【行政法入門5】法規命令と行政規則の違いは?重要判例を徹底解説!

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 行政基準の意義と種類
  • 法規命令とは「国民を拘束する行政庁が作るルール」
  • 行政規則とは「国民を直接拘束しない行政内部のルール」

この記事は、

  • 行政基準とは何かを知りたい
  • 法規命令と行政規則の違いを理解したい
  • 行政基準に関する重要判例を知りたい

といった方におすすめです。

行政法の学習を進めると、「政令」「省令」「通達」など、法律とは違う種類のルールが次々と出てきます。

これらをひとまとめに「行政基準」と呼びますが、「法律とどう違うのか」「それぞれのルールの違いは何か」といった点で混乱する方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、

1章で行政基準の意義と種類

2章で法規命令の分類と重要判例

3章で行政規則の種類と重要判例

について、それぞれ解説します。

それぞれの用語の定義から判例の具体的内容まで丁寧に解説していますので、初学者の方はもちろん、一度学んだ内容を整理したい方にも活用していただけます。

1章:行政基準の意義と種類

行政基準とは、行政機関が制定するルール(規範)の総称です。

本来、国民の権利・義務に関するルールは、国民の代表が集まる国会が法律という形で制定するのが原則です(憲法41条)。

しかし、現代の行政活動は複雑かつ多岐にわたるため、国会がすべてのルールを定めることには限界があります。

そこで、一定の範囲で行政機関にもルールを定める権限が認められています。

行政基準が必要とされる理由は主に次の3点です。

  • 専門的・技術的な内容を扱う場面(専門知識を持つ行政機関が定める方が合理的な事項)
  • 社会変化への即応性が求められる場面(法律改正では対応が遅れるおそれがある事項)
  • 政治的中立性が必要な場面(政治的影響から独立した立場でルールを設けるべき事項)

また、行政基準は、以下のとおり大きく2種類に分類されます。

行政基準

国民の権利・義務に直接影響を与える「法規命令」と、行政組織の内部ルールにとどまる「行政規則」です。

次章以降でそれぞれ解説します。

2章:法規命令とは「国民を拘束する行政庁が作るルール」

法規命令とは、行政基準のうち国民の権利・義務に直接影響を与えるルールのことです。

「行政立法」とも呼ばれます。

法規命令は、さらに以下のような分類があります。

  • 制定権者による分類
  • 内容・根拠による分類

それぞれ説明します。

2-1:制定権者による分類【政令・内閣府令・省令・規則】

法規命令は、どの行政機関が制定するかによって、主に以下の4種類に分類されます。

■政令:内閣が制定(憲法第73条第6号)

「〇〇法施行令」や「〇〇令」といった名称が典型例です。

■内閣府令:内閣総理大臣が制定(内閣府設置法第7条第3項)

「〇〇内閣府令」という名称のほか、「〇〇規則」といったものもあります。

■省令:各省の大臣が制定(国家行政組織法第12条第1項)

「〇〇法施行規則」や「〇〇に関する省令(命令)」という名称が多いですが、「〇〇基準」や「〇〇規程」など様々な名称があります。

■規則:各省の外局(庁、委員会)や人事院、会計検査院などの長が制定(国家行政組織法第13条第1項)

人事院規則が代表例で、基本的には「〇〇規則」といった名称となります。

2-2:根拠と内容による分類【委任命令・執行命令】

法規命令は、その根拠と定める内容によって、委任命令と執行命令の2種類に分類されます。

■委任命令

法律による明示的・具体的な委任を受けて制定され、その法律の具体的内容を定める命令です。

法律に定めのない新たな権利・義務を設けることができる点に特徴があります。

たとえば、法律に「○○の基準は政令で定める」という条文があれば、その政令が委任命令にあたります。

■執行命令

法律が定めた内容を具体的に実施するための手続きや細則を定める命令です。

法律にない新たな権利・義務を定めることはありません。

また、法律に明示的な委任規程がなくても、法律の実施に必要な範囲内で制定できます。

たとえば、申請書の様式や提出期限の細則を定める省令などが典型例です。

この2つのうち、特に委任命令については、法律にないルールを行政がどこまで定められるのかが、実際の裁判でも繰り返し争われてきました。

次節では、委任命令に関する重要な制約とその判例を確認しましょう。

2-3:【法規命令の論点1】白紙委任の禁止

白紙委任の禁止とは、法律が行政機関に立法を委任する場合、委任する対象事項・範囲を個別的・具体的に定めなければならないというルールです。

憲法41条は「国会は、国の唯一の立法機関である」と定めており、法律を制定できるのは国民の代表である国会に限られます。

そのため、法律が委任の対象・範囲を何も定めずに「一切を○○に委ねる」といった形の包括的委任(白紙委任)を行うことは、憲法41条の趣旨に反し、違憲となります。

次節では、この白紙委任が問題となった判例を確認しましょう。

2-3-1:(判例)堀越事件

堀越事件(最判平成24年12月7日)は、刑罰の対象行為の具体化を委任した規定が白紙委任となるかが問題となった事件です。

■ 事件の概要

厚生労働省の課長補佐が、勤務時間外である休日に特定の政党の機関紙配布をしていたところ、住居侵入容疑で現行犯逮捕された。

住居侵入罪については不起訴処分とされたが、政治的行為を行ったことが国家公務員法違反になるとして起訴された。

■ 争点

国家公務員法第102条第1項は国家公務員の政治的行為を禁止し、その具体的内容の定めを人事院規則に委任している。

懲戒処分の対象と刑罰の対象を区別することなく同じ人事院規則で定めているのは、白紙委任にあたるか。

※この事件は、当該規定が憲法で保障される表現の自由に違反するか、被告人の行為が禁止される政治的行為にあたるかが主な争点となります。

憲法に関する論点は以下の記事で詳しく解説していますので、ここでは、白紙委任の問題に絞って解説します。

堀越事件と猿払事件の事案の違いを徹底解剖!二つの判例の差を完全理解しなければ高得点は狙えないということについて解説

■ 最高裁の判決内容

・当該規定は白紙委任にはあたらない



l  「公務員の職務の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為」の類型を人事院規則に定めさせるものであり、委任の範囲・目的が明確である

l  懲戒処分では対応しきれない重大な場合も想定されるため、刑罰まで含めて人事院規則に委任することも不合理ではない

■ この判例のポイント

委任の対象・範囲が法律の趣旨・目的に照らして限定的に解釈できる場合には、白紙委任にはあたらないと判断した判例です。

2-4:【法規命令の論点2】委任範囲の逸脱

委任範囲の逸脱とは、法規命令が、法律による委任の趣旨・目的・範囲を超えた内容を定めてしまうことをいいます。

白紙委任の禁止が「委任する法律側の問題」であるのに対し、委任範囲の逸脱は「委任を受けた命令側の問題」です。

委任の範囲を逸脱した法規命令は違法・無効となります。

法規命令はあくまで法律の委任を根拠として効力を持つものであり、その委任の枠を超えた部分には法的根拠がないからです。

次に、委任命令の委任範囲の逸脱が正面から争われた重要判例を解説します。

2-4-1:(判例)医薬品ネット販売事件

医薬品ネット販売事件(最判平成25年1月11日)は、法律の委任に基づき制定された省令の違法性が争われた事件です。

■ 事件の概要

新薬事法施行後に改正された薬事法施行規則において、第1類・第2類医薬品のネット販売が一律に禁止となった。

インターネットを利用した医薬品販売事業者(原告)が、この省令は薬事法の委任範囲を超えており違法と主張し、ネット販売の権利の確認を求めて厚労省(被告)を提訴した。

■ 争点

薬事法は、一般用医薬品の販売方法に関する規制内容の具体化を省令に委任していた。

この委任を受けた省令がインターネット販売を一律に禁止したことは、薬事法による委任の趣旨・目的・範囲を逸脱しているか。

■ 最高裁の判決内容

第1類・第2類医薬品のネット販売を一律禁止にする省令の規定は、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効。

←新薬事法はネット販売禁止や対面販売義務を明示しておらず、国会にその意思があったとも言い難いことから、そのような強い規制を省令に委ねたとは解釈し難いため。

■ この判例のポイント

委任命令が委任の範囲を逸脱した場合には、違法・無効となるという原則を示した判例です。

3章:行政規則とは「国民を直接拘束しない行政内部のルール」

行政規則とは、行政基準のうち、行政組織の内部における事務処理の基準や方針を定めたものです。

国民の権利・義務に直接影響を与える「法規」としての性質を持たず、行政機関は法律上の根拠なしに制定することができます。

この章では、行政規則の種類と重要判例を解説します。

3-1:行政規則の種類

行政規則には主に以下の6種類があります。

■訓令:上級行政機関が下級行政機関に対する指揮監督権に基づいて発する命令(

■告示:行政機関が決定・認定した事項を国民に広く知らせる行為(国家行政組織法第14条第1項)。

法令に基づく指定や決定事項、その他の重要事項の官報への掲載などがこれにあたります。

■審査基準:各種申請に対して許認可するかどうかを判断するための基準(行政手続法第5条)

■処分基準:不利益処分をするかどうか、またどのような処分をするかを判断するための基準(行政手続法第12条)

■行政指導指針:同一の行政目的のために、複数の者に対して行う行政指導の内容を共通して定めたもの(行政手続法第36条)。

3-2:【行政規則の論点】国民を直接拘束しない

行政規則は原則として行政内部のルールであり、国民や裁判所を直接拘束しません。

したがって、国民に新たな権利義務を直接生じさせることもなく、また行政規則に違反しただけでは直ちに違法とはなりません。

裁判所は行政規則に拘束されずに独自に法令の解釈を行い、行政規則に基づく処分が根拠法令に照らして適法か否かを審査します。

以下では、このような行政規則の法的性質が争われた判例を解説します。

3-2-1:(判例)墓地埋葬通達事件

墓地埋葬通達事件(最判昭和43年12月24日)は、通達の処分性について問題となった事件です。

■事件の概要

昭和35年、厚生省(被告)が「墓地、埋葬等に関する法律第13条の解釈について」と題する通達を発出。

この通達は、宗教団体の墓地管理者が他宗派の信者であることを理由に埋葬を拒否することは、同条の「正当の理由」に当たらないという解釈を示したものであった。

(参考)墓地、埋葬等に関する法律

第13条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

これに対し、従来から自宗派の信者のみを埋葬してきた寺院(原告)が、この通達により異宗派の埋葬を強要されると主張し、通達の取消を求めて提訴した。

■争点

厚生省の通達が、取消訴訟の対象となるか。

■最高裁の判決内容

・取消訴訟は不適法(却下)

←通達は行政組織内部の命令にすぎず、国民を直接拘束する「処分」ではないため

・通達の内容に従わなくても直ちに違法にはならない

l  裁判所は通達に拘束されず、独自の解釈を行うことができる

l  本件の「正当の理由」の判断にあたっては、通達に示される事情以外の事情も考慮すべきであるため

■この判例のポイント

「行政規則(通達)は国民を直接拘束しない」という原則を明確に示した判例です。

まとめ

行政基準とは行政機関が制定するルールの総称であり、次の2種類に分かれます。

  • 法規命令(行政立法):国民の権利・義務に直接影響を与え、国民や裁判所を拘束する
  • 行政規則:行政組織の内部ルールであり、原則として国民や裁判所を直接拘束しない

このうち法規命令は、さらに以下の2つに分類されます。

  • 委任命令:法律が委任した範囲で新たなルールを設ける命令
  • 執行命令:法律を実施するための細則を定める命令

試験で問われやすい論点は、委任命令の「白紙委任の禁止」と「委任範囲の逸脱」、そして行政規則が国民を直接拘束するか否かという点です。

これらはいずれも実際の裁判で争われた論点となるので、本記事で紹介した判例をはじめとした重要判例を確実に押さえておきましょう。

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方を解説しています。

ここで紹介できなかった判例の詳しい解説や実践的な答案の書き方について知りたい方は、ヨビロン行政法のテキストをご購入いただけると幸いです。

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