【刑法各論入門5】逮捕罪と監禁罪の違いとは?刑法220条の構成要件を解説
目次
この記事を読んで理解できること
- 逮捕・監禁罪を定める刑法220条とは何か
- 逮捕罪と監禁罪の違いは「自由の奪われ方」
- 逮捕・監禁罪の4つの重要論点
- 予備試験で問われる関連犯罪との区別
この記事は、
「刑法各論の入門として逮捕・監禁罪を体系的に理解したい」
「逮捕罪と監禁罪の違いや他の犯罪との区別を明確に整理したい」
という方におすすめです。
刑法第31章「逮捕及び監禁の罪」には、自由に対する罪として、逮捕罪及び監禁罪が規定されています。
これらの犯罪は、人の身体的な自由を違法に拘束する行為を処罰する犯罪です。
司法試験や予備試験では、逮捕罪と監禁罪の内容を理解しているかどうかが問われることがあり、特に、両者の違いを理解することが重要です。
どちらも人の自由を奪う犯罪ですが、その自由の奪い方には違いがあります。
逮捕罪は、身体の自由を直接的に拘束する犯罪であり、監禁罪は、一定の場所に閉じ込めるなどして行動の自由を継続的に奪う犯罪です。
また、逮捕・監禁罪は、それ自体で完結する犯罪ではなく、略取・誘拐罪、強盗罪、住居侵入罪などの犯罪と組み合わさることもあります。
そのため、条文だけでなく、関連犯罪との関係を整理して理解することも重要です。
そこで、この記事では
- 逮捕罪と監禁罪の違い
- 逮捕・監禁罪の構成要件
- 予備試験で重要となる論点
- 関連犯罪との区別
を体系的に解説します。
具体的には、
1章では逮捕・監禁罪を定める刑法220条の内容
2章では逮捕罪と監禁罪の違いである「自由の奪われ方」
3章では逮捕・監禁罪の4つの重要論点
4章では予備試験で問われる関連犯罪との区別
について、それぞれ解説します。
刑法各論の入門として、逮捕罪と監禁罪の構造を理解し、試験や実務でも使える知識を身につけていきましょう。
1章:逮捕・監禁罪を定める刑法220条とは何か
刑法各論では、人の生命・身体・自由・財産など、さまざまな法益を保護するための犯罪に関する事項が規定されています。
その中で逮捕・監禁罪は、人の自由を侵害する犯罪として位置付けられています。
逮捕・監禁罪を理解するためには、まず刑法220条の条文の内容と、そこで保護されている法益を正確に理解することが重要です。
そこで、この章では、規定の内容と保護法益の整理を行い、逮捕・監禁罪の基本構造を解説します。
1-1:刑法220条の条文と法定刑
まず、刑法220条は、以下のとおり規定しています。
「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。」
この条文は、一見すると非常に簡潔ですが、重要なポイントがいくつか含まれています。
まず、「逮捕」と「監禁」という二つの行為類型が規定されていることです。
両罪は共通点が多いため、刑法220条で同一の条文で定められています。
次に、「不法に」という要件です。
これは、正当な権限に基づく拘束行為は犯罪にならないことを意味しています。
例えば、警察官が法律に基づいて被疑者を逮捕する行為は、当然ながら犯罪には当たりません。
参考:【刑事訴訟法入門3】逮捕の3類型─通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の要件と判例を体系的に解説
さらに、法定刑が比較的重い点です。
逮捕・監禁罪の法定刑は、三月以上七年以下の拘禁刑のみとされており、他の罪と比べても重く設定されています。
これは、身体の自由が極めて重要な法益であることを反映しています。
1-2:保護法益は「身体的行動の自由」の2側面
逮捕・監禁罪の保護法益は、身体的行動の自由です。
身体的行動の自由とは、人が自分の意思に基づいて自由に行動できる状態です。
例えば、
- 好きな場所へ移動する自由
- その場から離れる(留まる)自由
- 身体を拘束されない自由
などがこれに含まれます。
逮捕罪と監禁罪は、この身体的自由を侵害する犯罪ですが、その侵害の態様には違いがあります。
逮捕罪は、身体を直接拘束することによって自由を奪う犯罪です。
腕をつかんで動けないようにする行為などが典型例です。
これに対して、監禁罪は、一定の場所から出られない状態を作ることによって自由を奪う犯罪です。
例えば、部屋に閉じ込める、鍵をかけて外に出られないようにする、といった行為がこれに当たります。
このように、刑法220条によって守ろうとする身体的自由には、2つの側面があることを認識することが重要です。
2章:逮捕罪と監禁罪の違いは「自由の奪われ方」
刑法220条では、逮捕罪と監禁罪が同じ条文内に規定されています。
しかし、両罪は同一の犯罪ではなく、自由の奪い方の違いによって区別されます。
そこで、この章では、「自由の奪われ方」に着目して、逮捕罪と監禁罪の違いを具体的に整理します。
2-1:逮捕罪は瞬間的・直接的な自由の拘束
逮捕罪とは、人の身体を直接拘束して自由を奪う行為です。
典型例としては、
- 腕をつかんで動けなくする
- 押さえつけて立ち去れないようにする
- ロープなどで縛る
といった行為が挙げられます。
これらはいずれも、被害者の身体を直接拘束することによって、自由な行動を不可能にする行為です。
また、拘束が短時間であっても成立する可能性がある点が重要です。
2-2:監禁罪は場所的移動の自由を継続的に奪う
監禁罪は、人を一定の場所に閉じ込めるなどして、外部への移動を不可能又は著しく困難にする行為を指します。
典型例としては、
- 部屋に閉じ込める
- 鍵をかけて外に出られないようにする
- 車の中に閉じ込める
といった行為が挙げられます。
監禁罪の特徴は、場所的移動の自由を継続的に奪う点にあります。
逮捕罪が身体そのものを拘束する行為であるのに対し、監禁罪は環境や状況を利用して自由を奪う犯罪と言えます。
2-3:両罪に共通する「不法性」と故意の内容
逮捕罪と監禁罪には、いくつかの共通点もあります。
第一に、どちらの犯罪にも「不法に」という要件が存在します。
これは、法律に基づく正当な拘束行為は犯罪にならないことを意味します。
第二に、どちらの犯罪も故意犯であるという点です。
つまり、行為者が人の自由を拘束するという認識を持って行為することが必要です。
例えば、中に誰もいないと思って扉を閉めた結果、相手が出られなくなった場合には、故意がないため監禁罪は成立しません。
このように、逮捕罪と監禁罪は違いだけでなく、共通する部分もあることを理解しておくことが重要です。
3章:逮捕・監禁罪の4つの重要論点
逮捕・監禁罪は条文自体が非常に簡潔であるため、一見すると理解しやすい犯罪のように思えます。
しかし、実際には犯罪の成立範囲や構造について、さまざまな論点が存在します。
特に司法試験や予備試験では、犯罪の性質や構成要件をどのように解釈するかが問われることがあります。
そこで、この章では、逮捕・監禁罪を理解する上で重要となる4つの論点について解説します。
3-1:継続犯としての性質と既遂時期
監禁罪の特徴の一つは、継続犯である点です。
継続犯とは、一定の違法状態が継続している限り犯罪状態も続くと評価される犯罪です。
これに対して、窃盗罪や傷害罪のように一定の行為が完了した時点で犯罪が終了するものは「即成犯」と呼ばれます。
例えば、監禁罪の場合、被害者が閉じ込められている状態が続いている限り、身体的自由の侵害も継続していると考えられます。
そのため、被害者が閉じ込められた時点で既遂となりますが、その後も監禁状態が続いている限り犯罪は継続していると評価されます。
この継続犯としての性質は、刑法理論上さまざまな場面で重要になります。
例えば、共犯の成立時期を考える場合です。
監禁が継続している途中で別の人物が監禁に加担した場合、その人物も監禁罪の共犯として責任を負う可能性があります。
これは、犯罪がまだ継続していると評価されるからです。
また、正当防衛との関係にも影響を及ぼします。
監禁状態が継続している中で脱出するための反撃行為は、侵害が継続していると評価できることから、急迫不正な侵害に関する防衛行為として、正当防衛に該当する場合があります。
また、刑事訴訟法上の公訴時効の起算点を考える場合にも、監禁罪の継続犯としての性質が問題となります。
犯罪が終了した時点を基準として時効が進行するため、監禁状態が継続している限り公訴時効は進行しません。
このように、監禁罪が継続犯であるという理解は、刑事法全体の理論とも関係する重要なポイントとなります。
3-2:有形・無形の手段どちらも成立する
逮捕・監禁罪というと、一般的には暴力によって身体を拘束する場面をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、刑法上は必ずしも物理的な力が用いられる必要はないとされています。
つまり、逮捕・監禁罪は、有形力だけでなく無形力によっても成立する可能性があります。
有形力とは、身体に直接作用する物理的な力のことです。
例えば、
- 腕をつかむ
- 体を押さえつける
- ロープや手錠で縛る
といった行為がこれに当たります。
一方、無形力とは、心理的な圧力や威圧によって自由を奪う場合です。
例えば、
- 暴力を示唆して逃げられない状況を作る
- 脅迫によってその場にとどまらせる
- 恐怖によって行動を制限する
といった場合です。
このような場合、物理的に拘束されていなくても、被害者が実質的に自由に行動できない状態に置かれていれば、監禁罪が成立する可能性があります。
この点は、逮捕・監禁罪の成立範囲を考えるうえで重要です。
つまり、単に身体に触れているかどうかではなく、被害者の自由な行動が実質的に制限されているかどうかが判断の基準になります。
3-3:逮捕・監禁致死傷罪(221条)の成立範囲
刑法221条は、以下のとおり規定しています。
「前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」
これは、逮捕罪や監禁罪の結果的加重犯を定めた規定です。
結果的加重犯とは、基本犯罪に加えて一定の結果が発生した場合に、より重い刑罰を科す犯罪類型を指します。
逮捕・監禁致死傷罪の場合、基本犯罪は逮捕・監禁罪になります。
つまり、人の自由を拘束する行為(逮捕罪又は監禁罪)がまず成立している必要があります。
そして、その結果として被害者が死亡または負傷した場合に成立します。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 長時間監禁された結果として体調を崩し死亡した場合
- 拘束された際の衝撃によって負傷した場合
- 逃げようとして事故に遭い負傷した場合
ここで重要なのは、行為者が死傷結果を意図していなくても成立する可能性がある点です。
ただし、死傷結果が行為とは無関係な偶然の事情により発生したような場合にまで責任を負わせるのは相当ではありません。
そのため、本条を成立させるためには、逮捕・監禁した行為と死傷結果との間に、実行行為に内在する危険が現実化したといえるだけの因果関係があるかどうかを慎重に検討する必要があります。
3-4:被害者の同意と構成要件の該当性
逮捕・監禁罪では、被害者の同意がある場合に犯罪が成立するかどうかも重要な論点となります。
この点、場所的な移動の自由が失われていたとしても、本人が自由な意思によってそれに同意を与えている場合には、監禁罪は成立しません。
例えば、公共交通機関の乗客は、客観的には場所的移動の自由が失われた監禁状態ともいえますが、乗客本人が完全な自由意思に基づいて、その状態に同意をしているため、公共交通機関に対して監禁罪が成立することはありません。
一方で、場所的な移動の自由が失われること自体について本人の同意がない場合には、監禁罪が成立します。
例えば、騙されて内側からはドアを開けられない空間に誘い込まれたケースなどが挙げられます。
また、この空間以外に自由な場所が存在しないと騙され留まっているような場合も、その場に留まる(移動しない)意思を持ったことが「移動が不可能だ」という誤解によるものであると言えるため、このような場合には監禁罪が成立すると考えられます。
このように、同意があるように見えても、実際には、誤解や恐怖、威圧によって同意させられている場合には、有効な同意とは認められない可能性がありますので、慎重な判断が必要となります。
また、同意の範囲も重要です。
例えば、短時間の拘束に同意していたとしても、長時間拘束された場合には同意の範囲を超える可能性があります。
このように、被害者の同意がある場合でも、その同意が自由意思に基づくものであるか、また同意の範囲内であるかを慎重に判断する必要があります。
4章:予備試験で問われる関連犯罪との区別
逮捕・監禁罪は、他の犯罪と組み合わさることが多い犯罪です。
特に試験では、略取・誘拐罪や強盗罪などとの区別が問題となることがあります。
そこで、この章では、関連犯罪との違いを整理します。
4-1:略取・誘拐罪との保護法益の違い
逮捕・監禁罪と最も混同されやすい犯罪が、刑法224条以下に規定されている略取・誘拐罪です。
逮捕・監禁罪の保護法益は、身体的行動の自由です。
これに対して、略取・誘拐罪の保護法益は、身体的行動の自由にとどまらず、監護者の監護権といった、より広い利益を含むと理解されています。
略取・誘拐罪は、人を自己または第三者の支配下に移す行為を処罰する犯罪であり、被害者を現在の生活環境や社会関係から引き離す点に犯罪の本質があります。
この違いを整理すると、次のようになります。
- 逮捕・監禁罪→人の身体的自由を拘束する犯罪
- 略取・誘拐罪→人を支配下に移す犯罪
例えば、被害者を部屋の中に閉じ込めて外に出られないようにする行為は、基本的には監禁罪に当たると考えられます。
この場合、被害者は自由に移動することができない状態に置かれており、身体的行動の自由が侵害されています。
これに対して、被害者を無理やり車に乗せて別の場所へ連れ去るような場合には、略取罪が成立する可能性があります。
ここでは、被害者が現在の場所から別の場所へ移され、行為者の支配下に置かれる点が重要になります。
もっとも、実際の事例では両罪の罪数関係が問題となることがあります。
例えば、人を別の場所へ移動させた上で脱出できなくさせた場合には、監禁罪と略取誘拐罪のどちらが成立するのかが問題になります。
この点については、最高裁は、略取誘拐罪と監禁罪の併合罪(刑法45条前段)になるとしています(最決昭和58年9月27日)。
つまり、どちらも別個の犯罪として成立するということです。
一方、略取誘拐と監禁が同時に行われたのであれば、観念的競合(54条1項前段)の可能性もあります。
つまり、1個の行為で複数の犯罪に該当するということです。
このように、略取・誘拐罪と逮捕・監禁罪は似ているように見えても、犯罪の構造と保護法益が異なることには注意が必要です。
4-2:強盗罪・住居侵入罪との結合犯の処理
逮捕・監禁罪は、単独で成立するだけでなく、他の犯罪の手段として用いられることも多い犯罪です。
特に問題となるのが、強盗罪との関係です。
強盗罪は、暴行または脅迫を用いて他人の財物を奪う犯罪です。
強盗などをする際、身体的に拘束することもあります。
例えば、次のようなケースです。
- 被害者の手足を縛って金品を奪う
- 逃げられないように拘束して財布を奪う
これらの行為は一見すると、逮捕・監禁罪と強盗罪の両方が成立するようにも思えます。
しかし、拘束行為が財物奪取を目的として、その手段として行われた場合には、強盗罪の暴行と評価されることが多いです。
つまり、被害者を拘束する行為は、強盗罪を実行するための手段として評価され、独立の逮捕・監禁罪ではなく、強盗罪の中で包括的に評価される場合があります。
もっとも、拘束行為が財物奪取とは別の目的で行われている場合には、逮捕・監禁罪が独立して成立する可能性もあります。
例えば、被害者を憎しみの感情から拘束し、その後思い立って財物を奪ったような場合には、拘束行為自体が独立した犯罪として評価される可能性があります。
東京高判平成20年3月19日は、不同意わいせつの目的で被害者を拘束した後、財物を奪う意思が生じたという事案においても強盗罪の成立を認めていますが、学説からは反対する意見もあります。
まとめ:逮捕罪と監禁罪の違いは「拘束の態様」で判断する
逮捕・監禁罪は、人の身体的行動の自由を保護する犯罪です。
刑法220条では「逮捕」と「監禁」という二つの犯罪類型を一つの条文で規定していますが、両者は拘束の態様(自由の奪い方)の違いによって区別されます。
逮捕罪は、身体を直接拘束することで自由を奪う犯罪です。
これに対して監禁罪は、一定の場所から出られない状態を作ることで自由を奪う犯罪です。
また、監禁罪は継続犯とされ、拘束状態が続く限り犯罪も継続していると評価されます。
さらに、拘束の手段は物理的な力に限られず、恐怖や威圧などによって実質的に自由が奪われている場合でも成立する可能性があります。
加えて、逮捕・監禁の結果として被害者が死亡または負傷した場合には、結果的加重犯として刑法221条の逮捕・監禁致死傷罪が成立する可能性があります。
また、強盗の手段として利用された場合も整理しておく必要があります。
このように、逮捕・監禁罪を規定した刑法220条は非常に簡潔な条文ですが、その中に重要なポイントがいくつも含まれています。
そのため、刑法各論の入門段階から正確に理解することが重要です。
この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しました。
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