【会社法入門⑤】株式の分割・併合とは?手続と株主保護の規律を整理

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【会社法入門⑤】株式の分割・併合とは?手続と株主保護の規律を整理
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 投資単位の調整制度の概観
  • 株式分割
  • 株式併合
  • 株式無償割当ておよび単元株制度
  • 試験答案の構成方法

「株式分割と株式併合は何のために行うの?」

「株式併合は少数派株主の締め出しに利用されると聞いたが、株主はどう保護される?」

「株式分割と株式無償割当ては何が違うの?」

会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

株式は、会社の規模や株主構成、株価水準などに応じて、その「投資単位」(一株あたりの大きさや価額)を調整する必要が生じる場合があります。

たとえば、株価が高くなりすぎたときに分割を行えば一株あたりの価額が下がり、流通性が高まります。

逆に、株式数が多すぎて事務負担が大きい場合には併合を行うことで管理が容易になります。

会社法は、こうした投資単位の調整手段として、株式の分割(会社法183条)、株式の併合(180条)、株式無償割当て(185条)、単元株制度(188条以下)の四つの制度を用意しています。

本記事では、これらの制度の意義と手続を整理し、特に株主保護のための規律と、株式併合がキャッシュアウト(少数株主の締め出し)に利用される場合の論点について解説します。

この記事で学べること

  • 【初級】株式分割・株式併合・株式無償割当ての違い
  • 【初中級】各制度の手続要件
  • 【中級】株式併合における株主保護の規律
  • 【中級】単元株制度の意義と効果
  • 【中上級】株式併合を用いたキャッシュアウトの論点

第1章 投資単位の調整制度の概観

1-1 四つの調整手段

会社法は、株式の投資単位を調整するために、次の四つの制度を用意しています。

制度

概要

条文

株式分割

一株を複数株に細分化する

183条以下

株式併合

複数株を一株にまとめる

180条以下

株式無償割当て

株主に新株を無償交付する

185条以下

単元株制度

一定数の株式を一単元として議決権の単位とする

188条以下

1-2 各制度の機能

株式分割と株式無償割当ては、株式数を増加させる方向で投資単位を調整する制度です。

これに対し、株式併合は株式数を減少させる方向で調整します。

単元株制度は、議決権行使の単位を調整することで、実質的に投資単位を変更する効果を生じます。

これらの制度は、いずれも「株主が有する株式経済的価値」自体を直接変動させるものではありません。

たとえば株式分割を行っても、株式の総数が増えるだけで、各株主の保有比率や経済的価値の総額は変わりません。

もっとも、株式併合の場合は、後述するように端数処理により株主としての地位を失う可能性があるため、慎重な手続が要求されています。

第2章 株式分割

2-1 意義と趣旨

株式分割とは、既存の株式を分割し、より多数の株式とすることをいいます(183条1項)。

たとえば、一株を二株に分割することで、保有株式数は二倍になりますが、一株あたりの価値は半分になります。

株式分割は、株価が高くなりすぎた場合に一株あたりの価額を引き下げて流通性を高めるためや、株式無償割当てと類似の効果を出すために行われます。

既存株主の利益を直接損なうものではないため、相対的に簡易な手続で行うことが認められています。

2-2 手続

株式分割の決定は、取締役会設置会社では取締役会の決議、それ以外の会社では株主総会の普通決議によって行います(183条2項)。

これは、株式併合(後述)が株主総会の特別決議を要するのと比べて、相対的に簡易な手続といえます。

両者の差異は、株主の地位に与える影響の大小に対応するものです。

会社は、効力発生日の二週間前までに、基準日株主に対し分割の旨等を通知または公告しなければなりません(183条2項、124条3項)。

また、株式分割の際には、定款変更の手続を経ずに、分割比率の限度で発行可能株式総数を増加させることができます(184条2項)。

これは、既存株主の持株比率を低下させるおそれがなく、機動的な株式分割のためには発行可能株式総数の増加が事実上不可避であることを踏まえた特則です。

2-3 効果

株式分割の効力発生日において、株主の保有株式数が分割比率に応じて増加します。

たとえば、一株を二株に分割する場合、効力発生日に一株を保有していた株主の保有株式数は二株となります。

各株主の持株比率には変化がありません。

株式分割により会社の純資産は変動しないため、一株あたりの実質的な価値は分割比率に応じて低下します。

これにより、株式の市場流通性を高め、新たな投資家層の参入を促す効果が期待できます。

実務上、株式分割は、株価が高騰しすぎて少額投資家にとって投資しにくくなった場合に、株式の取引機会を拡大する手段として用いられます。

なお、株式分割を行うにあたっては、会社が定款で定める発行可能株式総数を超える株式が発行されることになる場合があります。

この点については、前述のとおり、分割比率の限度で定款変更手続を経ずに発行可能株式総数を増加させることができる特則が設けられています(184条2項)。

第3章 株式併合

3-1 意義と趣旨

株式併合とは、複数の株式を併せて、それよりも少数の株式とすることをいいます(180条1項)。

たとえば、二株を一株に併合することで、保有株式数は半分になり、一株あたりの価値は二倍になります。

株式併合は、株式数が多すぎて事務負担が大きい場合や、株価が低すぎる場合の調整、近年では少数派株主の締め出し(キャッシュアウト・スクイーズアウト)の手段としても利用されることがあります。

株式併合の特徴として、(一)併合により一株未満の端数が生じる可能性があり、その株主が株主としての地位を失うおそれがある点、(二)併合をしても発行可能株式総数は変動しない点が挙げられます。

前者は株主保護の必要性を高める要因として、後者は株式分割との対比で重要な特徴として、それぞれ位置づけられます。

3-2 手続

株式併合は、株主総会の特別決議によって行うことが必要です(180条2項、309条2項4号)。

決議事項として、併合の割合、効力発生日、種類株式発行会社の場合は併合する株式の種類などを定める必要があります。

また、取締役は、株主総会において、株式併合を必要とする理由を説明する義務を負います(180条4項)。

これは、株主に対し情報を開示し、慎重な判断を促す趣旨です。

株式併合は、株式分割と異なり、株主総会の特別決議が要求されている点に注意が必要です。

これは、併合に伴う端数処理によって、株主が株主たる地位を失う可能性があり、既存株主の利益への影響が大きいためです。

項目

株式分割と株式併合の比較

株式分割の決議要件

取締役会(取締役会設置会社)または株主総会の普通決議(183条2項)

株式併合の決議要件

株主総会の特別決議(180条2項、309条2項4号)+取締役による理由説明(180条4項)

3-3 株主保護のための規律

株式併合の手続が厳格である理由は、株主保護の必要性が高いためです。

会社法は、株式併合に伴う株主保護のため、以下のような規律を設けています。

これらの保護規律は、平成26年改正により大きく拡充されました。

改正前は、キャッシュアウト目的で極端な比率の株式併合を行うことに対する規律が不十分であったため、少数株主保護の観点から制度が見直されたという経緯があります。

3-3-1 反対株主の株式買取請求権

株式併合により一株未満の端数が生じることになる場合、これに反対する株主は、会社に対し公正な価格での買取りを請求することができます(182条の4)。

これにより、株式併合により株主としての地位を失う者の投下資本回収が保障されます。

買取請求の手続として、会社は株式併合の効力発生日の二十日前までに通知・公告を行い(181条、182条の4第3項)、反対株主は効力発生日の二十日前から効力発生日の前日までの間に買取請求をすることができます(182条の4第2項・第4項)。

3-3-2 株式併合の差止請求

株式併合が法令または定款に違反する場合であって、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、当該株式併合をやめることを請求することができます(182条の3)。

これは、株式併合が違法に行われることを事前に防止するための制度です。

3-3-3 端数処理

株式併合により一株未満の端数が生じる場合、会社は端数の合計数を会社が売却し、その代金を端数株主に交付します(234条)。

これにより、端数株主にも一定の経済的補償が確保されています。売却の方法には、競売(234条2項本文)と裁判所の許可を得た任意売却(同項但書)があり、株主の利益確保のための慎重な手続が要求されます。

3-3-4 事前開示・事後開示

株式併合の効力発生前後を通じて、会社は株主に対して必要な情報を開示する義務を負います。具体的には、効力発生日の二週間前までに事前開示書類を備え置き(182条の2)、効力発生後遅滞なく事後開示書類を備え置く必要があります(182条の6)。

これにより、株主は併合の内容や手続の適正性を検討する機会を得ることができます。

3-4 キャッシュアウトの手段としての株式併合

近年、株式併合は、少数派株主を締め出して会社を非公開化する手段(キャッシュアウト・スクイーズアウト)としても活用されています。

具体的には、極端な比率(たとえば数千株を一株にする)で株式併合を行えば、少数株主の保有株式は端数となり、最終的に金銭交付のみで処理されることになります。

もっとも、こうしたキャッシュアウト目的の株式併合については、その手続の適正性、対価の公正性、決議の濫用などが問題となります。

会社法は、上記の差止請求(182条の3)、買取請求(182条の4)、価格決定の申立て(182条の5)などにより、少数株主の保護を図っていますが、実務上は対価の妥当性をめぐる争いが少なくありません。

第4章 株式無償割当ておよび単元株制度

4-1 株式無償割当て

株式無償割当てとは、会社が株主に対し、その有する株式の数に応じて、新株または自己株式を無償で割り当てることをいいます(185条以下)。

株式分割と類似していますが、(一)株式分割は同一種類の株式数を増加させるのに対し、株式無償割当てでは異なる種類の株式を割り当てることもできる点、(二)株式分割は自己株式の数も増加するのに対し、株式無償割当ては自己株式には割り当てられない点(186条2項)などに違いがあります。

無償割当ての決定機関は、原則として株主総会(取締役会設置会社では取締役会)とされます(186条3項)。

割当ての効力発生日に、株主は割当てに係る株式を取得することになります。

株式無償割当ての実務的活用としては、買収防衛策の一手段としての新株予約権無償割当てがよく知られていますが、株式そのものの無償割当ても、種類株式を活用した資金調達や株主構成の調整などに用いられます。

会社法入門➀の記事でご紹介したブルドックソース事件(最決平成19年8月7日民集61巻5号2215頁)も、新株予約権の無償割当てを買収防衛策として用いた事例でした。

【会社法入門1】株主の権利・責任と株主平等原則を解説

項目

株式分割

株式無償割当て

条文

183条以下

185条以下

異種類株式の交付

不可

可能

自己株式への割当て

増加(分割対象に含む)

不可(186条2項)

4-2 単元株制度

単元株制度とは、定款の定めにより一定数の株式をひとまとまり(一単元)とし、単元株主には完全な権利を、単元未満株主には限定された権利のみを与える制度です(188条以下)。

単元株制度の趣旨は、株式の管理コストの軽減と、議決権行使の単位を実情に応じて調整する点にあります。

たとえば、株主が多数に分散しすぎている会社では、議決権の単位を引き上げることで株主総会の円滑な運営を確保することができます。一単元の株式数は定款で定めますが、上限は一千株以下、かつ発行済株式総数の二百分の一以下と規制されています(188条2項、規則34条)。

単元未満株主には議決権がありません(189条1項)。その他の権利についても定款で制限することが可能ですが(同条2項)、剰余金配当請求権や残余財産分配請求権など、株主としての本質的な権利を奪うことはできません(同項各号)。

また、単元未満株式の保有者は、会社に対し、いつでも単元未満株式の買取りを請求することができます(192条)。

これは、単元未満株主にも投下資本回収の機会を保障する制度です。

さらに、定款の定めにより、単元未満株主が会社から単元株に達するまで株式の売渡しを請求できる「単元未満株式売渡請求権」を認めることもできます(194条)。

主体

権利の内容

単元株主

議決権を含む完全な株主としての権利を行使できる

単元未満株主

議決権はない(189条1項)。その他の権利は定款で制限可能だが、配当請求権・残余財産分配請求権等は奪えない(189条2項各号)。買取請求権あり(192条)

第5章 試験答案の構成方法

5-1 株式併合によるキャッシュアウトの答案構成

株式併合を用いて少数派株主を締め出す事案では、以下の流れで答案を構成することが考えられます。

【答案構成の流れ】

問題提起:本件株式併合に対し、少数派株主はいかなる救済を求められるか

規範定立:株式併合は、株主の地位を失わせるなど既存株主に重大な影響を与えるため、株主総会の特別決議および取締役による理由説明を要する厳格な手続が定められている(180条2項・4項、309条2項4号)

・判断基準:株主の救済手段として、(一)株式併合の差止請求(182条の3)、(二)反対株主の買取請求(182条の4)、(三)価格決定申立て(182条の5)、(四)株主総会決議の取消しの訴え(831条)が用意されている。各手段の要件を確認する必要がある

あてはめ:本件における手続違反の有無、対価の公正性、決議の濫用の有無等を具体的に検討する

結論:少数株主が利用できる救済手段を結論づける

まとめ

株式の分割・併合について、本記事では以下の点を解説しました。

・会社法は、投資単位の調整手段として、株式分割(183条)、株式併合(180条)、株式無償割当て(185条)、単元株制度(188条以下)の四つの制度を用意している

・株式分割は、取締役会または株主総会の普通決議で行うことができ、相対的に簡易な手続が認められている

・株式併合は、株主総会の特別決議(180条2項、309条2項4号)および取締役による理由説明(180条4項)を要する厳格な手続が必要であり、これは株主の地位に与える影響が大きいことに対応している

・株式併合に伴う株主保護のため、差止請求(182条の3)、反対株主の買取請求(182条の4)、価格決定申立て(182条の5)、端数の売却処理(234条)などの規律が設けられている

・株式無償割当ては、異種類株式の割当てが可能であり、自己株式には割り当てられない点で株式分割と異なる

・単元株制度のもとで、単元未満株主には議決権がないが(189条1項)、配当請求権等の本質的権利は確保され、買取請求権も認められている(192条)

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