【会社法入門3】株式譲渡自由の原則と譲渡制限を徹底解説
目次
この記事を読んで理解できること
- 株式譲渡自由の原則
- 法律による株式譲渡の制限
- 定款による株式の譲渡制限
- 契約による株式の譲渡制限
- 試験答案の構成方法
「株式は自由に譲渡できるはずなのに、なぜ譲渡制限という制度があるの?」
「会社の承認を得ずに譲渡制限株式を譲渡したら、その譲渡は無効になるの?」
「従業員持株制度のような契約による譲渡制限は、どこまで有効?」
会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
会社法は、「株主は、その有する株式を譲渡することができる」(会社法127条)と定め、株式譲渡自由の原則を明らかにしています。
これは、株主にとって投下資本を回収するための重要な手段を保障する規律です。
もっとも、この自由は無制限ではなく、(一)法律による制限、(二)定款による制限、(三)契約による制限という三つの場面で例外が認められています。
特に、定款による株式の譲渡制限と、これをめぐる承認なき譲渡の効力に関する論点は、予備試験・司法試験の重要論点です。
本記事では、株式譲渡自由の原則とその例外、譲渡制限株式の譲渡手続、承認なき譲渡の効力など、判例の到達点を含めて整理します。
この記事で学べること
- 【初級】株式譲渡自由の原則とその趣旨
- 【初中級】法律・定款・契約による三種類の譲渡制限
- 【中級】定款による譲渡制限の制度と承認手続
- 【中上級】承認なき譲渡の効力に関する判例理論
- 【中上級】契約による譲渡制限(従業員持株制度)の有効性
第1章 株式譲渡自由の原則
1-1 原則
会社法127条は「株主は、その有する株式を譲渡することができる」と定め、株式譲渡自由の原則を採用しています。
この原則の趣旨は、株主の投下資本回収の機会を確保する点にあります。
すなわち、株式会社では、株主有限責任の原則を支えるため、出資の払戻しは分配可能額の範囲内でしか許容されません(自己株式の取得規制〔156条以下〕、剰余金分配規制〔461条〕)。
そのため、株主が拠出した資金を回収するためには、株式を第三者に譲渡することが事実上唯一の手段となります。
仮にこの譲渡まで自由が認められないとすれば、株主は出資を回収できずに会社に縛られることになり、不当な結果を招きます。
また、株式会社では所有と経営の分離が前提とされているため、株主が誰であるかは原則として会社経営に大きな影響を与えません。
この点も、譲渡を自由とすることが許される理由の一つです。
1-2 例外─三種類の譲渡制限
もっとも、株式譲渡自由の原則も絶対的なものではなく、次の三つの場面で例外が認められます。
第一は法律による制限、第二は定款による制限、第三は契約による制限です。各制限の根拠と性格は次のとおり整理できます。
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制限の根拠 |
概要 |
代表例 |
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法律による制限 |
会社法その他の法令により譲渡が制限される場面 |
権利株の譲渡(35条等)、株券発行前の譲渡(128条2項)、子会社による親会社株式取得制限(135条) |
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定款による制限 |
定款で株式に譲渡制限を設けることにより、会社の承認を要する場面 |
全部の株式に譲渡制限(107条1項1号)、特定種類の株式に譲渡制限(108条1項4号) |
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契約による制限 |
株主間契約等によって譲渡を制約する場面 |
従業員持株制度における売渡強制条項など |
第2章 法律による株式譲渡の制限
2-1 時期による制限
会社法は、株式が成立する前あるいは株券発行前といった時期について、譲渡を制限する規定を置いています。
第一に、権利株(会社成立前または新株発行前の株式引受人の地位)の譲渡は、会社に対しては対抗できません(35条、50条2項、63条2項、208条4項)。
これは、会社の事務処理上の混乱を避けるため、株主の確定を画一的に行う必要があるためです。
第二に、株券発行会社における株券発行前の株式譲渡も、会社に対しては効力を生じません(128条2項)。
もっとも、この規定は会社の事務処理の便宜を図ったものに過ぎないため、当事者間では譲渡は有効です。
さらに、会社が不当に株券発行を遅滞しているような場合には、会社はもはや事務処理の便宜を主張するに値しないため、信義則上、会社との関係でも譲渡の効力を認めることができると解されています(最大判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁)。
2-2 子会社による親会社株式取得の制限
子会社は、原則として親会社の株式を取得することができません(135条1項)。
これは、子会社による親会社株式の取得を許容すると、会社財産の空洞化を招き、また親会社経営陣による支配の強化に濫用されるおそれがあるためです。
もっとも、合併や事業譲受けに伴って親会社株式を承継する場合など、一定の例外が認められています(同条2項)。
第3章 定款による株式の譲渡制限
3-1 制度の概要
会社は、定款に定めることにより、株式の譲渡について会社の承認を要する旨を定めることができます。
発行する全部の株式について譲渡制限を設ける場合には107条1項1号、種類株式の一部にのみ譲渡制限を設ける場合には108条1項4号が適用されます。
譲渡制限の趣旨は、閉鎖的な会社において、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止する点にあります。
中小企業や同族会社のように、株主構成を一定範囲に限定したい会社にとって、不可欠な制度といえます。
譲渡制限の有無は、登記事項とされており(911条3項7号)、株券発行会社では株券にも記載されます(216条3号)。
譲渡制限の事実が登記されていなければ、会社は善意の譲受人に譲渡制限の効果を対抗することができません(908条1項)。
3-2 譲渡承認の手続
譲渡制限株式の譲渡について会社の承認を求める手続は、概ね次の流れで進みます。
まず、譲渡をしようとする株主または株式取得者が、会社に対して譲渡承認の請求を行います(136条、137条)。
会社は、これに対して承認するか否かを決定し、請求者に通知します(139条)。
承認機関は、原則として、取締役会設置会社では取締役会、それ以外では株主総会です(139条1項)。
もっとも、定款で別段の定めをすることもできます(同項但書)。
会社が譲渡を承認しない場合、譲渡を希望する株主の投下資本回収の機会を確保するため、会社自身が当該株式を買い取るか(140条1項)、または買取人(指定買取人)を指定することになります(140条4項)。
会社が買い取る場合には株主総会の特別決議が必要です(140条2項、309条2項1号)。
買取人を指定する場合は、取締役会設置会社では取締役会の決議で足ります(140条5項)。
これらの手続には期間制限があり、会社が承認の決定や買取人の通知を一定期間内に行わなかった場合、譲渡が承認されたものとみなされます(145条、いわゆるみなし承認)。
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手続 |
条文・内容 |
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承認請求 |
譲渡人(136条)または株式取得者(137条)から会社へ |
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承認の決定機関 |
取締役会(取締役会設置会社)または株主総会(139条1項)。定款による別段の定めも可 |
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不承認の場合の措置 |
会社による買取(140条1項、総会特別決議要)または指定買取人による買取(140条4項) |
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みなし承認 |
一定期間内に通知がない場合、承認したものとみなされる(145条) |
3-3 承認なき譲渡の効力
会社の承認を経ずに譲渡制限株式が譲渡された場合、その譲渡の効力をどのように考えるかが問題となります。
この点について判断を示した重要判例が、最判昭和48年6月15日民集27巻6号700頁です。
最高裁は、株式の譲渡につき会社の承認を要する旨の定款の規定は、もともと会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主の利益を保護する目的によるものであるとし、かかる目的を達成するためには、当該定款の規定は会社に対する関係において譲渡を無効としうるものとすれば足り、譲渡当事者間においては有効と解すべきであると判示しました。
すなわち、判例の立場では、承認なき譲渡は、(一)会社との関係では無効であるが、(二)譲渡当事者間においては有効ということになります。
これは、譲渡制限の趣旨を達成しつつ、譲渡当事者の意思を尊重するというバランスの取れた解釈といえます。
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関係 |
効力 |
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会社との関係 |
効力を生じない(承認を経るまで譲渡人を株主として扱う) |
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譲渡当事者間 |
有効 |
3-4 譲渡人を株主として扱う義務
承認なき譲渡が会社との関係で効力を生じないとしても、会社は譲渡人と譲受人のどちらを株主として扱うべきでしょうか。
この点について、最判昭和63年3月15日判時1273号124頁は、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務があるとしました。
その理由は、譲渡が会社との関係では無効である以上、譲受人を株主として扱うことはできないことにあります。
また、譲受人を株主として扱うか否かの裁量を会社に与えると、会社が裁量を濫用する危険があることも考慮されていると考えられます。
したがって、会社は、定款の譲渡承認を経るまでは、譲渡人を株主として取り扱わなければなりません。
会社が任意に譲受人を株主として扱うことも、原則として許されないと解されています。
3-5 例外─株主全員の同意がある場合
もっとも、譲渡人以外の株主全員が譲渡に同意している場合(典型的には一人会社の場合)には、承認なき譲渡も会社との関係で有効となると解されています。
なぜなら、このような場合には、譲渡制限の趣旨である「他の株主の利益保護」を考慮する必要がなく、株主全員の同意は実質的に株主総会の承認があったのと同視できるためです。
この点を判示した重要判例が、最判平成5年3月30日民集47巻4号3439頁です。
最高裁は、いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効であると判断しました。
これは、取締役会承認を要求する趣旨が他の株主の利益保護にある以上、その他の株主が存在しない一人会社では同趣旨が妥当しないとする実質的判断によるものです。
また、譲渡承認機関が定款上は取締役会とされている場合であっても、株主総会決議や株主全員の同意をもってこれに代えることができると解されています。
これは、139条が承認機関を取締役会としている趣旨が迅速な処理を図る点にあり、株主総会は取締役会の上位機関であるため、より厳格な決議で代替することは許容されるという考え方によるものです。
第4章 契約による株式の譲渡制限
4-1 契約による譲渡制限の有効性
定款に譲渡制限の定めがなく、株主間の契約や、株主と会社との契約によってのみ譲渡が制限されている場合、その契約の有効性が問題となります。
契約自由の原則が妥当する以上、当事者が契約の意味を理解し、自由な意思の下で合意した契約は、原則として有効と解されます。
もっとも、127条が株式譲渡を原則として自由とした趣旨は株主の投下資本回収を可能にする点にありますから、契約による譲渡制限が株主の投下資本回収の機会を著しく制約する場合には、譲渡自由の原則および公序良俗(民法90条)に反し無効となると解されています。
4-2 従業員持株制度
契約による譲渡制限の典型例が、従業員持株制度です。従業員持株制度とは、会社の従業員が自社株を買い付け、または保有することを会社が推進する制度であり、奨励金の支給など特別の便宜を会社が図るのが通常です。
制度の目的は、従業員の財産形成、勤労意欲・経営参加意識の高揚、安定株主の形成などとされます。
実務上は、会社からの離職時に取得時の価格で会社や指定買取人に売り渡すことを義務付ける条項(売渡強制条項)が設けられることが多くあります。
最判平成7年4月25日集民175号91頁は、こうした従業員持株制度における売渡強制条項について、譲渡価格を取得価格と同額とし退職時に取締役会の指定する者に譲渡する旨の合意を、従業員が制度の趣旨内容を了解した上で株式を取得し相当の配当を受けていた等の事実関係のもとで、商法204条1項(現行会社法127条の前身規定)に違反するものではなく、公序良俗にも反せず、有効であると判断しました。
最高裁は、従業員持株制度の目的、譲渡制限の合理性、配当の有無や水準などを総合的に考慮して、契約の有効性を判断する枠組みを採用しています。
学説・判例上は、契約の有効性を判断するにあたり、(一)買取人が会社の指定する者に限定されること、(二)将来の一定事由(退職等)による売渡が強制されること、(三)譲渡価格があらかじめ固定されること──といった各要素について、合理性および投下資本回収可能性の観点から検討する必要があります。
各要素の判断指針を整理すると、まず買取人の指定については、会社法自身が定款による譲渡制限のもとで指定買取人による買取りを認めている(140条4項)ことに照らし、譲渡相手の選択の自由を制約することのみをもって直ちに無効とはいえないと解されています。
次に、退職時の売渡強制については、買取人を見つけにくい閉鎖会社では、むしろ株主の投下資本回収を保障する側面もあるため、合理性が認められやすい要素です。
これに対し、譲渡価格の固定については慎重な判断が必要です。
算定方法そのものに合理性があれば、結果として譲渡時点の実際の株価を下回っていても直ちに無効とはなりません。
もっとも、取得時の価格をそのまま譲渡価格として固定するような契約は、株式価格の上昇による利益取得が不可能となり、実質的な投下資本回収が困難となるため、配当が極端に低水準に抑制されている場合などには、公序良俗違反として無効となる可能性があります。
4-3 譲渡制限契約が脱法行為となる場合
契約による譲渡制限は、現経営陣の支配権維持のために濫用される危険があります。
会社法は、定款による譲渡制限について株主総会の特殊決議や反対株主の株式買取請求権を要求することで(309条3項1号、116条1項1号)、株主の権利を厳格に保護していますが、これを契約という形式で潜脱することは許されません。
この点について、株式の譲渡について会社(その代表取締役ないし取締役会)の同意を要求するタイプの契約上の譲渡制限は、取締役ないし経営陣に都合のよい者に対する株式譲渡だけが承認されるという形で、会社の経営者支配に利用される危険があります。
そこで、契約が締結された状況や内容しだいでは、譲渡制限株式制度(会社法127条以下)の脱法行為として、会社法の趣旨に反し無効になると解する立場が有力です。
第5章 試験答案の構成方法
5-1 承認なき譲渡の効力に関する答案構成
予備試験や司法試験で、譲渡制限株式の承認なき譲渡の効力が問題となる事案では、以下の流れで答案を構成することが考えられます。
【答案構成の流れ】
・問題提起:譲渡制限株式の承認なき譲渡(127条、107条1項1号、108条1項4号)について、譲渡当事者間および会社との関係でそれぞれ効力をどう考えるか
・規範定立:譲渡制限の趣旨は、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主の利益を保護する点にある。この趣旨を達成できる限度で取引の効力を否定すれば足りる
・判断基準:そこで、(一)会社との関係では効力を生じないが、(二)譲渡当事者間では有効と解する(最判昭和48年6月15日)
・補足の規範:もっとも、譲渡人以外の株主全員が同意している場合(一人会社等)には、譲渡制限の趣旨が妥当しないため、会社との関係でも有効となる
・あてはめ:本件譲渡が承認を経ているか、株主全員の同意があるかを具体的に検討する
・結論:本件譲渡の効力を会社・当事者それぞれの関係について結論づける
まとめ
株式譲渡について、本記事では以下の点を解説しました。
・株式譲渡自由の原則(127条)は、株主の投下資本回収の機会を保障する点にその趣旨がある
・株式譲渡自由には、(一)法律による制限、(二)定款による制限、(三)契約による制限の三種類の例外がある
・定款による譲渡制限(107条1項1号、108条1項4号)は、閉鎖的な会社において好ましくない者の株主化を防止する制度であり、譲渡には会社の承認が必要となる
・最判昭和48年6月15日は、承認なき譲渡について、会社との関係では効力を生じないが、譲渡当事者間では有効と判示した
・承認を経ない以上、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務を負う(最判昭和63年3月15日)
・譲渡人以外の株主全員が同意している場合(一人会社等)には、例外的に承認なき譲渡も会社との関係で有効となる(最判平成5年3月30日)
・契約による譲渡制限は契約自由の原則の下で原則有効だが、投下資本回収の機会を著しく制約する場合は公序良俗(民法90条)違反として無効となる。従業員持株制度における売渡強制条項を有効と判断した最判平成7年4月25日が代表例である。


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