【行政法入門3】 行政行為の種類・効力を図解と具体例で分かりやすく整理
目次
この記事を読んで理解できること
- 行政行為とは何か?
- 行政行為の種類と具体例
- 行政行為の4つの効力
- 行政行為の効力が発生する時期は?
この記事は、
- 行政行為とは何かを知りたい
- 行政行為の種類と違いについて整理したい
- 行政行為の4つの効力を正確に理解したい
といった方におすすめです。
行政行為は行政活動の中でも具体的な紛争が生じやすい分野であり、予備試験を受験する上でも正確に理解しておく必要があります。
しかし、行政行為の種類は多岐にわたり、紛らわしい用語も多いため、何となく暗記して終わってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、
1章で行政行為とは何か
2章で行政行為の種類と具体例
3章で行政行為の4つの効力
4章で行政行為の効力が発生する時期
について、詳しく解説します。
具体例を交えながら、行政行為の種類や効力の違いを分かりやすく解説していますので、初学者の方はもちろん、一通り学んだ後の整理にも最適です。
1章:行政行為とは何か?
行政行為とは、行政作用のうち、具体的事項について対外的な法効果をもってなす権力的行為のことです。
・最判昭和39年10月29日
「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが、法律上認められているもの」
行政行為は、実定法上でいう「行政処分」とほぼ同じ意味で使われる概念です。その行政処分とは何かについて、判例では次のように示されています。
もう少し嚙み砕いて説明すると、行政行為には次のような特徴があります。
■国や地方公共団体などの行政庁が行う
国会や裁判所の行為は想定されていません。
■国民の権利や義務に個別具体的に直接影響を与える
不特定多数に向けた法律の制定(行政立法)や、法的効果を及ぼさない行政指導などは該当しません。
■相手方の同意を得ることなく、権力的(一方的)に効果を生じさせる
国民との合意によって締結される行政契約は該当しません。
■法律の根拠が必要
行政庁が国民の権利義務を制限したり付与したりするには、原則として法律の根拠が必要です(法律による行政の原理)。
2章:行政行為の種類と具体例
行政行為には、以下のような種類があります。

それぞれの分類ごとに、具体例を示しながら解説します。
2-1:行政の意思表示がある「法律行為的行政行為」
法律行為的行政行為とは、行政機関が「こうする」という意思を表示し、そのとおりの法的効果を生じさせる行政行為のことです。
例えば、国民に対し税金を払わせる「課税処分」がその典型例です。
この法律行為的行政行為は、さらに以下の2つに分類されます。
- 命令的行為
- 形成的行為
それぞれ説明します。
2-1-1:本来自由にできることを制限する「命令的行為」
命令的行為とは、国民が本来自由に行えるはずの行為を制限したり、その制限を解除したりする行政行為です。
命令的行為には、「下命」「禁止」「許可」「免除」の4種類があります。
■下命:特定の行為をするよう義務づける行為
例えば、本来自由に使える私有財産から税金を納めさせる「課税処分」や、土地を元の状態に戻させる「違法建築物の除去命令」がこれにあたります。
■禁止:特定の行為をしてはならないという義務を課す行為
例えば、本来自由に行える営業を制限する「営業停止命令」や、自由な行き来を制限する「道路の通行禁止」がこれにあたります。
■許可:法令による禁止・制限を、特定の人に対して解除する行為
例えば、「飲食店の営業許可」や「運転免許の交付」がこれにあたります。
本来、営業は自由に行えるはずですが、衛生上の危険を防ぐために原則禁止されている飲食店営業について、その制限を解除するためです。
運転免許も同じような考え方に基づき、本来ある自由を回復させるイメージです。
■免除:法令により課されている義務を、特定の人に対して解除する行為
例えば、「就学義務の免除」や「納税義務の免除」がこれにあたります。
本来、学校に行くかどうかは自由なはずですが、国民全体に学校通学義務を課したうえで、一部に対してその義務を解除するためです。
2-1-2:本来自由にできないことを可能にする「形成的行為」
形成的行為とは、本来であれば一般的には認められていない特別な権利や法律上の地位を、行政が新たに与えたり、変動させたりする行政行為です。
形成的行為には、「特許(および剥権)」「認可」「代理」の3種類があります。
■特許:特別な権利や地位を新たに設定する行為
例えば、「道路の占用許可」や「帰化」が、これにあたります。
本来みんなのものである道路を占有する権利を与えたり、日本生まれでない人に日本国籍を与えたりするからです。
実務上は許可と呼ぶため混同しがちですが、学問上の許可が「もともとある自由の回復」であるのに対し、特許は「もともとない権利の新たな付与」になります。
なお、剥権とは、特許により設定した権利や地位を消滅させる行為です。
■認可:私人間の法律行為(契約など)に対し、行政が同意することでその行為を法的に完成させる行為
例えば、「公共料金の値上げ」や、「銀行の合併」には行政の認可が必要です。
これらの行為は当事者間の合意だけでは法的効力が生じない点で、本来自由に行える車の運転や営業とは性質が異なります。
このように、行政の関与によって初めて法的効力が発生する点が、形成的行為の特徴です。
■代理:本来は私人または他の行政機関が行うべき行為を、別の行政機関が代わりに行い、その効果を本人に帰属させる行為
例えば、「土地収用における収用委員会の裁決」が典型例です。
公共事業のために土地が必要な際、本来は「土地の所有者」と「起業者(国など)」が交渉し、土地の引き渡しの条件等を決めるべきです。
しかし、交渉がまとまらない場合に、収用委員会が当事者に代わって、補償額や引き渡し時期について決定を下します。
2-2:行政の意思表示がない「準法律行為的行政行為」
準法律行為的行政行為とは、行政機関の意思表示ではない、事務的な判断や認識を示すことで、法律であらかじめ定められた効果が自動的に生じる行政行為です。
準法律行為的行政行為には、「確認」「公証」「通知」「受理」の4種類があります。
■確認:特定の事実や法律関係について、客観的に判断・確定する行為
例えば、「選挙の当選人の決定」や「建築確認」が挙げられます。
選挙の当選人の決定については、行政は投票結果の事実確認をするに過ぎませんが、結果として、当選人は議員としての地位を得ることになります。
■公証:特定の事実や法律関係の存在を、公に証明する行為
確認と似ていますが、公証は「すでに存在する事実を証明する」にとどまり、新たに権利義務を確定するものではありません。
例えば、「戸籍への記載」や「選挙人名簿への登録」がこれにあたります。
■通知:特定の事項を相手方に知らせる行為(法的拘束力を伴うもの)
例えば、「納税の督促」や「代執行の戒告」があり、これらは既に発生している納税義務などを知らせるもので、行政の意思表示にはあたりません。
もっとも、納税の督促に従わない場合には財産が差し押さえられることがあるため、一定の法律効果が伴います。
これに対し、是正勧告などの行政指導は法的拘束力がないため、行政行為ではありません。
■受理:私人からの申請や届出を正式に受け取る行為
各種の申請書や届出書の受理がこれにあたります。
3章:行政行為の4つの効力
行政行為には、私人の法律行為には見られない特別な効力が認められています。
これは、行政が公益を実現するために、迅速かつ円滑に活動できるようにするためです。
行政行為に認められているのは、主に以下の4つの効力です。
- 公定力
- 自力執行力
- 不可争力
- 不可変更力
それぞれ説明します。
3-1:公定力:違法でも取り消されない限り有効とされる
公定力とは、たとえ違法な行政行為であったとしても、取り消されない限り有効なものとして扱われる効力です。
例えば、行政が税額を間違えて課税処分をしてきたとしても、行政側が自主的に修正するか、正式な手続で取り消されない限り、支払いを拒否することはできません。
行政行為の効力を争う場合は、原則として取消訴訟という手続きによる必要があります(行政事件訴訟法第3条第2項)。このように、行政行為の効力は取消訴訟によって争うべきものとされており、これを、取消訴訟の排他的管轄といいます。
もし行政行為の効力を誰もが自由に否定できるとすると、行政が混乱し、法律関係が不安定になってしまいます。
そこで、正式な手続で取り消されない限り有効と扱うことで、行政活動の安定性を確保しているのです。
ただし、違法性が重大で明白な行政行為は無効とされ、そもそも公定力は認められません。
3-2:自力執行力:裁判所を介さずに強制執行できる
自力執行力とは、行政機関が命じた義務を国民が履行しない場合に、裁判所の判断がなくとも、行政自らが強制的に執行できる効力のことです。
私人間の契約では、相手が義務を履行しない場合、裁判所に訴えて判決を得たうえで強制執行を申し立てる必要があります。
しかし、行政が毎回そのような裁判手続を経ていては、行政目的を迅速に達成することができません。
そこで、法律で特に認められた場合に限り、行政が自ら実力行使でその義務を果たさせることが認められているのです。
例えば、税金を滞納したときに財産を差し場合や、違法建築物の除去命令に従わないときに行政が代わりに取り壊す場合などが典型です。
3-3:不可争力:一定期間経過すると争えない
不可争力とは、行政行為が行われてから一定の期間が過ぎると、国民がその内容に不服を申し立てたり、取り消しを求めたりできなくなる効力のことです。
もし国民が期限なく行政の処分に異議を申し立てられると、行政処分がいつまでも確定せず、行政上の法律関係がいつまでも不安定なままになってしまいます。
そこで、一定期間が経過した後は効力を争えないものとすることで、法律関係の安定を図っているのです。
取消訴訟を提起できる期間は、「処分があったことを知った日から6か月」または「処分の日から1年」(行政事件訴訟法第14条第1項・第2項)です。
また、審査請求を行える期間は、「処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月」(行政不服審査法第18条第1項)とされています。
これらの期間を過ぎると、原則として取消訴訟や審査請求によって争うことができなくなります。
なお、不可争力は国民の側から争えなくなることを指し、行政機関が自ら行政行為を取り消したり変更したりすることまで妨げてはいません。
3-4:不可変更力:争いを裁いた行政行為は変更できない
不可変更力とは、行政庁がいったん下した判断を、自ら取り消したり変更したりできなくなる効力のことです。
通常、課税処分や営業許可などの行政行為は、行政庁側の判断で取り消しや変更を行うことができ、不可変更力は生じません。
しかし、審査請求に対する裁決(紛争裁断行為)のように、行政庁が当事者同士の争いを裁く準司法的な行政行為に限って、不可変更力が適用されます。
これは、もしこのような裁決を行政庁が後から自由に変えられると、国民の法的な立場が不安定になってしまうためです。
不可争力が国民の側から取消しできないという効力であるのに対し、不可変更力は行政の側から変更できない効力だと覚えると良いでしょう。
4章:行政行為の効力が発生する時期は?
行政行為の効力がいつ発生するのかについて、判例は次のように示しています。
・最判昭和29年8月24日
「特定の公務員の任免の如き行政庁の処分については、特別の規定のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時と解するのが相当である。即ち、辞令書の交付その他公の通知によつて、相手方が現実にこれを了知し、または相手方の了知し得べき状態におかれた時と解すべきである。」
つまり、行政庁の処分は、その意思表示が相手方に届いた時点(実際に知ったか、知り得る状態になった時)から効力が発生するということです。
たとえば、行政庁が内部で「この申請を許可する」と決定しても、申請者に通知が届くまでは法的な効果は発生しません。
なお、個別の法律に特別な定めがある場合は、その定めに従います。たとえば、審査請求に対する裁決については、裁決書の謄本が審査請求人に送達された時に効力が生じると定められています(行政不服審査法第51条第1項)。
まとめ
行政行為とは、「行政庁が、法律の根拠に基づき、国民の権利義務に個別・具体的な法的効果を一方的に生じさせる行為」のことです。
この行政行為は、行政の意思表示がある「法律行為的行政行為」、行政の意思表示がない「準法律行為的行政行為」の2つに大別されます。
そのうち、法律行為的行政行為は、
- 本来自由にできることを制限する「命令的行為」(下命・禁止・許可・免除)
- 本来自由にできないことを可能にする「形成的行為」(特許(剥権)・認可・代理)
に分かれます。
もう1つの準法律行為的行政行為は、確認・公証・通知・受理の4種類があります。
また、行政行為には以下の4つの効力が認められるため、それぞれの意味を押さえておきましょう。
- 公定力:違法でも取り消されない限り有効とされる
- 自力執行力:裁判所を介さずに強制執行できる
- 不可争力:一定期間経過すると争えない
- 不可変更力:争いを裁いた行政行為は変更できない
行政行為を理解することは、行政作用法と行政救済法の両方を学ぶうえで重要な基礎となります。
この記事も参考にしていただきながら、できるだけシンプルな言葉で用語の違いを整理し、具体例とセットで覚えていきましょう。
さらに判例の解説や実践的な答案の書き方について知りたい方は、ヨビロン行政法のテキストをご購入いただけると幸いです。


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