【行政法入門2】行政組織法が一目でわかる!組織と権限の違いを表で整理
目次
この記事を読んで理解できること
- 行政組織法は行政法の3分野のうちの1つ
- 行政主体とは「行政上の権利義務を負う法人」
- 行政機関とは「行政主体の内部組織にあるポスト」
- 行政機関の権限のルール
この記事は、
- 行政組織法が何かを分かりやすく教えてほしい
- 行政主体と行政機関の違いがよく分からない
- 権限の代理の種類を整理して覚えたい
といった方におすすめです。
行政組織法は、「誰が行政を行うか」を定めた基本ルールであり、行政作用法や行政救済法を理解するうえで必須の知識となります。
とはいえ、無機質な専門用語が並び、似たようなものも多いため、「なかなか頭に入らない」と苦手意識を持つ方は多いのではないでしょうか。
ただ、これらの用語は「会社」に置き換えて考えるとイメージしやすくなります。
たとえば、行政主体は「会社(法人)」、行政機関は「実際の業務をおこなう代表取締役や各取締役」といった感じです。
この対応関係を頭に入れておくと、それぞれの用語の意味やつながりが整理できるようになるでしょう。
そこでこの記事では、
1章で行政組織法とは何か
2章で行政主体の定義と具体例
3章で行政機関の定義と具体例
4章で行政機関の権限のルール
について、詳しく解説します。
基本用語の定義から丁寧に解説し、具体例も一覧表で整理していますので、初学者の方はもちろん、知識の整理・確認用にも最適です。
1章:行政組織法は行政法の3分野のうちの1つ
行政法は、行政に関する法律の総称です。
「行政法」という名前の法律が存在するわけではなく、行政手続法や行政不服審査法、行政事件訴訟法、地方自治法など、さまざまな個別の法律をひとまとめにした呼び方です。
この行政法は、大きく次の3つの分野に分けられます。
- 行政組織法:行政を「誰が行うか」に関するルール
- 行政作用法:行政が国民に対して「どのような行政活動ができるか」に関するルール
- 行政救済法:行政の違法な行為から「国民をどのように救済するか」に関するルール
このうち行政組織法は、行政の活動を担う主体や内部組織の仕組み、そしてその中での権限の配分を明らかにする分野です。
行政は、法律で認められた権限に基づいて行われます。そのため、どの行政組織がどの権限を持つのかを理解していないと、行政処分が適法かどうかを正しく判断できません。
このように、行政組織法は行政作用法や行政救済法を学ぶうえでの前提知識となるため、まずは基礎的な部分から押さえていきましょう。
2章:行政主体とは「行政上の権利義務を負う法人」
行政組織法を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「行政主体」と「行政機関」という概念です。
この章では行政主体とは何か、どのような種類があるのかについて解説します。
2-1:行政主体の定義
行政主体とは、行政上の権利義務の帰属主体となる法人のことをいいます。
もう少し噛み砕くと、「行政活動の結果として生じる権利や義務の最終的な持ち主になる組織」のことです。
最初で触れたとおり、行政主体は「会社」にたとえるとイメージしやすくなります。
会社が契約を結んだり、誰かに損害を与えて賠償責任を負ったりするとき、その権利義務は原則的に社長や従業員個人ではなく、「会社のもの」になります。
行政の世界でも、これと同じ考え方です。
大臣や知事が許可を出したり、処分を行ったりした結果生じる権利義務は、大臣や知事個人のものではなく、法人としての「国」や「都道府県」に帰属します。これが行政主体の考え方です。
2-2:【一覧表】行政主体の具体例
行政主体の具体例をまとめると、以下のとおりです。

3章:行政機関とは「行政主体の内部組織にあるポスト」
行政主体はあくまで法人のため、それ自体が直接行政活動を行うわけではありません。
実際に行政の仕事をこなすのは、行政主体の内部に置かれた「行政機関」です。
次に、この行政機関の定義と具体例について確認しましょう。
3-1:行政機関の定義
行政機関とは、行政主体の目的を実現するために意思決定や事務処理などを行う、行政主体の内部に置かれた組織上のポスト(地位・役職)のことをいいます。
行政主体を「会社」にたとえるなら、行政機関は「代表取締役、取締役、監査役」といった役職だとイメージしてください。
同じように、「国」という行政主体の内部には、「内閣総理大臣、各省大臣、職員、審議会」などの行政機関が置かれています。
3-2:【一覧表】行政機関の6つの種類
行政機関は、その果たす役割によって以下の6種類に分類されます。

3-3:行政機関という言葉の2つの意味
実は「行政機関」という言葉には、文脈によって次の2つの異なる意味があります。
【①作用法的行政機関概念】
行政機関を「どのポストがどのような役割や権限を持つのか」という観点で捉える考え方です。3-2で紹介した6種類の分類は、この概念に基づきます。
行政作用法や行政救済法において、行政活動の責任の所在を明確にする意義があります。
【②事務配分的行政機関概念】
「どの組織にその事務が割り当てられているか」という観点から、省・庁・委員会などの組織単位で行政機関を捉える考え方です。
国家行政組織法や内閣府設置法などでは、この意味で行政機関という言葉が使われています。たとえば国家行政組織法では、各省の大臣のことを「行政機関の長」と表現しています。
4章:行政機関の権限のルール
行政主体には複数の行政機関が置かれていますが、それぞれの機関がバラバラに動いてしまうと、行政主体として統一した行政運営を行うことができません。
そこで、行政組織法では機関同士の関係を整理するためのルールが設けられています。
この章では、組織の統一を保つための「指揮監督権」と、本来その権限を持つ機関に代わって、別の機関がその権限を行使する「権限の代行」について解説します。
4-1:上級機関から下級機関への指揮監督権
行政組織は、多くの場合ピラミッド型の階層構造になっています。そのため、上級の機関は下級の機関に対して「指揮監督権」を持ち、組織として統一した行政運営を実現しています。
たとえば、各省における大臣(上級機関)と局長や課長(下級機関)の関係が、その典型例です。
指揮監督権の内容は、以下のようなものがあります。
■指揮命令権
下級機関の職務の執行に関して、命令(訓令・通達など)を発する権限。
■許認可権
下級機関が一定の行政行為を行う際、あらかじめ上級機関の許可や承認を受けることを求める権限。
■取消・停止権
下級機関の行為が不適切な場合に、上級機関がそれを取り消したり、停止させたりする権限。
■監視権
下級機関の事務処理の状況を報告させたり、実地調査を行ったりする権限。
■裁定権
下級機関同士の間で権限の争いや意見の対立が生じた場合に、上級機関がその判断を下して組織内の調整を図る権限。
4-2:【比較表】3種類の「権限の代行」
行政の現場では、業務の効率化や地方分権のため、本来の機関に割り当てられた権限を別の機関が代わりに行使することがあります。
これを「権限の代行」と呼び、次の表のとおり、「権限の委任」「権限の代理」「専決・代決」の3種類に分類されます。

それぞれ詳しく解説します。
4-2-1:「権限の委任」は権限も名義も移る
権限の委任とは、委任機関(本来権限を持つ機関)が、受任機関(権限を受け取る機関)に対して、権限そのものを移してしまうことです。
委任を受けた機関は、自己の名義でその権限を行使することになり、処分等の効力や責任も受任機関のものとなります。
また、いったん委任すると、原則として委任機関は同じ権限を行使できなくなります。
なお、この権限の委任には、法律の根拠が必要です。
4-2-2:「権限の代理」は権限と名義はそのまま
権限の代理とは、本来の行政機関が権限を持ったまま、別の機関(代理機関)に実際の行政行為を代行させることです。
権限の委任と異なり、処分などの行為は本来の行政機関の名義で行われ、不服申立ての相手方も本来の行政機関となります。
権限の代理には、以下の2種類があります。
【法定代理】
- 法律の規定に基づき、行政庁に欠員や事故が生じた場合に、その権限のすべてを自動的に代行するもの
- (例)内閣総理大臣に事故があった場合、あらかじめ指定された国務大臣が代理を務める(内閣法第9条)
【授権代理】
- 本来の行政庁が他の行政機関に対して、その権限の一部の代理を認める(授権する)ことで、代理関係が生じる
- 法律の根拠は必要ない
4-2-3:「専決・代決」は組織内部だけのルール
専決・代決は、対外的な権限や名義は一切変わらない、行政組織の内部だけのルールです。
専決とは、本来は行政庁が決裁すべき事項について、補助機関(副大臣、副知事、一般の公務員など)があらかじめ定められた範囲で最終決定を処理することです。
たとえば、軽微な許認可の処理を担当課長が行政庁に代わって決裁するケースがこれにあたります。
代決とは、行政庁が出張や病気などで不在のとき、補助機関が一時的に決裁処理を行うことです。
専決があらかじめ定められた継続的なルールであるのに対し、代決はあくまで行政庁の一時的な不在を補うための臨時的な措置です。
どちらも、対外的には行政庁の名義で処分等が行われます。
まとめ
行政組織法は行政法の3分野(行政組織法、行政作用法、行政救済法)のうちの1つであり、「誰が行政を行うか」に関して定めたルールです。
行政組織法では、以下の2つの概念を正確に理解することが重要です。
■行政主体:行政上の権利義務の帰属主体となる法人
■行政機関:行政主体の目的を実現するために意思決定や事務処理などを行う、行政主体の内部に置かれた組織上のポスト(地位・役職)
また、行政機関の間で行われる「権限の代行」には以下の3種類があり、その違いは次のとおりです。
■権限の委任:権限も名義も移る。委任には法律の根拠が必要。
■権限の代理:権限と名義は移らない。法律の根拠は不要・
■専決・代決:組織内部の事務処理のルール。
行政組織法は、行政作用法や行政救済法を学ぶ上での基礎となるため、これらの用語の意味や違いをしっかりと押さえておきましょう。
この記事では、初学者の方にもわかりやすいように基本的な考え方を解説しています。
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