【刑法各論入門7】性的自由に対する罪|不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の要件まとめ

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【刑法各論入門7】性的自由に対する罪|不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の要件まとめ
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 性的自由に対する罪とは?保護法益から理解する
  • 不同意わいせつ罪(刑法176条)の構成要件
  • 不同意性交等罪(刑法177条)の構成要件
  • 2023年改正で何が変わった?旧法との3つの違い


この記事は、

「刑法各論の入門として性的自由に対する罪(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪)を体系的に理解したい」

「旧法(強制わいせつ罪・強制性交等罪)からの改正ポイントを理解したい」

という方におすすめです。

刑法各論の学習において、第22章「わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪」のうち、「性的自由に対する罪」(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪)は近年の法改正の影響もあり、非常に重要な分野です。

特に2023年の刑法改正によって、「強制わいせつ罪」「強制性交等罪」という従来の枠組みは大きく見直され、「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」という新たな構造に再編されました。

その結果、従来の「暴行・脅迫」を中心としていたところから、「同意の有無」という観点へと大きく転換しています。 

この点は、単なる条文の変更にとどまらず、構成要件の理解や答案の書き方にも直接影響を与える重要なポイントです。

もっとも、「不同意とは何か」「どのような場合に犯罪が成立するのか」といった点は、初学者が混乱しやすい事項でもあります。

そこで、本記事では、性的自由に対する罪を初学者向けに体系的に整理し、不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の構成要件、さらに2023年改正のポイントまで解説します。

具体的には、

1章では、性的自由に対する罪の保護法益

2章では、不同意わいせつ罪(刑法176条)の構成要件

3章では、不同意性交等罪(刑法177条)の構成要件

4章では、2023年改正で何が変わった旧法との3つの違い

を解説します。

1章:性的自由に対する罪とは?保護法益から理解する

性的自由に対する罪を理解するためには、まず「なぜこの行為が犯罪とされるのか」「どういったことを守ろうとしているのか」という根本的な視点から出発することが重要です。

性的自由に対する罪を理解するには条文を追うだけでなく、保護法益を軸に全体像を把握することで、初めて体系的に理解できます。

そこで、この章では、性的自由に対する罪の保護法益を説明した上で全体像を解説します。

1-1:保護法益は「性的自己決定権」なぜ罰せられるのか

性的自由に対する罪の保護法益は、「性的自己決定権」であるとされています。

これは、自らの性的行為について、誰と、どのような形で関係を持つかを自由に決定する権利を意味します。

保護法益を理解するにあたって重要なのは、性的犯罪が単なる身体侵害ではなく、「意思決定の自由」を侵害する犯罪として考えられている点です。

すなわち、犯罪の成否を検討するにあたっては身体的な接触そのものではなく、その行為が「自由な意思に基づくものかどうか」という点を評価することになります。 

このような価値判断から、2023年改正では、「暴行・脅迫があったかどうか」ではなく、「同意があったかどうか」が中心的な判断要素となりました。

つまり、外形的な強制の有無ではなく、被害者の意思決定が実質的に侵害されていたかどうかが問われる構造に変化しました。

1-2:不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の全体像

現行法では、性的自由に対する罪の中心は、刑法176条の不同意わいせつ罪と、刑法177条の不同意性交等罪です。 

両者はいずれも「不同意」を中核とする犯罪ですが、その違いは行為の内容にあります。

不同意わいせつ罪は、性的な接触行為一般を対象とするのに対し、不同意性交等罪は、より重大な性的侵害である性交等を対象とする犯罪です。 

このように、両者は行為の重大性に応じて区別されています。

また、いずれの罪においても、「不同意がどのような場合に認められるのか」が重要な論点となります。

この点については、条文上「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」と規定されており、後述するように具体的な類型が示されています。

2章:不同意わいせつ罪(刑法176条)の構成要件

不同意わいせつ罪は、性的自由に対する罪の基本類型です。

そのため、条文の文言だけでなく、その背後にある判断枠組みを理解することが重要です。

そこで、この章では、わいせつな行為の判断基準と、8つの不同意事由を解説します。

2-1:「わいせつな行為」の意義と判断基準

刑法176条は次のとおり規定しています。

「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。」

「わいせつ」とは、判例上、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの」とされています(最大判昭32・3・13チャタレイ事件)。

もっとも、この判例は、わいせつ物頒布罪(1751項)が問題となった事案です。つまり、「外から見ていやらしいと感じられるか」が重要になります。

例えば、キスをする行為は、外から見ていやらしいとまでは感じられないため、わいせつとはいえません。

これに対し、不同意わいせつ罪の場合、被害者の「被害者にとっていやらしいと感じられるか」が問題となるため、無理やりキスをする行為なども「わいせつな行為」にあたります。

ここで重要なのは、単なる身体接触ではなく、「性的意味を持つ行為」であるかどうかが判断基準となる点です。 

例えば、医療行為や日常的接触であっても、性的意図を持って行った場合などは、「性的意味を持つ行為」として、わいせつ行為に該当する可能性があります。 

2-28つの不同意事由同意を欠く場面の具体例

現行法の最大の特徴は、「不同意」の判断を具体化するために、複数の類型が条文上明示された点にあります。

具体的には、刑法176条には、以下のとおり規定されています。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

このように暴行・脅迫だけでなく、心理的圧迫、地位関係の利用、酩酊状態、意識不明など、さまざまな事情によって自由な意思決定が妨げられている場合が想定されています。

これにより、明確に拒絶はしていない場合であっても、上記の事情があり実質的には同意していないと評価される場合には処罰対象となる可能性があります。

2-3:故意

不同意わいせつ罪は故意犯であり、行為者には、相手方の同意がないことについての認識が必要です。

ただし、実務上は、具体的事情から同意の不存在が認定されることが多く、明示的な拒絶がない場合でも本罪が成立し得ます。

3章:不同意性交等罪(刑法177条)の構成要件

この罪は、不同意わいせつ罪と同様に「不同意」を中核としつつも、行為の重大性に応じてより重い刑罰が科される点に特徴があります。

そこで、この章では、「性交等とは何か」「不同意わいせつ罪との関係」「加重類型や関連規定」という3つの視点から、構成要件を体系的に整理します。

3-1:「性交等」の範囲—4類型を整理する

不同意性交等罪の理解においては、まず「性交等」の範囲を正確に理解することが重要です。 

現行法では、性交等は従来の「強制性交等罪」における性交概念よりも広く定義されており、性的侵害の多様な態様を包括する形となっています。

刑法177条は次のとおり規定しています。

「前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する」

具体的には、性交等とは、単なる男女間の性交に限られず、口腔性交、肛門性交、さらに膣または肛門への身体の一部や物の挿入といった行為を含むものとされています。 

身体の内部への侵入を伴う行為を広く包含している点が特徴的です。

さらに重要なのは、「侵入」という要素です。

なぜなら、不同意わいせつ罪との区別は、単なる性的接触か、それとも身体内部への侵入を伴うかによって判断されることになります。

この点を曖昧にしたまま学習を進めると、罪名の選択を誤ってしまう可能性があるため、明確に区別して理解しておきましょう。

また、物の挿入が含まれる点も重要です。

旧法下では、人体に限られるような解釈もできましたが、現行法では物の使用による侵入も明確に処罰対象とされています。

このような被害の実質に着目した改正を行った点も重要なポイントです。

3-2:不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の区別 

不同意性交等罪と不同意わいせつ罪は、いずれも「不同意」を要件とする点で共通していますが、その区別をしっかりできるようになることは重要です。 

両者の本質的な違いは、「行為の重大性」、すなわち侵害の程度にあります。 

不同意わいせつ罪は性的接触全般を対象とするのに対し、不同意性交等罪は身体内部への侵入を伴う重大な性的侵害を対象とします。 

このため、事案においてどちらの罪が成立するかは、行為態様を具体的に評価することによって判断します。

つまり、身体への接触にとどまる場合は不同意わいせつ罪にとどまりますが、何らかの体内への侵入が認められる場合には不同意性交等罪が成立することになります。 

また、重要なのは、両罪が排他的関係に立つという点です。

つまり、一つの行為について両罪が同時に成立するわけではなく、より重い不同意性交等罪が成立する場合には、不同意わいせつ罪はその中に吸収されると理解されます。

さらに、実務上問題となるのは、「侵入があったかどうか」が曖昧な場合です。

このような場合には、行為の具体的態様、被害者の供述、医学的証拠などを総合的に評価して判断することになります。 

したがって、答案作成においても、「どの事実から侵入を認定するのか」という点を明確に示すことが重要です。

3-3:加重類型・準強制規定・罰則

不同意性交等罪は、基本類型に加えて、さまざまな加重類型や関連規定が存在する点にも特徴があります。

例えば、刑法181条2項は次のとおり規定しています。

「第177条若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の拘禁刑に処する。」

すなわち、不同意性交等の結果として被害者に傷害や死亡が生じた場合には、結果的加重犯として、より重い刑罰が科されることになります。

この場合には、基本犯と結果との間に因果関係が認められるかが重要な論点となります。

次に、準強制規定との関係も重要です。

すなわち、被害者が心神喪失や抗拒不能の状態にあることを利用して性交等を行った場合にも、不同意性交等罪が成立します。

ここでは、「利用した」という要素が重要であり、単に相手がそのような状態にあっただけでは足りず、その状態を認識し、それに乗じたことが必要です。 

さらに、未遂罪の成立も重要な論点です。

性交等に至らなかった場合でも、実行の着手が認められれば未遂犯として処罰されます。

この場合、どの時点で「実行の着手」が認められるかが問題となります。

このように、不同意性交等罪は、基本構造に加えて多層的な規定が存在するため、条文全体を一体として理解することが不可欠です。

4章:2023年改正で何が変わった?旧法との3つの違い

2023年の刑法改正は、性的自由に対する罪の理解において極めて重要な変化です。

この改正を正確に理解していない場合、旧法の知識との混同によって誤った答案を書いてしまうことになりかねません。

そこで、この章では、「要件構造の変化」「名称変更の意味」「試験対策上の重要論点」の3つの観点から、改正のポイントを整理します。

4-1:「暴行・脅迫」要件の廃止と8号事由の新設

旧法においては、強制わいせつ罪・強制性交等罪ともに、「暴行又は脅迫」が構成要件の中心に据えられていました。

そして、その暴行・脅迫は、被害者の反抗を著しく困難にする程度であることが必要とされていました。

しかし、この要件は、現実の被害実態と乖離しているとの批判がありました。

具体的には、実際には明確な暴行・脅迫がなくても、心理的圧迫や関係性によって自由な意思決定が妨げられるケースが多数存在するにもかかわらず、それらが十分に処罰されていなかったことが挙げられます。

そこで、2023年改正では、「不同意」という概念を中心に据え、その具体的内容として複数の類型を明示する方式が採用されました。

これにより、「暴行・脅迫があったか」ではなく、「自由な意思決定が可能であったか」という観点から判断が行われるようになりました。

この変更により、処罰範囲は実質的に拡大するとともに、判断枠組みもより実態に即したものとなっています。

4-2:「強制性交等罪」から「不同意性交等罪」へ名称変更の意義

名称変更は単なる形式的なものではなく、法の理念そのものの転換を示しています。

従来の「強制性交等罪」という名称は、「強制」という要素に着目したものであり、暴力的な側面が強調されていました。

しかし、改正後は「不同意性交等罪」という名称に変更され、「同意の有無」が本質であることが明確にされました。 

これは、性的行為において最も重要なのは「自由な意思に基づく同意」であるという価値判断を法が明確に示したものといえます。

したがって、答案作成においては、「暴行・脅迫の有無」ではなく、「同意の有無」「意思決定の自由の侵害」という観点から論じることが求められます。

4-3:予備試験・司法試験での重要論点2

試験対策として特に重要なのは、「不同意の判断」と「罪名の区別」という2点です。

まず、「不同意の判断」においては、単に被害者が拒否したかどうかではなく、「自由な意思に基づいて同意し得る状態であったか」が問われます。

この点については、具体的事情を丁寧に拾い上げて評価することが重要です。

次に、「不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の区別」は、典型的な論点です。

行為態様を正確に認定し、侵入の有無を基準として適切に罪名を選択することが求められます。 

さらに、未遂や共犯、他罪との関係といった応用論点も出題される可能性があるため、基本構造を確実に理解した上で、応用的な思考力を養うことが重要です。 

まとめ:性的自由に対する罪の要点を3分で復習する

性的自由に対する罪は、「性的自己決定権」を保護する犯罪であり、その中核は「同意の有無」にあります。

不同意わいせつ罪と不同意性交等罪は、行為の重大性によって区別されますが、いずれも「不同意」という共通の枠組みによって理解することが重要です。

そして、刑法は、同意を欠く類型を具体的に条文で規定していますので、事例などが提示された場合には丁寧に当てはめて検討することになります。

また、2023年改正によって、従来の「暴行・脅迫中心」の構造から、「同意中心」の構造へと大きく転換しました。

この点を踏まえた理解が、試験対策としても不可欠です。

さらに、刑法各論の入門段階から条文・構成要件・具体的事例を結びつけて学習することで、単なる知識にとどまらず、答案で使える実践的な力へ昇華させることができます。

この記事では、刑法各論の入門として初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しました。

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