【会社法入門①】株主の権利・責任と株主平等原則を解説
目次
この記事を読んで理解できること
- 株主とは何か
- 株主の権利
- 株主の責任
- 株主平等原則
- 試験答案の構成方法
「会社の所有者は誰なのか?」
「株主には具体的にどのような権利があるのか?」
「会社が倒産したら、株主はどこまで責任を負うのか?」
会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
株式会社制度の中核を担うのが「株主」です。株主は、株式を保有することによって会社の構成員(社員)としての地位を取得し、株主としての権利を行使するとともに、株主有限責任の原則のもとで一定の責任を負います。
株主の権利・責任は、株式会社制度の根幹を支える基本的な事項であり、会社法を理解するうえで最初に押さえるべき分野といえます。
もっとも、株主の権利・責任については、その種類や行使方法、株主平等原則との関係など、整理すべき論点が多く、初学者には全体像が掴みにくい分野でもあります。
また、会社法は平成十七年に制定された比較的新しい法律であり、それ以前の判例は商法旧規定下のものである点に留意する必要があります。
本記事では、株主の権利・責任の全体像と、株主平等原則を中心に、予備試験・司法試験で問われる重要論点を解説します。
この記事で学べること
- 【初級】株主の意義と株主資格の取得方法
- 【初級】自益権と共益権の区別
- 【初中級】単独株主権と少数株主権の区別
- 【中級】株主有限責任の原則の意義
- 【中級】株主平等原則の二つの意味
- 【中上級】株主平等原則の例外──ブルドックソース事件の判断枠組み
第1章 株主とは何か
1-1 株式と株主の意義
株式会社の構成員(社員)としての地位を「株式」といい、その地位を有する者を「株主」といいます。株式は、会社に対する出資者の地位を、細分化された割合的単位の形で表したものです。
株主は、会社に対する出資の対価として株式を取得することにより、会社法上認められた多様な権利を行使することができます。具体的にどのような権利があるのかは、会社法105条1項以下に規定されています。
1-2 株主資格の取得方法
株主資格を取得する方法は、大きく二つに分けることができます。
第一は、出資による原始取得です。会社設立時の発起人や、設立後の募集株式の発行において株式を引き受ける者は、出資の履行を完了することによって株主となります(34条1項、50条1項、63条1項、209条1項)。
第二は、株式の承継取得です。すでに株主となっている者から株式を譲り受けること(特定承継)や、相続・合併などによって株式を承継すること(包括承継)により、株主資格を取得します。
なお、ここでの「譲渡」とは、原則として売買などの特定承継を意味し、相続や組織再編による包括承継は含まれない点に注意が必要です。
第2章 株主の権利
会社法105条1項は、株主の権利として三つを例示しています。
すなわち、①剰余金の配当を受ける権利(同項1号)、②残余財産の分配を受ける権利(同項2号)、③株主総会における議決権(同項3号)です。これらに加え、株主は会社法上、多様な権利を有しています。
これらの株主の権利は、その性質によって、(一)自益権と共益権、(二)単独株主権と少数株主権という二つの観点から整理することができます。
さらに、特殊な性質を有する権利として、株式買取請求権があります。
2-1 自益権と共益権
2-1-1 自益権の意義
自益権とは、株主が会社から経済的利益を受ける権利をいいます。
代表的なものは、剰余金配当請求権(105条1項1号・453条)と残余財産分配請求権(105条1項2号・502条)です。
会社の営利性に鑑み、株主はこの二つの権利のいずれも与えられない株式を発行することはできないとされています(105条2項)。
すなわち、剰余金の配当も残余財産の分配も受けられないという株式は、株式の本質に反するため、定款で発行することはできません。
2-1-2 共益権の意義
共益権とは、株主が会社の経営に参与し、または会社の経営を監督是正する権利をいいます。
中核となるのは株主総会における議決権(105条1項3号・308条)であり、これに付随する権利として、株主総会における質問権(314条)、株主提案権(303条以下)、株主総会招集請求権(297条)などがあります。
監督是正権としては、株主代表訴訟提起権(847条)をはじめとする各種の訴訟提起権や、計算書類等の閲覧請求権(442条3項)などが挙げられます。
注意すべきは、共益権も自益権と同様に株主自身の利益のために行使することができるという点です。
共益権という名称ゆえに会社の利益のために行使しなければならないという誤解が生じやすいですが、株主は自己の経済的利益を守るために議決権や訴訟提起権を行使することができます。
また、共益権は一身専属権ではなく、相続によって承継することが認められると解されています。
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区分 |
意義と具体例 |
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自益権 |
会社から経済的利益を受ける権利。剰余金配当請求権(105条1項1号・453条)、残余財産分配請求権(105条1項2号・502条)、株式買取請求権など |
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共益権 |
会社の経営に参与・監督是正する権利。議決権(308条)、質問権(314条)、株主提案権(303条以下)、株主総会招集請求権(297条)、株主代表訴訟提起権(847条)など |
2-2 単独株主権と少数株主権
株主の権利は、その行使に持株要件が必要かどうかによって、単独株主権と少数株主権に分けることもできます。
単独株主権とは、一株でも株式を保有する株主であれば行使できる権利をいいます。
剰余金配当請求権や議決権は、その典型例です。
少数株主権とは、行使のために一定の議決権数または株式数を有することが必要とされる権利をいいます。
少数株主権について持株要件が課されている趣旨は、こうした権利の行使は会社運営に大きな影響を与えるため、少数株主による濫用的な権利行使を防止する点にあります。
また、公開会社では、株主代表訴訟提起権や株主総会招集請求権など一定の権利について、株式の継続保有期間(原則として六か月以上)が要求されることもあります(847条1項本文等)。
これも、権利行使を目的とする株式の短期取得を防止する趣旨です。
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権利 |
性質 |
持株要件等 |
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議決権 |
単独株主権 |
一株でも可 |
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株主代表訴訟提起権(847条) |
単独株主権 |
公開会社では六か月の継続保有要件 |
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株主総会招集請求権(297条) |
少数株主権 |
総株主の議決権の百分の三以上を六か月以上継続保有 |
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株主提案権(303条) |
少数株主権 |
総株主の議決権の百分の一以上または三百個以上を(公開会社では六か月以上継続)保有 |
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役員解任の訴え(854条) |
少数株主権 |
総株主の議決権の百分の三以上を六か月以上継続保有 |
2-3 株式買取請求権
株式買取請求権とは、株主が自己の有する株式を「公正な価格」で買い取ることを会社に請求する権利です。
これは自益権の一種であり、株主の投下資本回収の機会を保障する重要な制度といえます。
株式買取請求権が認められる代表的な場面は、次のとおりです。
第一は、会社が株主の利益に重大な影響を及ぼす行為を行うときに、これに反対する株主が買取請求をする場合です。
具体的には、事業譲渡(469条)、合併・株式交換・株式移転・会社分割といった組織再編行為(785条等)、定款変更により全部の株式に譲渡制限を設ける場合や全部取得条項を付与する場合(116条1項1号・2号)などが挙げられます。
第二は、単元未満株主の買取請求(192条)です。
単元未満株式の保有者は、いつでも会社に対して買取請求をすることができます。
「反対株主」として買取請求をするためには、原則として、株主総会に先立って当該行為に反対する旨を会社に通知し、かつ、株主総会において反対の議決権を行使することが必要とされます(116条2項、469条2項等)。
これは、会社側の事前準備や手続の安定を図るための要件です。
第3章 株主の責任
3-1 株主有限責任の原則
会社法104条は「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする」と規定しています。
これを「株主有限責任の原則」といい、株式会社制度の最も重要な特徴の一つです。
株主有限責任の原則の意義は、株主が引き受けた株式の払込みを完了した以上、株主は会社や会社債権者に対し、それを超える追加的な責任を一切負わないという点にあります。
たとえ会社が倒産して債権者への弁済が不可能となった場合でも、株主の個人財産にまで責任が及ぶことはありません。
この原則の趣旨は、株主が負うリスクを限定することによって、広く一般の投資家からの出資を可能とし、大規模な資本集積を促進する点にあります。
すなわち、有限責任があるからこそ、株主は安心して投資を行うことができ、株式会社は社会的に必要な資本を調達することが可能となるのです。
もっとも、株主有限責任の裏返しとして、会社財産だけが会社債権者の引当てとなるため、会社債権者保護のための様々な規律(資本金制度、剰余金分配規制(461条)、自己株式取得規制(156条以下)など)が設けられている点にも注意が必要です。
3-2 株主と債権者の違い
株主と会社債権者の違いは、株主有限責任の原則と密接に関連します。
両者の主な相違点は次のとおりです。
第一に、権利内容の確定性の差異です。債権者の権利(債権)の内容は契約等によって確定しているのに対し、株主の権利(特に剰余金配当)の内容は未確定であり、会社の業績や株主総会・取締役会の決議に依存します(454条参照)。
第二に、劣後性です。会社が清算する場合、残余財産分配や剰余金配当において、株主は債権者に劣後します。
すなわち、債権者に対する弁済が完了して初めて、残余財産が株主に分配されることになります。
第三に、共益権を通じた会社経営のコントロールが可能である点です。
債権者は、原則として会社の経営に直接関与することはできませんが、株主は議決権をはじめとする共益権の行使を通じて会社経営に参与することができます。
このように、株主は会社の所有者として広範な権利を有する一方で、会社債権者よりも劣後的な地位に置かれているといえます。
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比較項目 |
株主 |
会社債権者 |
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権利内容 |
未確定(業績に依存) |
契約等で確定 |
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弁済順位 |
債権者に劣後 |
株主に優先 |
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経営参加 |
共益権により可能 |
原則不可 |
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責任範囲 |
引受価額を限度(104条) |
─ |
第4章 株主平等原則
4-1 意義と趣旨
会社法109条1項は「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない」と規定しており、これを「株主平等原則」といいます。
株主平等原則の趣旨は、二点に集約することができます。
第一に、株式投資による収益の予測可能性を高め、株式投資を促進することです。
投資家は、自己が保有する株式の内容と数に応じた取扱いが保障されることで、安心して株式に投資することができます。
第二に、多数株主による濫用から少数株主を保護することです。
多数株主が自己の影響力を背景に少数株主を恣意的に不利益に取り扱うことは、株主平等原則によって禁じられます。
このように、株主平等原則は単なる形式的な平等を要求するものではなく、株式会社制度に対する投資家の信頼を支える基盤として機能しています。
4-2 二つの意味──比例的平等と頭数平等
株主平等原則は、その内容として二つの意味を含むと解されています。
第一は、比例的平等です。
これは、会社は株主を持株数に比例して平等に扱わなければならないことをいいます。
剰余金配当において持株数に応じた配当を行うことや、議決権が一株一議決権を原則とすること(308条1項本文)は、その典型的な現れです。
第二は、頭数平等です。
これは、会社は株主を持株数にかかわらず平等に扱わなければならないことをいいます。
たとえば、株主総会における着席位置の決定や、株主への各種通知の発送方法などについては、持株数を問わず平等な取扱いが求められます。
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種類 |
内容と具体例 |
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比例的平等 |
持株数に比例した取扱い。剰余金配当、議決権の数(一株一議決権)など |
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頭数平等 |
持株数を問わない取扱い。株主総会の着席位置、株主への通知方法など |
4-3 違反の効果
株主平等原則に違反する会社の行為は、原則として無効と解されています。
これは、株主平等原則が少数株主保護を目的とする強行規定であることに由来します。
ただし、後述するように、株主平等原則も絶対的なものではなく、合理的理由に基づく区別までを禁止するものではないと解されており、一定の例外が認められます。
4-4 株主優待制度との関係
株主優待制度は、一定数以上の株式を保有する株主に対して、会社が金品やサービス券などを交付する制度であり、上場会社を中心に広く採用されています。
しかし、株主優待は持株数に必ずしも比例して交付されないため、株主平等原則に反するのではないかが問題となります。
この点、株主平等原則は、合理的な理由に基づく一定の区別までを禁止するものではないと解されています。
そこで、①優待制度に合理的な理由があり、かつ②その取扱いの程度が軽微である場合には、株主平等原則には反しないと考えるのが一般的です。
合理性の判断要素としては、株式投資の促進や自社製品・サービスの宣伝・販売促進などが挙げられます。
これらの目的が認められる場合には、合理性が肯定される傾向にあります。
一方、特定の株主のみを優遇するような取扱いは合理性を欠き、後の章で扱う利益供与(120条1項)に該当しうる可能性もあるため、注意が必要です。
なお、株主優待が現物配当としての性格を有する場合には、剰余金配当の規律(454条3項の持株数比例原則)が適用されることになり、その厳格性に注意が必要です。
優待制度の趣旨・目的・内容・方法・効果を総合考慮して、配当としての性格を有するか否かが判断されます。
4-5 株主平等原則の例外──ブルドックソース事件
株主平等原則の例外がいかなる場合に認められるかについて、最高裁が初めて正面から判断を示した重要判例が、最決平成19年8月7日民集61巻5号2215頁(いわゆるブルドックソース事件)です。
この事件は、敵対的買収者に対する買収防衛策として、会社が当該買収者を差別的に取り扱う新株予約権の無償割当てを行ったことが、株主平等原則に反するかが争われたものです。
最高裁は、株主平等原則の趣旨は会社法109条1項に明文化されているものの、個々の株主の利益は、一般的には会社の存立、発展なしには考えられないため、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立、発展が阻害されるおそれが生ずるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても、衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、これを直ちに同原則の趣旨に反するということはできないと判断しました。
この判例の重要なポイントは、株主平等原則を「形式的な平等」ではなく「衡平の理念」として捉え、会社の企業価値や株主共同の利益という観点から、差別的取扱いの相当性を判断する枠組みを示した点にあります。
もっとも、買収防衛策をめぐる議論は、新株予約権無償割当て(277条以下)、有利発行規制、機関設計などとも関係する複雑な領域であり、その詳細については、後の章で改めて取り上げることとします。
第5章 試験答案の構成方法
5-1 株主平等原則違反の答案構成
予備試験や司法試験において株主平等原則違反が問題となる事案では、以下の流れで答案を構成することが考えられます。
【答案構成の流れ】
・問題提起:本件における会社の取扱いが、株主平等原則(109条1項)に違反するか
・規範定立:株主平等原則の趣旨は、①株式投資による収益の予測可能性を確保することにより株式投資を促進する点、および②少数株主を多数株主による濫用から保護する点にある
・判断基準:もっとも、株主平等原則も絶対的なものではなく、合理的理由に基づく区別までを禁止するものではないと解すべきである。具体的には、①取扱いの目的に合理性があり、②その取扱いの程度が軽微であれば、例外として許容される
・あてはめ:本件取扱いが上記要件を満たすかを、目的の合理性と程度の軽微性の両面から具体的に検討する
・結論:株主平等原則に違反するか否かを結論づける
なお、買収防衛策のように特定株主を差別的に取り扱う事案では、ブルドックソース事件(最決平成19年8月7日民集61巻5号2215頁)の判断枠組みに従い、企業価値の毀損や株主共同の利益との関係から、衡平の理念に反しないか、相当性を欠かないかを検討することになります。
まとめ
株主の権利・責任について、本記事では以下の点を解説しました。
・株主の権利は、自益権(会社から経済的利益を受ける権利)と共益権(会社の経営に参与・監督是正する権利)に大別される(105条1項)
・株主の権利は、行使に持株要件が必要かどうかにより、単独株主権と少数株主権に分かれる
・株式買取請求権は、株主の投下資本回収を保障する自益権の一種であり、組織再編や定款変更により株主の利益に重大な影響が生じる場合などに認められる(116条1項、469条等)
・株主有限責任の原則(104条)により、株主は株式の引受価額を限度とする責任のみを負い、それを超えて会社や会社債権者に対し責任を負わない
・株主平等原則(109条1項)は、比例的平等と頭数平等の二つの意味を有し、合理的理由に基づく区別までを禁止するものではない
・敵対的買収防衛策における特定株主の差別的取扱いについては、最決平成19年8月7日(ブルドックソース事件)が、会社の企業価値や株主共同の利益という観点から相当性を判断する枠組みを示している


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