【行政法入門6】 行政契約とは?3つの種類別に重要判例を徹底解説

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【行政法入門6】 行政契約とは?3つの種類別に重要判例を徹底解説
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 行政契約とは?
  • 給付行政のための行政契約
  • 規制行政のための行政契約
  • 準備行政のための行政契約

この記事は、

  • 行政契約の全体像を理解したい
  • 行政契約の種類とそれぞれの特徴を知りたい
  • 行政契約が問題となった重要判例を押さえたい

といった方におすすめです。

行政といえば、許可や命令といった権力的手段をまず思い浮かべるかもしれませんが、国民と対等な立場で契約を締結するなど、非権力的な手段も広く用いています。

例えば、私たちが毎日使っている水道も、行政(水道事業者)との契約関係に基づいて利用しています。

このように、行政契約は私たちの生活に身近な存在です。

他方で、民法上の一般的な契約と何が違うのか、国民に対してどのような法的効果があるのか、初学者にとって整理が難しい分野でもあります。

そこで、この記事では、

1章で行政契約とは何か

2章で給付行政のための行政契約

3章で規制行政のための行政契約

4章で準備行政のための行政契約

について、それぞれ解説します。

行政契約に関する用語の定義から重要判例まで丁寧に解説していますので、初学者の方はもちろん、一度学んだ内容を復習したい方にも活用していただけます。

1章:行政契約とは?

行政契約とは、その名のとおり行政が締結する契約を指しますが、一般的な私人間の契約とは異なる性質を持っています。

この章では、行政契約の定義や特徴を中心に、その全体像を分かりやすく解説していきます。

1-1:行政契約の定義と特徴

行政契約とは、国や地方公共団体などの行政主体が、行政目的を実現するために、他の行政主体や私人と対等な立場で締結する契約です。

行政の活動には、大きく分けて「権力的な作用」と「非権力的な作用」があります。

許可や命令といった「行政行為」は、相手方の同意がなくても一方的に法的効果を生じさせる権力的な行政作用です。

これに対し、「行政契約」は、当事者双方の合意によって成立する非権力的な行政作用であり、この点で行政行為と大きく異なります。

さらに、行政契約には次のような特徴があります。

■法律の根拠は原則として不要

行政行為は国民の権利・自由を一方的に制限するため、法律の根拠が必要です。

一方、行政契約は当事者同士の合意に基づくため、原則として法律の根拠は必要ありません。

ただし、行政が自由に締結できるわけではなく、予算や契約手続に関する法的制約は受けます。

■行政手続法の対象外 

行政手続法は、「処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続」について共通のルールを定めたものであるため、行政契約は対象外とされています。

1-2:行政契約の種類

行政契約は、誰と誰が契約するかによって、大きく2種類に分けられます。

①行政主体と私人との契約

国や地方公共団体が、市民や民間企業などと結ぶ契約です。

この類型は、契約の目的によってさらに以下の3種類に分類されます。

  • 給付行政のための行政契約
  • 規制行政のための行政契約
  • 準備行政のための行政契約

それぞれの内容は、2章以降で詳しく解説します。

②行政主体間の契約

国と地方公共団体や、地方公共団体同士が締結する契約などです。

たとえば、地方公共団体間の事務の委託契約や、国有財産を地方公共団体に売却する際の契約などがこれにあたります。

1-3:行政契約が受ける制約

行政契約は当事者の合意によって成立するため、基本的には民法の契約ルールが適用されます。

しかし、行政が締結する契約である以上、民法だけに従えばよいわけではありません。

行政は常に国民全体の利益のために活動することが求められ、契約の財源も国民の税金です。

もし行政が私人と同様に自由に契約ができるとすれば、恣意的な相手方選択や不合理な支出を招きかねず、国民に対する公平性も損なわれてしまいます。

そのため、行政契約には、平等原則や比例原則といった憲法・行政法上の一般原則が及びます。

また、税金を原資とする契約の公正性と効率性を確保するため、会計法や地方自治法に基づき、予算や手続きの面での制約を受けます。

このように行政契約は、民法を基礎としつつも、公益確保や公平性の観点から独自の制約を受ける点に特徴があります。

2章:給付行政のための行政契約

この章では、行政主体と私人との契約のうち、行政サービスを国民に提供するために締結される行政契約について解説します。

2-1: 契約の目的と具体例

給付行政とは、行政が国民に公共サービスを提供することで、生活に必要な便益を広く・公平に・安定的に届けることを目的とする行政活動をいいます。

この場面で結ばれる行政契約の具体例として挙げられるのは、水道の給水契約や公営住宅の利用契約などです。

これらは、公共性の高いサービスを公正に提供するものであるため、契約相手の選定や契約条件、利用の公平性などに法的な制約が課されます。

たとえば、水道事業者には水道法により「正当の理由がなければ給水を拒んではならない」という給水義務(水道法第15条)が課されており、恣意的な契約拒否は許されません。

なお、給付行政が常に契約の形で行われるわけではなく、生活保護の決定のように、行政が一方的に行う行政行為による場合もあります。

次に、先ほど紹介した給水義務に関して、その例外が認められた有名な判例を紹介します。

2-2:【判例】志免町給水拒否事件

志免町給水拒否事件(最判平成11年1月21日)は、行政が給水契約を拒否したことを適法とした事件です。

■ 事件の概要

福岡県志免町(被告)が、人口急増による給水能力の不足を理由に、マンション分譲業者(原告)からの420戸分の給水契約申込を拒否。

開発業者が給水義務の履行を求めて、志免町を提訴した。

■ 争点

志免町の給水契約の拒否が、水道法第15条第1項の「正当の理由」に当たるかどうか。

■ 最高裁の判決内容

・当該給水契約の拒否は「正当の理由」に該当し、適法

  • 水道は国民にとって必要不可欠であり、市町村は可能な限り水道水の需要を賄う計画を立て、給水契約の申込みに応じる義務があり、みだりにこれを拒否できない
  • もっとも、水資源や供給能力には限界があるため、合理的な供給計画でも対応できない場合には、「正当の理由」があるとして給水契約を拒否することが許される
  • 深刻な水不足が予測される逼迫した給水状況の下、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策はやむを得ない

■ この判例のポイント

給付行政としての行政契約では、行政にも一定の契約義務が生じる一方、供給能力など公益上の制約がある場合には拒否も許されることを示した判例です。

3章:規制行政のための行政契約

この章では、行政主体と私人との契約のうち、環境保護などの規制目的を任意の合意により実現するために締結される行政契約について解説します。

3-1:契約の目的と具体例

規制行政とは、国民や企業の活動を規制することで、環境保護や安全確保といった公益を守ることを目的とする行政活動です。

規制行政は通常、一方的な権力行使である行政行為(改善命令、許可の取消しなど)によって行われます。

しかし、以下のような場合には、相手方の任意の合意によって目標を達成する「行政契約」の形が選択されることがあります。

  • 法律の根拠がない場合
  • 相手方の同意を得る方法が妥当な場合
  • 法律の基準を超える先進的な規制が必要な場合

行政行為による規制には法律の授権が必要ですが、行政契約は相手方の同意に基づくため、原則法律の根拠は必要ありません。

また、地域の実情に合わせた自主的な取り組みを促す場面では、一方的な処分よりも合意に基づく協定のほうが、継続的な遵守を期待しやすいという利点もあります。

具体例としては、工場の有害物質排出を規制する公害防止協定や、地域の自然環境・生活環境の保全を目的とした環境保全協定が代表的です。

次に、これらの協定の法的効力が争われた有名な判例を紹介します。

3-2:【判例】福間町公害防止協定事件

福間町公害防止協定事件(最判平成21年7月10日)は、公害防止協定の法的拘束力について争われた事件です。

■事件の概要

福岡県旧福間町は、産業廃棄物処分業者(被告)との間で公害防止協定を締結し、処分場の使用期限を定める条項を設けていた。

しかし、その期限を過ぎても処分業者が処分場の使用を続けたため、福間町の地位を承継した市(原告)が、協定に基づき処分場の使用の差止めを求めて提訴した。

■争点

廃棄物処理法に基づく廃棄物処分業許可の有効期間中に、協定の使用期限条項により施設使用が禁止されることは、同法の趣旨に反して違法か。

■最高裁の判決内容

・協定の使用期限条項は廃棄物処理法の趣旨に反せず、法的拘束力を否定できない

  • 廃棄物処理法における知事の許可は、処分業者に対し、有効期間中の施設の使用を約束するものではない
  • また、公害防止協定において施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者の自由な判断で行えることであり、同法にも何ら抵触しない

■この判例のポイント

公害防止協定の法的拘束力が争われた判例です。

法律で規制される事業であっても、事業者が任意でより厳しい義務を引き受けることは可能であり、そのような合意は原則として法的に有効であることが示されました。

4章:準備行政のための行政契約

この章では、行政主体と私人との契約のうち、行政活動に必要な物品・サービスを調達するために締結される行政契約について解説します。

4-1:契約の目的と具体例

準備行政とは、行政機関が自らの業務を遂行するために必要な物的・人的手段を調達する行政活動をいいます。

この場面で結ばれる行政契約の具体例として挙げられるのは、業務で使う事務用品や車両の購入契約や、公共工事の請負契約などです。

こうした契約は通常の民間契約と同じく当事者間の合意に基づくため、基本的には民法の規定が適用されます。

ただし、契約の原資は国民の税金であるため、公正かつ効率的に運用されることが強く求められ、以下のような制約が課されます。

■予算議決主義 

行政が行う契約の締結や支出は、原則として議会で議決された予算の範囲内で行わなければなりません。

■契約方式の制限 

公正な競争を通じて税金の無駄遣いを防ぐため、原則「一般競争入札」(広く一般に公募して最も条件の良い業者と締結する方法)を採用しなければなりません。

例外的に認められる「指名競争入札」や「随意契約」(特定の相手と直接交渉する方法)については、その要件が法令で厳しく限定されています。

次に、この随意契約による行政契約の効力について争われた判例を紹介します。

4-2:【判例】売却処分無効確認等請求事件

売却処分無効確認等請求事件(最判昭和62年5月19日)は、法令に違反して締結された随意契約について争われた事件です。

■事件の概要

大阪府のある町(被告)が、他の町と共有する土地の持分を随意契約で売却した。

この売却は、随意契約を認める法令の要件のいずれにも当てはまらないとして、住民(原告)が売却に伴う所有権移転登記手続の差止めを求め、住民訴訟を提起した。

■争点

随意契約の制限に関する法令(地方自治法施行令第167条の2第1項)に違反して締結された売買契約は、私法上も無効となるのか。

■最高裁の判決内容

・当該随意契約は私法上当然に無効とはいえないため、差止め請求を棄却

  • 随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約であっても、私法上当然に無効となるのは、それを無効にしなければ法の趣旨が没却される特段の事情がある場合に限られる(違法性が誰の目にも明らかな場合や、相手方が違法性を認識し得た場合など)
  • これは、契約の相手方において不測の損害を被ることを防ぐため
  • 本件ではそのような特段の事情は認められない
  • そのため、本件契約は私法上無効とはならず、被告は契約に基づく義務を履行すべき

■この判例のポイント

行政が法令の手続規制に違反して契約を締結しても、その契約が「私法上当然に無効」になるとは限らないことを示した判例です。

行政法上の違反と民事法上の効力は、必ずしも一致しないという点に注意しましょう

まとめ

行政契約は、行政主体が行政目的のために、他の行政主体や私人と対等な立場で締結する契約です。

基本的には民法が適用されますが、行政固有の公共的性質から、憲法・行政法の一般原則による制約や一般競争入札などの手続的規制を受けます。

行政契約には行政主体が私人と契約する場合と、行政主体間で契約する場合がありますが、前者はその目的によって以下の3つに分類されます。

  • 給付行政のための行政契約:(例)水道の給水契約、公営住宅の利用契約
  • 規制行政のための行政契約:(例)公害防止協定、環境保全協定
  • 準備行政のための行政契約:(例)事務用品の購入契約、公共工事の請負契約

それぞれの類型で論点が異なるため、本記事で紹介した判例を参照しながら、各要点を押さえておきましょう。

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方を解説しています。

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