【刑事訴訟法入門16】公判手続の全体像と証拠法の基本原則

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【刑事訴訟法入門16】公判手続の全体像と証拠法の基本原則
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 公判手続の全体像
  • 冒頭手続
  • 証拠調べ手続
  • 証拠法の基本原則
  • 弁論手続と判決
  • 試験答案の構成方法

「公判手続ってどんな流れで進むの?」

「冒頭手続と証拠調べ手続の違いは?」

「厳格な証明と自由な証明はどう区別するの?」

刑事訴訟法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

公判手続とは、公開の法廷において、裁判所の面前で当事者が主張と立証を行い、裁判所がこれに基づいて事実を認定し、法を適用して判決を言い渡す手続です。

刑事訴訟の中核をなすこの手続は、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決という段階を経て進行します。

本記事では、公判手続の全体像を概観したうえで、証拠法の基本原則である厳格な証明と自由な証明の区別、及び自由心証主義について解説します。

この記事で学べること

  • 【初級】公判手続の全体的な流れ
  • 【初中級】冒頭手続の内容と意義
  • 【中級】証拠調べ手続の基本構造
  • 【中級】証拠法の基本原則──証拠裁判主義と自由心証主義
  • 【中上級】厳格な証明と自由な証明の区別

第1章 公判手続の全体像

1-1 公判手続の基本構造

公判手続は、大きく分けて、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、及び判決の四つの段階からなります。

段階

主な内容

冒頭手続

人定質問、起訴状朗読、黙秘権告知、被告人・弁護人の陳述

証拠調べ手続

冒頭陳述、証拠調べ請求、証拠決定、証拠の取調べ

弁論手続

論告・求刑、弁論、被告人の最終陳述

判決

判決の宣告

1-2 公判手続の基本原則

公判手続は、次の基本原則に基づいて行われます。

第一に、公開主義です。憲法82条1項は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と規定しています。

公開主義は、裁判の公正さを担保し、国民の裁判に対する信頼を確保するために不可欠な原則です。

第二に、口頭主義です。公判期日における訴訟行為は、口頭でこれをしなければなりません(刑訴規則203条参照)。

第三に、直接主義です。判決は、公判廷における証拠調べの結果に基づいてこれをしなければなりません(刑訴法317条参照)。

第2章 冒頭手続

2-1 人定質問と起訴状朗読

冒頭手続は、まず人定質問から始まります。裁判長は、被告人に対し、氏名、生年月日、本籍、住居及び職業を質問し、被告人が人違いでないことを確認します(刑訴規則196条)。

次に、検察官が起訴状を朗読します(291条1項)。起訴状の朗読により、審判の対象となる公訴事実が明らかにされます。

この点に関し、起訴状には、裁判官に予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはなりません(256条6項、起訴状一本主義)。

起訴状一本主義の趣旨は、裁判官の予断を排除し、公判中心主義の実現を図ることにあります。

2-2 黙秘権の告知と被告人・弁護人の陳述

起訴状の朗読の後、裁判長は、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知するとともに、陳述すること自体は自由であることを告げなければなりません(291条5項、黙秘権の告知)。

黙秘権の告知の後、被告人及び弁護人は、被告事件について陳述する機会を与えられます(291条5項後段)。

ここで、被告人は、公訴事実を認めるか否かを述べるのが通常です。

第3章 証拠調べ手続

3-1 冒頭陳述

証拠調べのはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければなりません(296条、冒頭陳述)。

冒頭陳述は、裁判所に対し、その後の証拠調べの方向性を示すものであり、証拠調べの効率化に資するものです。

もっとも、冒頭陳述はあくまで検察官の主張にすぎず、それ自体が証拠となるものではありません。裁判所は、冒頭陳述の内容を事実認定の基礎とすることはできません。

この点は、起訴状一本主義の趣旨とも関連しています。

すなわち、冒頭陳述が証拠と同視されるのであれば、起訴状に証拠を添付することを禁止した趣旨が没却されることになるからです。

公判前整理手続に付された事件においては、被告人又は弁護人も、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、証拠調べのはじめにこれを明らかにしなければなりません(316条の30)。

これにより、裁判所は当事者双方の主張を把握した上で証拠調べに臨むことができます。

3-2 証拠調べの方法

証拠調べは、当事者の証拠調べ請求に基づいて行われるのが原則です(298条1項、当事者主義)。

裁判所は、当事者から請求のあった証拠について、相手方の意見を聴いた上で、証拠として採用するか否かを決定します(刑訴規則190条2項)。

もっとも、裁判所は必要と認めるときは、職権で証拠調べをすることもできます(298条2項)。

証拠の取調べは、その種類に応じて異なる方法で行われます。

証拠の種類

取調べの方法

証人

宣誓の上、尋問する(304条)

証拠書類

朗読する(305条1項)。裁判長が相当と認めるときは要旨の告知で足りる(305条3項)

証拠物

展示する(306条)

被告人の供述

被告人質問の手続による(311条2項・3項)

3-3 証拠裁判主義

刑訴法317条は、「事実の認定は、証拠による」と規定しています。

これを証拠裁判主義といいます。証拠裁判主義の趣旨は、裁判官の恣意的な事実認定を排除し、適正手続(憲法31条)及び公正な裁判(憲法37条1項)の実現を図る点にあります。

証拠裁判主義のもとで、事実認定の基礎となる証拠は、証拠能力を有する証拠でなければなりません。

証拠能力とは、証拠として事実認定に用いることが法律上許容される資格をいいます。

これに対し、証明力とは、事実の証明に役立つ実質的な価値をいいます。

証拠能力と証明力の区別は、刑事訴訟法の証拠法を理解するうえで基本的かつ重要です。

証拠能力は、主として自白法則(319条以下)、伝聞法則(320条以下)等の証拠法則により規律されます。

また、適正手続の維持や訴訟外利益に対する政策的な配慮を真実発見に優先させ、本来証拠能力のある証拠の使用を制限する法理として、違法収集証拠排除法則(判例法理)があります。

第4章 証拠法の基本原則

4-1 厳格な証明と自由な証明

証拠裁判主義のもとで、事実の認定に必要な証明の方法には、厳格な証明と自由な証明の二種類があります。

厳格な証明とは、証拠能力のある証拠であって、かつ、適式な証拠調べ手続を経た証拠による証明をいいます。

自由な証明とは、厳格な証明以外の証明をいいます。

区分

厳格な証明

自由な証明

証拠能力

必要

不要

証拠調べ手続

適式な手続が必要

制約なし

対象事実

刑罰権の存否及び範囲を定める事実

訴訟法的事実等

この区別に関する重要判例が、最決昭33・2・26です。

最高裁は、刑の法定加重の理由となる累犯前科の事実を認定するには、適法な証拠調べを経た証拠によることが必要であると判示しました(最大決昭33・2・26刑集12・2・316)。

この判例の趣旨を敷衍すれば、317条は裁判官の恣意的な事実認定を排除し、適正手続(憲法31条)及び公正な裁判(憲法37条1項)の実現を図ったものであるから、事実認定につき厳格な証明を要求したものと考えるべきです。

もっとも、すべての事実に厳格な証明を要求すると、迅速な裁判(憲法37条1項)を害するため妥当ではありません。

そこで、厳格な証明の対象となる「事実」とは、公判手続の中心課題である刑罰権の存否及び範囲を定める事実に限られるものと考えるべきです。

具体的には、厳格な証明と自由な証明の振り分けは、次のとおりです。

事実の種類

証明方法

理由

犯罪事実(構成要件該当事実、違法性・責任の基礎事実)

厳格な証明

刑罰権の存否を直接左右する事実

処罰条件・処罰阻却条件

厳格な証明

刑罰権発生にとって重要な事実

刑の加重減免事由(累犯前科、自首等)

厳格な証明

処断刑の範囲が異なりうる事実

広義の情状(犯行の動機・手段・方法・結果等)

厳格な証明

犯罪事実に属する情状

狭義の情状(犯人の経歴・生活態度・改悛の情等)

自由な証明

犯罪事実から独立した事実

訴訟法上の事実(訴訟条件・証拠能力等)

自由な証明

手続的事実

4-2 自由心証主義

刑訴法318条は、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる」と規定しています。

これを自由心証主義といいます。

もっとも、自由心証主義は裁判官の恣意的な判断を許すものではなく、論理法則及び経験法則に従った合理的なものでなければなりません。

自白法則(319条)や補強法則(319条2項)は、自由心証主義の例外として位置づけられます。

第5章 弁論手続と判決

5-1 弁論手続

証拠調べが終了した後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければなりません(293条1項、論告・求刑)。

論告においては、証拠調べの結果を踏まえ、犯罪事実の存否について検察官の見解を述べるとともに、適用すべき法令を示します。

求刑は、科すべき刑の種類及び量についての検察官の意見です。

もっとも、裁判所は求刑に拘束されるわけではなく、裁判所が独自に量刑判断を行います。

論告の後、被告人及び弁護人は、意見を陳述することができます(293条2項、弁論)。

弁護人の弁論は、検察官の主張に対する反論を述べるとともに、被告人に有利な事情を主張するものです。

弁論の後、被告人は最終陳述を行うことができます(刑訴規則211条)。

被告人の最終陳述は、裁判所に対する被告人自身の最後の意見表明の機会であり、防御権の観点から重要な手続です。

裁判長は、被告人に最終陳述の機会を与えずに弁論を終結することはできません。

5-2 判決

弁論手続が終了すると、裁判所は弁論を終結し、判決の宣告を行います(342条)。

有罪判決においては、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければなりません(335条1項)。

犯罪の証明がないときは、無罪の判決をしなければなりません(336条)。

第6章 試験答案の構成方法

6-1 厳格な証明と自由な証明を問う問題の答案構成

【答案構成の流れ】

・問題提起:当該事実の立証にいかなる証明が必要か

・規範定立:317条の趣旨──裁判官の恣意的な事実認定を排除し、適正手続・公正な裁判の実現を図る

・判断基準:厳格な証明の対象は、公判手続の中心課題である刑罰権の存否及び範囲を定める事実に限られる

・あてはめ:当該事実が上記の基準に照らして厳格な証明の対象となるかを検討

・結論:厳格な証明が必要か、自由な証明で足りるかの結論

まとめ

公判手続について、本記事では以下の点を解説しました。

公判手続は、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決の四段階で構成される

公判手続は、公開主義(憲法82条1項)、口頭主義(刑訴規則203条)、直接主義(317条)を基本原則とする

冒頭手続では、人定質問、起訴状朗読(291条1項)、黙秘権告知(291条4項)、被告人・弁護人の陳述が行われる

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