【民法総則入門3】通謀虚偽表示|要件・効果・第三者保護の3つのポイント

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【民法総則入門3】通謀虚偽表示|要件・効果・第三者保護の3つのポイント
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 通謀虚偽表示とは何か(民法94条)
  • 通謀虚偽表示の効果は「無効」
  • 善意の第三者は942項で保護される
  • 通謀虚偽表示の2つの論点と3ステップ


この記事は、

「民法総則の入門として通謀虚偽表示をわかりやすく理解したい」

「通謀虚偽表示と錯誤・詐欺との違いを整理したい」

「第三者保護の要件と善意の意味を正確に理解したい」

という方におすすめの記事です。

契約は、当事者の意思表示によって成立します。

しかし、現実には、表示された内容と本人の意思が食い違う場合があります。

その代表例の1つが、通謀虚偽表示です。

具体的には、当事者同士が通じ合って、実際にはその気がないのに、第三者から見ると法律行為があったように見せかけることを言います。

例えば、財産を差押えから逃れさせるために、売るつもりがない不動産を友人に売ったように装う仮装売買などが挙げられます。

このような通謀虚偽表示は、当事者間では無効となります。

なぜなら、当事者双方が虚偽だと分かっている以上、その法律効果を認める必要がないからです。

一方で、その外観を信じて取引に入った第三者まで犠牲にしてよいのかという重要な論点があります。

そこでこの記事では、通謀虚偽表示について、「要件」「効果」「第三者保護」という3つのポイントを軸に詳しく解説し、942項の類推適用や、短答・論文で狙われやすい論点まで整理します。

具体的には、

1章では、通謀虚偽表示の内容

2章では、通謀虚偽表示の効果

3章では、942項で保護される善意の第三者

4章では、通謀虚偽表示の2つの論点と3ステップ

についてそれぞれ解説します。

1章:通謀虚偽表示とは何か(民法94条)

通謀虚偽表示を理解するためには、まず民法総則における位置づけを把握する必要があります。

通謀虚偽表示は、意思表示の問題の中でも、表示と真意が食い違う場面を扱う制度です。

ただし、単に本人だけが本心と違う表示をしている心裡留保とは異なり、相手方も虚偽であることを知り、当事者双方が通じ合っている点に特徴があります。

そこで、本章では、通謀虚偽表示の位置づけ、成立要件、典型例である仮装売買を通じて、全体像を確認します。

1-1:意思表示の瑕疵における位置づけ

民法総則では、意思表示に問題がある場合の処理が重要なテーマとなります。

意思表示とは、一定の法律効果を発生させようとする意思を外部に表示することです。

契約を締結する場面では、申込みや承諾が意思表示にあたります。

ところが、外部に表示された内容と、表意者の内心が一致しない場合があります。

このような場面では、本人の真意を重視すべきか、表示を信頼した相手方や第三者を保護すべきかが問題となります。

このような意思表示の問題は、大きく分けると、意思の不存在と意思表示の瑕疵に整理できます。

意思の不存在とは、表示に対応する真意が存在しない、または表示と真意が一致していない場合です。

心裡留保や通謀虚偽表示がこれにあたります。

これに対して、意思表示の瑕疵とは、意思表示自体はあるものの、その形成過程に問題がある場合で、詐欺や強迫が典型例です。

通謀虚偽表示は、意思の不存在の類型に属します。

通謀虚偽表示は、外部には売買や贈与などの意思表示があるように見えても、当事者の内心ではその法律効果を発生させる意思がないからです。

通謀虚偽表示の位置づけを理解する上では、心裡留保との違いも重要です。

心裡留保では、表意者だけが真意でないことを知っています。

一方で、通謀虚偽表示では、相手方も虚偽であることを知り、表意者と通じています。

この違いが、法的効果の違いにも繋がります。

心裡留保では、相手方の信頼を保護する必要があるため、原則として有効とされます。

これに対して、通謀虚偽表示では、相手方も虚偽だと分かっているため、当事者間で法律効果を認める必要はありません。

そのため、民法94条1項は、通謀虚偽表示を無効としています。

1-2:通謀虚偽表示が成立する3つの要件

民法94条は、次のように規定しています。

「1項:相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 2項:前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

この条文から、通謀虚偽表示が成立するためには、主に3つの要件を押さえる必要があります。

第1に、外形上の意思表示が存在することです。

通謀虚偽表示は、外部から見れば契約や法律行為が存在するように見えることが前提です。

全く意思表示がなければ、そもそも民法94条の問題にはなりません。

例えば、当事者間で口頭でも書面でも何ら表示されていない場合には、第三者が信頼する外観も存在しません。

通謀虚偽表示は、外部に虚偽の法律関係を作り出す点に問題の本質があります。

第2に、意思表示が虚偽であることです。

虚偽の意思表示とは、外部に表示された内容と真意が一致していない意思表示を言います。

売るつもりがないのに売買契約書を作成する場合などが典型例です。

この場合、外形上は売買契約があるように見えますが、当事者の真意としては売買の効果を発生させるつもりがありません。

このように通謀虚偽表示が成立するためには、虚偽の意思表示が必要です。

第3に、相手方との通謀があることです。

通謀とは、表意者と相手方が、表示が真意でないことを互いに了解していることを言います。

例えば、単に相手方が「おそらく本気ではないだろう」と疑っているだけでは足りません。

当事者双方が、虚偽の外観を作り出すことについて意思を通じている必要があります。

この点は、心裡留保と大きく異なる点です。

1-3:仮装売買で理解する具体的イメージ

通謀虚偽表示の典型例は、仮装売買です。

仮装売買とは、実際には売買をするつもりがないにもかかわらず、外形上は売買契約があったように装うことを言います。

例えば、Aが多額の借金を抱えており、債権者から自宅不動産を差し押さえられそうになっていたとします。

そこで、Aは友人Bと相談し、「この不動産はBに売ったことにしよう」と考えました。

ABは売買契約書を作成し、登記もBに移します。

しかし、実際には代金の支払いもなく、ABも本当に所有権を移転するつもりはありません。

この場合、ABの間には、通謀虚偽表示による売買契約が存在します。

外形上は売買契約がありますが、ABは互いにその売買が虚偽であることを知っています。

そのため、民法94条1項により、このような売買契約は無効となります。

なぜなら、当事者双方が虚偽だと分かっている以上、その法律効果を認める必要はないからです。

したがって、ABに対して「本当は売っていない」と主張できますし、BAに対して「本当は買っていない」と主張できます。

しかし、慎重に検討しなければならないのは、第三者が登場した場合です。

先の例で、Bがこの不動産をさらにCに売却した場合はどうでしょうか。

Cが登記を見て、Bが本当の所有者だと信じて不動産を買った場合、ACに対して「AB間の売買は虚偽表示だから無効だ」と主張できるのでしょうか。

こうした場面では、民法942項により、AB間の取引を信頼した第三者の保護が問題になります(詳しくは後述します。)。

通謀虚偽表示は、このように「当事者間では無効だが、第三者との関係では取引安全をどう守るか」という二段階で理解することが重要です。

2章:通謀虚偽表示の効果は「無効」

通謀虚偽表示が成立すると、その意思表示は無効となります。

ただ、この無効は誰に対しても主張できるものではありません。

当事者間では無効である一方、善意の第三者との関係では無効を主張できない場合があります。

そこで、本章では、まず当事者間の効果を確認し、そのうえで無効を主張できる人・できない人の区別を整理します。

2-1:当事者間では絶対的無効になる

民法941項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としています。

無効とは、法律行為が最初から効力を生じないことを意味します。

このため、通謀虚偽表示が成立した場合、当事者間では法律効果は発生しません。

例えば、ABが仮装売買をした場合、AB間で売買契約は無効です。

外形上は契約書があり、登記が移っていたとしても、ABの間では売買契約の効果は発生しません。

当事者双方が虚偽であることを知っているから、そのような行為に効力を生じさせる必要はないからです。

また、虚偽の外観を作り出した当事者に、その法律効果を認めることは不合理とも言えます。

さらに、法律行為は、当事者の意思表示によって法律効果を発生させるものですが、通謀虚偽表示では、当事者に真の効果意思がありません。

以上の点を理由に、通謀虚偽表示は当事者間では絶対的に無効とされています。

2-2:無効を主張できる人・できない人の区別

通謀虚偽表示が無効であるとして、誰がその無効を主張できるかが問題となります。

まず、当事者は原則として無効を主張できます。

例えば、ABが仮装売買をした場合、ABに対して「この売買契約は虚偽表示だから無効である」と主張できます。

Bも同様に、Aに対して無効を主張できます。

また、当事者の一般債権者も無効を主張する法律上の利益を有します。

例えば、Aが債権者からの差押えを免れるためにBへ仮装譲渡した場合、Aの債権者は、その仮装譲渡が無効であることを主張して、Aの責任財産に対する執行を図ることができます。

一方で、善意の第三者に対しては、当事者は無効を対抗できません。

これが民法942項の重要な効果です。

例えば、ABが仮装売買をし、BがさらにCに売却した場合、CAB間の売買が虚偽であることを知らなければ、ACに対して「AB間の売買は無効だから、Bは所有者ではなく、Cも所有権を取得できない」と主張できません。

これは、虚偽の外観を作り出したA・Bよりも、その外観を信頼した善意のCを保護すべきだからです。

ここで重要なのは、当事者間では無効ですが、民法942項の規定により善意の第三者との関係では、その無効を主張できない場合があることを理解しておくことです。

3章:善意の第三者は942項で保護される

民法942項により、通謀虚偽表示につき善意の第三者は保護されています。

通謀虚偽表示について、当事者間で無効とすることは比較的分かりやすいですが、その虚偽の外観を信頼して取引に入った第三者をどう扱うかは、民法総則の中でも非常に重要なテーマです。

そこで、この章では、942項の第三者の意味、善意の内容、無過失の要否、そして類推適用まで詳しく解説します。

3-1:「第三者」の範囲と善意の意味

民法942項は、通謀虚偽表示による無効を善意の第三者に対抗できないと定めています。

ここで「第三者」とは誰を指すのかが問題となります。

判例では、94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者で、虚偽表示によって作り出された外観について、新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者とされています(大判大正5年11月17日)。

例えば、ABに土地を仮装譲渡し、Bがその土地をCに売却した場合、Cは虚偽表示を前提として新たに権利を取得しようとする者です。

そのため、C942項の第三者に該当します。

一方で、単なる事実上の利害関係人は第三者には該当しません。

例えば、単にその土地を借りたいと思っていた人や、近所に住んでいるだけの人は、虚偽表示に基づいて新たな法律上の利害関係を取得したわけではないため、942項の第三者には該当しません。

次に、「善意」とは何かが問題となります。

善意とは、虚偽表示であることを知らないことを意味します。

つまり、AB間の売買が仮装であることを知らなかった場合です。

善意かどうかは、第三者が法律上の利害関係を取得した時点で判断されます。

例えば、CBから土地を買った時点で、AB間の売買が虚偽であることを知らなければ善意とされます。

その後に虚偽表示であることを知ったとしても、原則として善意であったと評価されます。

このように、94条2項の第三者保護では、「第三者」と「善意」の意義を正確に理解し、事情に即して検討することが重要です。

3-2:第三者保護の要件に「無過失」は不要か

942項の重要論点として、第三者が保護されるために善意だけで足りるのか、それとも無過失まで必要かという問題があります。

942項において次のように規定されています。

「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」

一般的に、94条2項の第三者保護には善意で足り、無過失までは不要と解されています。

つまり、第三者に多少の不注意があったとしても、虚偽表示であることを知らなければ、原則として保護されます。

なぜ無過失までは要求されないのでしょうか。

それは、「条文に規定されていないから」という形式的な理由に加え、虚偽の外観を作り出した当事者の帰責性が強いからです。

ABが通じて虚偽の売買を装ったからこそ、CBを権利者だと信じる外観が生じました。

その外観を作り出した者よりも、それを信頼した善意の第三者を保護する方が公平だと考えられているため、無過失までを要求していません。

この点は、本人の帰責性が弱い錯誤や詐欺などの場合と異なるところです。

通謀虚偽表示では、虚偽の外観を作った当事者双方に強い帰責性があるため、第三者保護が比較的強く認められている点は、非常に重要です。

もっとも、第三者が通謀虚偽表示について悪意であれば保護されません。

3-3942項の類推適用とは何か

通謀虚偽表示の発展的論点として、942項の類推適用があり、予備試験・司法試験でも非常に重要です。

942項は、本来、通謀虚偽表示がある場合に、善意の第三者を保護する規定です。

しかし、現実には、通謀虚偽表示がない場合でも、真実と異なる権利外観が存在し、それを信頼した第三者を保護すべき場面があります。

この判例は、虚偽の外観作出について真の権利者に帰責性がある場合に、942項の趣旨を用いて第三者を保護する考え方を示しています。

94条2項の類推適用が認められるためには、一般に、虚偽の外観が存在すること、真の権利者にその外観作出について帰責性があること、第三者がその外観を信頼して取引に入ったことが必要になります。

この考え方は、権利外観法理と呼ばれ、真実の権利関係とは異なる外観が存在し、その外観を信頼した第三者がいる場合に、外観作出について責任のある者よりも、信頼した第三者を保護しようとする考え方です。

以上のように942項の類推適用を検討する際には、条文をそのまま当てはめるだけではなく、その趣旨を理解して、「なぜ類推適用できるのか」を説明できるようにしておくことが重要です。

4章:通謀虚偽表示の2つの論点と3ステップ

通謀虚偽表示(民法94条)は、条文自体は短いものの、短答式・論文式のどちらでも問われやすい重要分野です。

特に、第三者保護の要件や942項の類推適用は、知識の正確さと事案処理能力の両方が求められます。

そこで、本章では、短答式で狙われる頻出論点と、論文で使える処理手順を整理します。

4-1:短答式で狙われる2つの頻出論点

短答式でまず狙われるのは、94条2項で規定する「善意の第三者」の意義です。

まず、942項の第三者保護に無過失が必要かという点を整理する必要があります。

先ほど述べたように、一般的には、善意で足り、無過失までは不要と解しています。

また、「第三者の範囲」も重要です。

942項の第三者とは、虚偽表示の外観を前提として新たに独立の法律上の利害関係を取得した者をいいます。

なお、第三者が権利を取得した時点で善意であれば、その後に虚偽表示であることを知っても、原則として保護されます。

94条2項の類推適用も短答式でよく問われます。

厳密な通謀虚偽表示がなくても、不実の登記など虚偽の外観が存在し、その作出について真の権利者に帰責性がある場合には、942項の類推適用が問題になります。

短答式では、条文の文言だけでなく、判例法理としての類推適用まで整理しておく必要があります。

4-2:「嘘の合意無効善意者保護」の流れ

論文式では、通謀虚偽表示を3ステップで処理すると答案が安定します。

第1ステップは、通謀虚偽表示の成立を認定することです。

ここでは、外形上の意思表示があること、真意と異なる虚偽の表示であること、相手方と通じていることを確認します。

事案に即して、当事者がどのような目的で虚偽の外観を作ったのかを丁寧に拾うことが重要です。

第2ステップは、当事者間の効果を論じることです。

通謀虚偽表示が成立すれば、民法941項により無効となります。 

ここでは、取消しではなく無効である点を明確に示す必要があります。

答案では、「AB間の売買は通謀虚偽表示にあたり無効である」と簡潔に書けるようにしておくとよいでしょう。

第3ステップは、第三者保護を検討することです。

第三者が登場している場合には、その者が942項の第三者にあたるか、その者が善意かを検討します。

さらに、通謀虚偽表示そのものがない場合でも、虚偽の外観と帰責性がある場合には、942項の類推適用を検討します。

この3ステップをまとめると、「嘘の合意があるか」「あるなら当事者間では無効」「第三者がいるなら善意者保護」という流れになります。

この流れを押さえておけば、仮装売買、不実登記、名義貸し、無権利者からの転得など、さまざまな問題に対応しやすくなります。

また、論文式では、結論だけでなく、なぜ第三者を保護するのかという理由づけが重要です。

通謀虚偽表示では、虚偽の外観を作出した当事者に帰責性があり、その外観を信頼した善意の第三者を保護する必要があります。

この価値判断を答案に示すことで、より説得的な答案になります。

まとめ:通謀虚偽表示|要件・効果・第三者保護の3つのポイント

通謀虚偽表示は、民法総則の中でも重要度の高い分野です。

その本質は、当事者が通じて嘘の意思表示をした場合、その当事者間では無効としつつ、その虚偽の外観を信頼した善意の第三者を保護する点にあります。

この場面では、虚偽の意思表示、相手方との通謀、外形上の意思表示があることが求められます。

さらに、他の意思表示の欠缺の場面の類型との違いも重要です。

具体的には、心裡留保との違いは、相手方と通じているかどうかにあり、錯誤との違いは、表意者がズレを認識しているかどうかにあります。

また、詐欺との違いは、一方がだまされているのではなく、当事者双方が虚偽を了解している点にあります。

こうした特質を踏まえ、通謀虚偽表示の効果としては、当事者間では無効となります。

そして最も重要なのが、第三者保護です。

民法942項により通謀虚偽表示の無効は第三者に対抗できません。

この第三者保護は善意で足り、無過失までは不要と理解されています。

また、942項は、虚偽の外観と帰責性がある場合に類推適用されることがあり、この点は予備試験・司法試験でも重要な論点です。

特に論文式において通謀虚偽表示を検討する際には、「嘘の合意無効善意者保護」という流れで整理すると分かりやすくなります。

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方を体系的に整理して解説しました。

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