【会社法入門8】株主総会手続の流れと重要論点を解説
目次
この記事を読んで理解できること
- 株主総会の意義と権限
- 招集手続
- 株主提案権
- 議事
- 決議
- 試験答案の構成方法
- 株主総会はいつまでに招集通知を出さなければならないの?
- 株主が議題を提案するにはどのような要件を満たす必要があるの?
- 議決権の代理行使は誰でもさせられるの?
会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であり、その決議は会社の意思形成として極めて重要な意義を有します。そのため、会社法は、株主に出席と準備の機会を保障し、合理的な議決権行使を確保するために、招集・議事・決議の各場面で詳細な手続規律を設けています。
本記事では、株主総会の意義と権限の整理から始め、招集手続、株主提案権、議事(議長の権限・取締役の説明義務・議決権の行使方法)、決議の成立要件まで、株主総会の手続を網羅的に解説します。なお、招集手続の瑕疵などによって決議の効力が争われる場面(決議取消・無効・不存在の訴え)については、次回記事で扱います。
この記事で学べること
- 【初級】株主総会の権限と取締役会設置会社・非設置会社の違い
- 【初中級】招集手続の基本的な流れと招集通知の記載事項
- 【中級】全員出席総会の理論と判例の射程
- 【中級】株主提案権の三類型(議題・議案・議案通知)
- 【中級】取締役の説明義務(314条)の発生要件と程度
- 【中上級】代理人資格を株主に限る定款規定の効力と適用
第1章 株主総会の意義と権限
1-1 最高意思決定機関としての株主総会
株主総会は、株式会社の構成員である株主によって構成される会議体であり、株式会社の最高意思決定機関です(会社法295条参照)。
会社の所有者である株主が、株主総会という会議体を通じて会社の意思を形成する点に、その本質があります。
株主総会は、毎事業年度の終了後に開催される定時株主総会(296条1項)と、必要に応じて随時開催される臨時株主総会(同条2項)に分かれます。
1-2 取締役会設置会社と非設置会社の権限の違い
株主総会の権限は、機関設計によって大きく異なります。
取締役会設置会社では、株主総会は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限って決議をすることができます(295条2項)。
これは、所有と経営の分離に基づき、日常的な経営判断は専門家である取締役らに委ね、株主総会は重要事項に限定して関与するという発想に基づくものです。
これに対し、取締役会非設置会社では、株主総会は会社の組織・運営・管理その他一切の事項について決議することができます(295条1項)。所有と経営が分離していない小規模会社を想定した規律です。
もっとも、取締役会設置会社であっても、株主総会の決議事項は定款で拡張することができます(295条2項)。
たとえば、取締役会の決議によるほか、株主総会の決議によっても代表取締役を選定・解職できる旨を定款で定めることは、会社の本質や強行法規に反しない限り有効と解されます。
第2章 招集手続
株主総会は、その招集手続を経たうえで開催される必要があります。招集手続の趣旨は、株主に出席の機会を与え、議事・議決に参加するための準備の機会を保障する点にあります。
2-1 招集権者と招集事項の決定
株主総会の招集は、原則として取締役が行います(296条3項)。取締役会設置会社では、招集事項(日時・場所・目的事項等。298条1項)を取締役会で決定し(同条4項)、代表取締役が執行することになります。
また、総株主の議決権の百分の三以上の議決権を六か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し株主総会の招集を請求でき(297条1項)、請求後に遅滞なく招集手続が行われない場合などには、裁判所の許可を得て自ら招集することもできます(同条4項)。
2-2 招集通知
株主総会を招集するには、原則として株主総会の日の二週間前までに、株主に対して招集通知を発しなければなりません(299条1項)。
取締役会設置会社では、招集通知は書面によらなければならず(同条2項2号)、取締役会で決定した招集事項を記載しなければなりません(同条4項)。
公開会社における招集通知の記載の精度については、があります。
招集通知に「取締役全員任期満了につき改選の件」とのみ記載され、選任すべき取締役の人数が明記されていなかった事案につき、最高裁は、このような記載があれば従前と同数の取締役を選任する旨が記載されていると株主は理解できるとして、当該招集通知を適法と判断しました(最判平成10年11月26日金判1066号18頁)。
2-3 全員出席総会
株主総会の招集権限を欠く者が招集した場合や、招集通知に瑕疵がある場合であっても、株主全員がその招集に同意して出席し、決議が行われたとき(全員出席総会)は、招集手続の瑕疵は治癒され、決議は適法と解されています(最判昭和60年12月20日民集39巻8号1869頁)。
これは、招集手続の趣旨が株主に出席と準備の機会を保障する点にある以上、その趣旨が現実に全うされている場合(全員が出席している場合)には、招集手続の瑕疵を理由に決議を無効とする必要がないという考え方に基づくものです。
もっとも、全員出席総会の理論はあくまで「結果として」全員が出席した場合の救済規律であり、もともと株主全員の同意があれば招集手続を経ずに株主総会を開催できる場合(300条)とは別の制度であることに注意が必要です。
第3章 株主提案権
株主提案権は、株主が株主総会において議題や議案を提案することにより、会社の意思形成に関与する権利です。会社法は、株主提案権を、議題提案権、議案提出権、議案通知請求権の三種類に整理しています。
3-1 議題提案権
議題提案権とは、株主が一定の事項を株主総会の目的事項とすることを請求する権利です(303条)。
取締役会設置会社(公開会社の場合)では、総株主の議決権の百分の一以上または三百個以上の議決権を六か月前から引き続き有する株主が、株主総会の日の八週間前までに行使する必要があります(同条2項)。
公開会社でない取締役会設置会社では、保有期間要件は課されず、議決権要件のみが課されます(同条3項)。
これは、非公開会社では株主の固定性が高く、保有期間で乱用を防止する必要性が乏しいためです。
3-2 議案提出権・議案通知請求権
議案提出権は、すでに議題となっている事項について、具体的な議案を株主総会の場で提出する権利です(304条)。
これに対し、議案通知請求権は、提出する議案を事前に他の株主に通知するよう請求する権利です(305条1項)。
取締役会設置会社では、議案通知請求権の行使には議題提案権と同様の持株要件が課されます(同項但書)。
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提案権の種類 |
内容 |
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議題提案権(303条) |
会議の目的事項そのものを提案する権利 |
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議案提出権(304条) |
議題に対する具体的な議案を総会の場で提出する権利 |
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議案通知請求権(305条) |
議案の内容を招集通知に記載・通知することを請求する権利 |
第4章 議事
4-1 議長
株主総会の議事は議長が進行します。
議長が誰になるかは、定款で定められていることが多く、取締役社長などが指定されているのが通例です。
議長は、株主総会の秩序を維持し、議事を整理する権限を有し(315条1項)、議長の命令に従わない者などを退場させることもできます(同条2項)。
もっとも、議長の議事運営が恣意的であり、決議の方法を著しく不公正にするものであった場合には、決議の方法の著しい不公正(831条1項1号)として決議取消事由となり得ます。
4-2 取締役の説明義務
(一)説明義務の趣旨と要件
取締役・会計参与・監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められたときは、当該事項について必要な説明をしなければなりません(314条本文)。
趣旨は、株主の議決権行使に必要な情報を提供させ、議決権の合理的な行使を確保する点にあります。
説明義務は、株主総会の場で具体的な質問がなされて初めて発生し、事前の質問状の送付があっただけでは発生しません。
また、(一)目的事項に関しないとき、(二)説明により株主共同の利益を著しく害するとき、(三)正当な理由がある場合として法務省令で定める場合には、説明義務が免除されます(314条但書、規則71条)。
(二)説明義務の程度と一括回答
説明義務の程度については、平均的な株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲の説明をすれば足りると解されています。
事前に質問項目を集約して株主総会の冒頭でまとめて回答する一括回答の方式も、説明義務の履行として許容されています。
4-3 議決権の行使方法
(一)代理行使
株主は、代理人によって議決権を行使することができます(310条1項)。
代理権授与は株主総会ごとに行う必要があり(同条2項)、議決権行使にあたっては、代理権を証する書面を会社に提出しなければなりません(同条1項)。
代理人の資格を株主に限定する旨の定款規定の効力について、判例は、株主以外の第三者によって株主総会が攪乱されることを防止するための合理的な制限として、原則としてこれを有効としています(最判昭和43年11月1日民集22巻12号2402頁)。
もっとも、(一)議決権の代理行使を認めても株主総会を攪乱するおそれがなく、かつ(二)当該行使を認めないと事実上議決権行使の機会を奪うに等しくなるような場合には、当該定款規定の効力は及ばないと解されています。
たとえば、株主たる法人がその職員を代理人として送る場合などは、定款規定の効力は及ばないとされた裁判例があります。
(二)書面投票・電磁的方法
会社は、株主総会に出席しない株主が書面または電磁的方法で議決権を行使できる旨を定めることができます(298条1項3号・4号)。
とりわけ、議決権を有する株主が千人以上の会社では、書面投票制度の採用が義務付けられます(同条2項)。
これは、株主が地域的に分散し、自身が株主総会に出席することが現実的でない大規模会社を念頭に置いた規律です。
第5章 決議
5-1 決議の成立要件
株主総会の決議は、原則として議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で成立します(普通決議。309条1項)。
役員の選任・解任、計算書類の承認などが普通決議の典型例です。
もっとも、定款変更、合併、組織変更などの会社の基礎的変更にかかる事項は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上の多数で成立する特別決議によります(309条2項)。
さらに、定款上の譲渡制限規定の新設による株主の権利変更などについては、特殊の決議(同条3項・4項)が必要です。
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決議の種類 |
成立要件 |
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普通決議(309条1項) |
出席株主の議決権の過半数。役員選任・計算書類承認等 |
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特別決議(309条2項) |
議決権を行使し得る株主の過半数の出席+出席株主の議決権の三分の二以上。定款変更・合併等 |
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特殊の決議(309条3項・4項) |
より厳格な要件。譲渡制限規定の新設等 |
5-2 議決権を有しない者
一株一議決権の原則(308条1項)が基本ですが、(一)議決権制限種類株式(108条1項3号)、(二)単元未満株式(189条)、(三)相互保有株式(308条1項括弧書)、(四)自己株式(同条2項)については、議決権が認められません。
とりわけ、相互保有株式は、株式相互保有による議決権の歪みを是正するための規律です。
また、ある決議について特別の利害関係を有する株主は議決権を行使することができますが、その議決権の行使により著しく不当な決議がされたときは、決議取消事由となります(831条1項3号)。
第6章 試験答案の構成方法
6-1 招集手続の瑕疵が問題となる事案
招集手続に瑕疵があるとして決議の効力が争われる事案では、瑕疵の有無を確定したうえで、瑕疵の重大性に応じて決議取消事由となるか、それとも全員出席総会理論等によって治癒されるかを検討します。
【答案構成の流れ】
・問題提起:本件決議は招集手続に瑕疵があり、効力を欠かないか
・規範定立:招集手続の趣旨は、株主に出席と準備の機会を保障する点にある
・瑕疵の認定:招集権限・招集通知の発送時期・通知の記載内容等について、法定の要件を満たしているかを確認する
・治癒の検討:全員出席総会の場合(招集手続の瑕疵は治癒される。最判昭和60年12月20日)や、株主全員の同意がある場合(300条)は、決議は適法
・効果:瑕疵が治癒されない場合は、決議方法の法令違反として取消事由(831条1項1号)を構成する
6-2 議決権代理行使が問題となる事案
代理人資格を株主に限定する定款規定の適用が問題となる事案では、まず定款規定自体の有効性を検討し、次に当該事案における適用の可否(規定の効力が及ぶか)を検討するという二段構えの分析が有用です。
【答案構成の流れ】
・問題提起:代理人資格を株主に限定する定款規定は有効か。また、本件への適用は許されるか
・規範定立(規定の有効性):310条1項の趣旨は、議決権の代理行使という間接的な参加手段を確保する点にある。第三者による株主総会攪乱防止という合理的な目的のため、株主への委任は可能な範囲で代理人資格を制限することは許される
・規範定立(適用の可否):(一)代理行使を認めても株主総会を攪乱するおそれがなく、かつ(二)当該行使を認めないと事実上議決権の行使を奪うに等しくなる場合には、定款規定の効力は及ばない
・あてはめ・結論:具体的事情に即して、両要件への該当性を検討する
まとめ
株主総会の手続について、本記事では以下の点を解説しました。
・株主総会は、取締役会設置会社では法定・定款記載事項に限って決議できるが(295条2項)、非設置会社では一切の事項を決議できる(同条1項)
・株主総会の招集通知は、原則として総会の二週間前までに発する必要があり(299条1項)、取締役会設置会社では書面性と取締役会決定事項の記載が要求される
・招集手続の瑕疵があっても、株主全員が出席して決議された場合(全員出席総会)は瑕疵が治癒されると解されている(最判昭和60年12月20日)
・株主提案権は、議題提案権(303条)、議案提出権(304条)、議案通知請求権(305条)の三種類に整理される
・取締役の説明義務(314条)は、株主の議決権行使に必要な情報を提供させる趣旨であり、平均的株主が合理的判断をするに必要な範囲で履行すれば足りる
・代理人資格を株主に限る定款規定は、原則として有効であるが、株主総会攪乱のおそれがなく、認めないと事実上議決権行使を奪うに等しくなる場合には、その効力が及ばない
・決議は普通決議、特別決議、特殊の決議に分類され、決議事項に応じて成立要件が異なる
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