【民事訴訟法入門6】訴訟担当の類型を総整理!当事者適格について徹底解説

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【民事訴訟法入門6】訴訟担当の類型を総整理!当事者適格について徹底解説
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この記事を読んで理解できること
  • 基礎知識~当事者適格と訴訟担当~
  • 法定訴訟担当
  • 任意的訴訟担当

この記事は、

  • 当事者適格とは何なのか知りたい
  • 訴訟担当とはどのような制度か知りたい
  • 法定訴訟担当と任意的訴訟担当について知りたい

といった方におすすめです。

当事者適格は、当事者の確定など他の論点と混同しがちな論点です。

訴訟担当という概念もなかなかなじみがないので、初学者の方にとってはなかなか理解が難しいと思います。

そこで、この記事では、当事者適格と訴訟担当について、基礎から丁寧に説明していきましょう。

第1章で当事者適格と訴訟担当の基礎知識について、

第2章で法定訴訟担当について、

第3章で任意的訴訟担当について、

それぞれ解説します。

基礎知識をわかりやすく簡潔に説明しますので、初学者の方はもちろん、憲法をひと通り学んだ方のまとめ用にも最適です。

第1章 基礎知識~当事者適格と訴訟担当~

1-1 当事者適格

当事者適格とは、「ある訴訟物について、当事者として訴訟を追行し、本案判決を受ける資格」をいいます。

【民事訴訟法入門3】当事者の確定では、問題となる訴訟において、誰が当事者として扱われるかという論点を解説しましたが、当事者適格は誰が当事者となるべきかという論点です。

なんだか複雑でややこしいな…と思った方もいるかもしれませんが、わかりやすく説明するのでご安心ください。

【民事訴訟法入門5】訴えの利益のときと同じように、まずは訴えの3類型に沿って見ていきましょう。

前回のおさらいをすると、民事訴訟法の訴えには、

  • 給付の訴え
  • 確認の訴え
  • 形成の訴え

の3類型があります。

当事者適格も、この類型に沿って考えるとわかりやすいです。

■給付の訴え

給付の訴えとは、被告に作為や不作為を命じることを裁判所に求める訴えのことをいいます。

給付の訴えでは、給付請求権を持つと主張する者が原告適格を持ち、原告により義務者だと主張された者が被告適格を持つことになります。

例えば、XがYに対し、YがXから借りた金銭を返さないと主張して、貸金返還請求訴訟を提起したとしましょう。

このときに、Yは「自分にお金を貸したのはXではなくAさんだから、Xには当事者適格がない!」と主張できるでしょうか?

結論として、Yの主張は認められません。なぜなら、給付の訴えの当事者適格は「原告の主張」に基づいて判断されるからです。

Xが「自分がYにお金を貸した」と主張しているのであれば、Xに当事者適格があります。

この場合、Yは被告として「原告からお金を借りていない」と主張し、請求棄却を求めて争えばよいのです。

■確認の訴え

確認の訴えとは、一定の権利や地位などを確認することを裁判所に求める訴えのことをいいます。

前回の記事で確認の利益について解説しました。

おさらいすると、確認の利益は

①確認対象の適否

②方法選択の適否

③即時確定の利益

の3つが問題となります。

これらの検討の中で、誰と誰との間でどのような確認を求めることが適切かということも判断されるので、当事者適格が別途問題になることは少ないです。

■形成の訴え

形成の訴えとは、判決の確定により法律関係の変動を求める訴えのことをいいます。

形成の訴えでは、法律に当事者が定められているので、誰が当事者になるべきかはそもそも論点となる可能性が低いです。

したがって、実務上、当事者適格が問題となるケースはほとんどありません。

基本的に、当事者適格が問題となるのは、以下で説明する訴訟担当の場合です。

1-2 訴訟担当

訴訟担当とは、「権利義務の帰属主体ではない第三者が当事者適格を認められる場合」をいいます。

初学者の方は、「例えば、弁護士に訴訟代理人になってもらうこと?」と考えた人もいるかもしれませんが、訴訟担当と訴訟代理は違います。

弁護士が代理人となって訴訟を追行している場合も、その弁護士自身が当事者として認められるわけではありません。あくまで当事者は依頼人です。

これに対し、訴訟担当は、第三者自身が当事者として訴訟を追行する場合をいいます。

訴訟担当には、

  • 法定訴訟担当
  • 任意的訴訟担当

の2種類があります。

次章からは、この2つについて説明していきましょう。

第2章 法定訴訟担当

法定訴訟担当とは、権利義務の帰属主体とされる者からの授権がなくとも、法律に基づいて訴訟担当が認められる場合をいいます。

これをさらに分けると、

  • 担当者のための訴訟担当
  • 権利義務の帰属主体のための訴訟担当

の2つがあります。

それぞれ説明しましょう。

2-1 担当者のための訴訟担当

これは、主として担当者の利益のために訴訟担当が認められる場合です。

典型例としては、債権者代位訴訟があります。

民法の条文を読んでみましょう。

(債権者代位権の要件)

第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

2(略)

例えば、XがAに100万円を貸していて、AはYに100万円を貸しているとしましょう。

Aにはお金がないのに、Yから100万円を回収しようとしません。このような場合、Xは、Aの資力を回復させるために、Aの代わりに原告となり、Yに対して貸金返還請求の代位訴訟を提起することができます。

ただ、そうすると、Aは自分の知らないところで勝手に自分の貸金についての訴訟が行われてしまう可能性がありますよね。

Xが無事に勝訴すればまだいいですが、Xの訴訟が下手なせいで敗訴されたらたまったものではありません。

そこで、民法では以下のように、XがAに訴訟告知をする義務が定められています。

(被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知)

第四百二十三条の六 債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

訴訟告知がされると、裁判所からAに対し、どのような訴訟が行われているかがわかる訴訟告知書が送達されます。

そこで、Aは訴訟に参加して自分の言い分を主張することができるのです。

2-2 権利義務の帰属主体のための訴訟担当

これは、担当者が法律上の職務として、権利義務の帰属主体の法律関係について管理処分権が与えられる場合のことです。

典型例としては、遺言執行者が挙げられます。

遺言執行者とは、被相続人の遺言や、利害関係人の請求による家庭裁判所の選任によって、相続財産の管理などの職務を行う者のことです。

民法の条文を読んでみましょう。

(遺言執行者の権利義務)

第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

遺言執行者が可能な「一切の行為」には訴訟行為も含まれます。

もっとも、どこまでが遺言執行者の職務なのかという点で、訴訟担当が認められるかどうかが争われることもあります。

具体的には、遺贈がなされた場合「相続させる」旨の遺言がなされた場合に分けて考えましょう。

■遺贈がなされた場合

遺贈とは、法定相続人やそれ以外の者を対象として、遺言によって財産を処分することです。民法964条に基づいています。

結論から言うと、遺贈がなされた場合、

  • 原則:遺言執行者に当事者適格あり
  • 例外:遺言執行者に当事者適格なし

となります。

最高裁判例を見てみましょう。

■最判昭和43年5月31日(原則)

(事案)

不動産の遺贈がなされたにもかかわらず、相続人Aが勝手に所有権移転登記をした。そこで、受遺者Bは、Aに対して移転登記請求の訴訟を提起した。

(判旨)

遺言の執行について遺言執行者が指定されまたは選任された場合においては、遺言執行者が相続財産の、または遺言が特定財産に関するときはその特定財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、相続人は相続財産ないしは右特定財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできないこととなるのであるから(民法一〇一二条ないし一〇一四条)、本訴のように、特定不動産の遺贈を受けた者がその遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記を求める訴において、被告としての適格を有する者は遺言執行者にかぎられるのであつて、相続人はその適格を有しないものと解するのが相当である

この事案では、当事者適格を有するのはAではなく遺言執行者であると判断されました。

■最判昭和51年7月19日(例外)

(事案)

不動産の遺贈について、受遺者Aに所有権移転仮登記がなされた後、相続人Bが遺言執行者に対して仮登記の抹消登記手続請求の訴訟を提起した。

(判旨)

遺言執行者は、遺言に関し、受遺者あるいは相続人のため、自己の名において、原告あるいは被告となるのであるが、以上の各場合と異なり、遺贈の目的不動産につき遺言の執行としてすでに受遺者宛に遺贈による所有権移転登記あるいは所有権移転仮登記がなされているときに相続人が右登記の抹消登記手続を求める場合においては、相続人は、遺言執行者ではなく、受遺者を被告として訴を提起すべきであると解するのが相当である。けだし、かかる場合、遺言執行者において、受遺者のため相続人の抹消登記手続請求を争い、その登記の保持につとめることは、遺言の執行に関係ないことではないが、それ自体遺言の執行ではないし、一旦遺言の執行として受遺者宛に登記が経由された後は、右登記についての権利義務はひとり受遺者に帰属し、遺言執行者が右登記について権利義務を有すると解することはできないからである。

この事例では、受遺者に対する登記が既に完了していました。

この場合、もう遺言は執行済みということになるため、その後のトラブルについては遺言執行者の権利義務ではないということになります。

■「相続させる」旨の遺言がなされた場合

遺産に属する特定の財産を、共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がなされる場合(民法1014条2項)もあります。遺贈とは異なり、相続人を対象とした遺言です。

これも結論から言うと、

  • 原則:遺言執行者に当事者適格なし
  • 例外:遺言執行者に当事者適格あり

となります。

■最判平成10年2月27日(原則)

(事案)

相続人Aに特定の不動産を相続させる旨の遺言がなされたところ、その不動産について賃借権があると主張するBが、遺言執行者を被告として賃借権確認の訴えを提起した。

(判旨)

特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言をした遺言者の意思は、右の相続人に相続開始と同時に遺産分割手続を経ることなく当該不動産の所有権を取得させることにあるから(最高裁平成元年(オ)第一七四号同三年四月一九日第二小法廷判決・民集四五巻四号四七七頁参照)、その占有、管理についても、右の相続人が相続開始時から所有権に基づき自らこれを行うことを期待しているのが通常であると考えられ、右の趣旨の遺言がされた場合においては、遺言執行者があるときでも、遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者は、当該不動産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務を負わないと解される。そうすると、遺言執行者があるときであっても、遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、右特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人であるというべきである。

「相続させる」旨の遺言がなされた場合、遺言者の意思は、相続人に相続開始と同時に、遺産分割手続を経ることなく当該不動産の所有権を取得させることにあるため、遺言執行の余地がないと判断されました。

■最判平成11年12月16日(例外)

(事案)

相続人甲に特定の不動産を相続させる旨の遺言がなされたところ、他の相続人乙への移転登記がなされたため、遺言執行者は乙に対して抹消登記手続等の訴えを提起した。

(判旨)

本件のように、甲への所有権移転登記がされる前に、他の相続人が当該不動産につき自己名義の所有権移転登記を経由したため、遺言の実現が妨害される状態が出現したような場合には、遺言執行者は、遺言執行の一環として、右の妨害を排除するため、右所有権移転登記の抹消登記手続を求めることができ、さらには、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることもできると解するのが相当である。

この事案では、まだ「相続させる」旨の遺言の対象となる相続人への所有権移転登記が完了していなかったため、遺言が実現しておらず、他の相続人への妨害排除請求は遺言執行者の職務の一環であると判断されたのです。

遺言の当事者適格 フローチャート

第3章 任意的訴訟担当

任意的訴訟担当とは、被担当者からの授権に基づく訴訟担当のことです。

これも2種類に分けると、

  • 法律の規定のある訴訟担当
  • 法律の規定のない訴訟担当

があります。

それぞれ見ていきましょう。

3-1 法律の規定のある訴訟担当

文字通り、任意的訴訟担当が法律で定められている場合です。

典型例としては、選定当事者が挙げられます。

民事訴訟法の条文を読んでみましょう。

(選定当事者)

第三十条 共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。

2(略)

「前条の規定」とは法人でない社団等(29条)のことなので、選定当事者はそれ以外の場合に原告又は被告を選定する場合をいいます。

例えば、公害訴訟などは、同じような被害を受けた人が多数存在しますが、中には訴訟手続にあまり関わりたくないので、誰かに一任したいという人もいるでしょう。

このような場合、「共同の利益を有する多数の者」の中から代表者が選ばれて、その人が当事者として訴訟を追行することになります。

3-3 法律の規定のない訴訟担当

法律に規定されていない任意的訴訟担当を無制限に認めると、弁護士でなければ訴訟代理人になることができないという原則(54条)が潜脱されてしまうおそれがあります。

そこで、最高裁は、以下の判断基準を示しました。

■最判昭和45年11月11日

任意的訴訟信託は、民訴法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り、また、信託法一一条のが訴訟行為を為さしめることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれを許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容するに妨げないと解すべきである。

このように、最高裁は、

  • 民訴法や信託法の制限を回避、潜脱するおそれがない
  • 任意的訴訟担当を認める合理的理由がある

という2つの要件を示しました。

そして、組合規約に基づいて組合財産の管理や対外的業務の権限を与えられた組合員は、組合財産に関する訴訟について当事者適格が認められました。

まとめ

■第1章まとめ

当事者適格とは、「ある訴訟物について、当事者として訴訟を追行し、本案判決を受ける資格」をいいます。

  • 給付の訴え
  • 確認の訴え
  • 形成の訴え

の3類型に分けて考えるとわかりやすいです。

訴訟担当とは、「権利義務の帰属主体ではない第三者が当事者適格を認められる場合」をいいます。

  • 法定訴訟担当
  • 任意的訴訟担当

の2種類があります。

■第2章まとめ

法定訴訟担当とは、権利義務の帰属主体とされる者からの授権がなくとも、法律に基づいて訴訟担当が認められる場合をいいます。

これをさらに分けると、

  • 担当者のための訴訟担当
  • 権利義務の帰属主体のための訴訟担当

の2つがあります。

担当者のための訴訟担当の典型例は債権者代位訴訟、権利義務の帰属主体のための訴訟担当の典型例は遺言執行者です。

■第3章まとめ

任意的訴訟担当とは、被担当者からの授権に基づく訴訟担当のことをいいます。

法律の規定のある訴訟担当は、選定当事者が典型例です。

法律の規定のない訴訟担当は無制限に認めるわけにはいかないので、最高裁は

  • 民訴法や信託法の制限を回避、潜脱するおそれがない
  • 任意的訴訟担当を認める合理的理由がある

という2つの要件を示しました。

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しています。

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