基本的な発想です。

第1章 必須機関と機関設計のルール

会社法は、すべての株式会社に共通して必ず設置しなければならない機関を定めたうえで、会社の規模や公開性に応じて追加的な機関の設置を強制しています。

基本的な発想は、規模が大きくなるほど、また公開性が高まるほど、監督・監査の機関を厚くするというものです。

2-1 必須機関

すべての株式会社に必ず置かなければならない機関は、株主総会(会社法295条1項)と取締役(326条1項)の二つです。

株主総会は、会社の所有者である株主によって構成される最高意思決定機関であり、取締役は業務執行を担う機関です。

これらが置かれない株式会社は、そもそも株式会社として成立し得ません。

2-2 取締役会の設置強制

次の会社では、必ず取締役会を設置しなければなりません(327条1項)。

第一に、公開会社、第二に、監査役会設置会社、第三に、監査等委員会設置会社、第四に、指名委員会等設置会社です。

公開会社で取締役会が強制される趣旨は、潜在的に多数の株主が参加し得るため、株主自身が日常的に会社運営に関与することは現実的でなく、合議体としての取締役会による意思決定と相互監督に委ねる必要がある点にあります。

監査役会設置会社等で取締役会が強制されるのは、これらの監督機関は取締役会を前提に機能する仕組みとして設計されているからです。

2-3 監査役の設置強制

取締役会を置く会社には、原則として監査役を置かなければなりません(327条2項本文)。

これは、取締役会が置かれることで株主総会の権限が縮小し、株主によるコントロールが弱まるため、別の監督機関による補完が必要となるためです。

もっとも、(一)非公開会社で会計参与を置いた場合(同項但書)、(二)監査等委員会設置会社、(三)指名委員会等設置会社では、別の監督・監査の枠組みが設けられているため、監査役は置かれません。

2-4 会計監査人と監査役会の設置強制

会計監査人は、大会社(2条6号。資本金五億円以上または負債総額二百億円以上の会社)および指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では設置が強制されます(328条、327条5項)。

大会社で会計監査人が強制されるのは、規模の大きい会社が粉飾決算等を行えば社会的影響が大きいため、専門家による会計監査を必須としているからです。

監査役会は、大会社かつ公開会社で強制されます(328条1項)。

これは、規模が大きく株式が広く流通する会社では、監督の必要性が特に大きく、合議体としての監査役会が必要と考えられているためです。

機関

設置強制の場面

株主総会・取締役

すべての株式会社(295条1項・326条1項)

取締役会

公開会社、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社(327条1項)

監査役

取締役会を置く会社(327条2項。一定の例外あり)

会計監査人

大会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社(328条・327条5項)

監査役会

大会社かつ公開会社(328条1項)

第3章 主要な機関設計のパターン

以上のルールを踏まえると、日本の株式会社で多く採用されている機関設計は、概ね次の四類型に整理できます。

3-1 フルセット型(大規模上場会社など)

株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を置く類型です。大会社かつ公開会社の典型であり、多くの上場会社がこの設計を採用しています。

経営者に対する監督として、取締役会による相互監督に加え、監査役会による業務監査・会計監査と、会計監査人による会計監査が機能します。

3-2 中規模型

株主総会、取締役会、監査役を置く類型です。会計監査人や監査役会を必須としない中規模会社で広く用いられています。

3-3 小規模・閉鎖型

株主総会と取締役のみを置く類型(会計参与を加える場合もあります)です。

所有と経営が分離していない小規模会社、いわゆる「有限会社に近い」会社で多く採用されています。

3-4 委員会型

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の類型です。

取締役会の中に委員会を設けることで、業務執行と監督の分離を強化しています。

第4章 各機関の概観

4-1 株主総会

株主総会は、株主によって構成される会議体であり、会社の最高意思決定機関です。

取締役会設置会社では、株主総会は法律および定款の定めた事項に限り決議をすることができます(295条2項)。

これに対し、取締役会非設置会社では、株主総会は会社の組織・運営・管理その他一切の事項について決議できます(同条1項)。所有と経営の分離の表れです。

もっとも、(一)機関の選任・解任、(二)定款変更や事業譲渡、合併等の基礎的変更、(三)剰余金配当など株主の重要な利益に関する事項、(四)報酬の決定など他の機関に委ねると株主を害するおそれのある事項は、取締役会設置会社でも株主総会の決議事項とされています。

4-2 取締役と取締役会

(一)取締役

取締役は、株主総会の普通決議で選任され(329条1項)、いつでも解任できます(339条1項)。

もっとも、正当な理由なく解任された場合、取締役は会社に対して残任期分の報酬等の損害賠償を請求できます(同条2項)。

「正当な理由」の有無については、取締役の心身の故障や職務遂行上の法令・定款違反など、客観的にみて取締役を解任する合理性が認められるかが基準となります。

取締役の任期は、原則として選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(332条1項)。

非公開会社では、定款で最長十年まで伸長することができます(同条2項)。

(二)取締役会

取締役会は、すべての取締役で組織され(362条1項)、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を職務とします(同条2項)。

重要な財産の処分、多額の借財、支配人等の選任・解任、支店等の設置、社債の募集、内部統制システムの整備など、特に重要な業務執行については取締役会の専決事項とされ、個々の取締役に委ねることはできません(362条4項)。

「重要な財産の処分」(362条4項1号)に該当するかは、(一)財産の価額、(二)会社の総資産・経営利益率に占める割合、(三)財産の保有目的、(四)処分行為の態様、(五)会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断するというのが判例の立場です(最判平成6年1月20日民集48巻1号1頁)。

代表取締役は、対外的な業務執行および会社代表を担う機関であり、取締役会設置会社では取締役会の決議によって選定されます(362条3項)。

代表取締役の権限は、定款や取締役会の決議によって内部的に制限することができますが、その制限は善意の第三者に対抗できません(349条5項)。

4-3 監査役と監査役会

監査役は、取締役の職務執行を監査する機関であり(381条1項)、業務監査と会計監査の双方を職務とします。

ただし、非公開会社では、定款によって監査役の権限を会計監査に限定することもできます(389条1項)。

監査役会は、すべての監査役で組織され(390条1項)、その半数以上は社外監査役として、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりません(335条3項・390条3項)。

監査役会設置会社における監査役の任期は四年が原則です(336条1項)。

これは、取締役の任期(原則二年)よりも長く設定することで、取締役からの独立性を確保するためです。

4-4 会計監査人

会計監査人は、計算書類等の監査を職務とする外部の専門家機関であり、公認会計士または監査法人でなければなりません(337条1項)。

会計監査人の選任・解任は、株主総会の決議によります(329条1項・339条1項)。

会計監査人と監査役は協働して会計監査を行います。たとえば、会計監査人の選解任議案の内容は監査役(会)が決定し(344条等)、会計監査人の独立性確保が図られています。

4-5 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社

(一)指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、取締役会のもとに指名委員会、監査委員会、報酬委員会の三委員会を設置し、各委員会の委員の過半数を社外取締役で構成する仕組みです(2条12号、400条以下)。

指名委員会は取締役の選解任議案の内容を決定し、監査委員会は取締役・執行役の職務執行を監査し、報酬委員会は取締役・執行役の個別報酬を決定します。

業務執行は取締役ではなく執行役が担います(418条)。

取締役会は重要事項の決定と執行役の監督に専念する設計となっており、業務執行と監督の分離(モニタリング・モデル)が徹底されています。

(二)監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は、取締役会のもとに監査等委員会を設置する仕組みです(2条11号の2、399条の2以下)。

監査等委員会は三人以上の監査等委員である取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません(331条6項)。

指名委員会等設置会社と異なり、指名委員会と報酬委員会は置かれず、監査役会設置会社の監査役の機能と類似した役割を監査等委員会が担います。

指名委員会等設置会社よりも組織変更の負担が軽く、近年導入する会社が増えています。

4-6 各機関の関係性

以上の各機関は、相互に独立した存在ではなく、有機的に連関しながら会社のガバナンスを支えています。

たとえば、株主総会が取締役を選任し(329条1項)、取締役会が代表取締役を選定し(362条3項)、代表取締役が業務を執行する一方で、取締役会・監査役(会)・会計監査人がそれぞれ別の角度から業務執行・会計を監督するという構造になっています。

各機関の関係性を理解することは、たとえば取締役の責任(423条・429条)、株主代表訴訟(847条)、取締役会決議の瑕疵などの応用論点を学ぶ際の基礎となります。

機関設計の類型

典型例

株主総会+取締役のみ

小規模・閉鎖型の会社

株主総会+取締役会+監査役

中規模会社の標準型

株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人

大会社かつ公開会社(上場会社)の典型

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社

監督と業務執行の分離を志向する会社

第5章 試験答案の構成方法

5-1 機関設計が問題となる事案の答案構成

機関設計の適法性が問題となる事案では、まず会社の属性(公開会社か否か、大会社か否か)を確定し、次に各設置強制ルールへの抵触の有無を順次検討する流れになります。

【答案構成の流れ】

・問題提起:本件の機関設計は会社法上適法か

・会社属性の確定:(一)公開会社かどうか(2条5号)、(二)大会社かどうか(2条6号)

・規範定立:必須機関(295条1項・326条1項)に加え、公開会社では取締役会・監査役の設置強制(327条1項1号・2項)、大会社では会計監査人の設置強制(328条)、大会社かつ公開会社では監査役会の設置強制(328条1項)

・あてはめ:本件会社の属性をルールに当てはめ、必要な機関が置かれているかを確認する

・結論:機関設計の適否を判断する

5-2 株主総会の権限拡張が問題となる事案

取締役会設置会社における株主総会の権限拡張(295条2項)が問題となる事案では、定款による拡張が会社の本質や強行法規に反しないかが中心的な判断要素となります。

たとえば、代表取締役の選定権を取締役会のみに認めた362条2項3号の趣旨は取締役会による代表取締役の監督機能の確保にあるところ、取締役会の決議に加えて株主総会の決議によっても代表取締役を選定できる旨の定款規定であれば、取締役会の監督機能を実質的に害するとはいえず、有効と解されます。

まとめ

株式会社の機関について、本記事では以下の点を解説しました。

・株式会社は法人であり、株主総会・取締役・取締役会・監査役・会計監査人等の機関を通じて意思決定と業務執行を行う

・すべての株式会社で必ず置かなければならない機関は、株主総会(295条1項)と取締役(326条1項)である

・公開会社、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社では取締役会の設置が強制される(327条1項)

・取締役会を置く会社では、原則として監査役を置かなければならない(327条2項)

・大会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では会計監査人の設置が強制され(328条等)、大会社かつ公開会社では監査役会も強制される(328条1項)

・代表的な機関設計の類型は、(一)株主総会と取締役のみの小規模型、(二)株主総会・取締役会・監査役の中規模型、(三)フルセット型、(四)委員会型に整理できる


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