【会社法入門2】株式の内容と種類株式9種類をわかりやすく解説
この記事を読んで理解できること
- 株式の内容と種類の全体像
- 株式の内容についての特別の定め
- 種類株式──108条が定める九種類
- 種類株主総会
- 試験答案の構成方法
「優先株や無議決権株という言葉を聞いたことがあるが、会社法ではどう位置づけられているの?」
「種類株式と『株式の内容』の特別の定めはどう違うの?」
「種類株主総会はどんな場合に必要になるの?」
会社法を学ぶ中で、こうした疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
会社法は、株式会社の株式について、画一的に同じ内容のものでなければならないとはしておらず、定款で定めることにより、内容の異なる多様な株式を発行することを認めています。
これは、株主の経済的ニーズや会社支配に関するニーズが多様化していることに対応し、機動的な資金調達や柔軟な企業統治を可能にするためです。
具体的には、(一)発行する全部の株式に共通する特別の内容を定める方法(会社法107条)と、(二)内容の異なる二種類以上の株式(種類株式)を発行する方法(108条)の二通りが用意されています。
さらに、種類株式を発行している会社では、特定の種類の株主の利益を保護するため、種類株主総会という独自の機関も設けられています。
本記事では、株式の内容と種類について、107条と108条の関係を整理しつつ、九種類の種類株式を概観し、種類株主総会との関係を含めて、予備試験・司法試験で問われる重要論点を解説します。
この記事で学べること
- 【初級】株式の内容(107条)と種類株式(108条)の違い
- 【初中級】107条の三種類の特別の定め
- 【中級】108条が定める九種類の種類株式の概要
- 【中級】種類株主総会の意義と機能
- 【中上級】定款変更により株式の内容を変更する場合の手続要件
第1章 株式の内容と種類の全体像
1-1 107条と108条の関係
会社法は、株式の内容について、二つの異なる方法で「特別の定め」をすることを認めています。
第一に、107条は、発行する全部の株式の内容として、定款で特別の定めを置くことを認めています。
これは、会社が発行する株式が一種類しかない場合に、その全ての株式に共通する内容を定める方法です。
107条1項各号は、譲渡制限(1号)、取得請求権(2号)、取得条項(3号)の三種類を挙げています。
第二に、108条は、内容の異なる二種類以上の株式(種類株式)を発行することを認めています。
これは、株式に多様な内容を持たせることで、株主の異なるニーズに応えるための制度です。
108条1項は、剰余金配当、残余財産分配、議決権制限、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権、クラス・ボーディングの九種類を挙げています。
両者の関係を整理すると、107条は「すべての株式に共通する特別の定め」を置く制度であるのに対し、108条は「種類ごとに内容の異なる株式」を発行する制度です。
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条文 |
内容 |
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107条 |
発行する全部の株式に共通する特別の定めを置く制度。定めの種類は三種類(譲渡制限・取得請求権・取得条項)に限られる |
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108条 |
内容の異なる二種類以上の株式(種類株式)を発行する制度。九種類の事項について種類ごとに異なる定めを置くことができる |
1-2 趣旨
株式の内容や種類について多様な定めを認める趣旨は、株主の経済的ニーズや会社支配に関するニーズが多様化していることに応えつつ、機動的な資金調達と柔軟な企業統治を可能にする点にあります。
たとえば、配当を優先的に受けたいと考える投資家には、配当優先株式を発行することで応えることができます。
経営に関与したくないが投資はしたいという投資家には、議決権制限株式が適合します。
一方、創業者の経営支配を確保したい場合には、拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)が利用されることもあります。このように、種類株式制度は、会社と株主双方にとって柔軟な選択肢を提供しています。
第2章 株式の内容についての特別の定め
107条1項は、発行する全部の株式の内容として、定款に以下の三種類の特別の定めを置くことができるとしています。
2-1 譲渡制限株式(107条1項1号)
譲渡制限株式とは、譲渡による株式の取得について会社の承認を要する旨を定めた株式をいいます。
譲渡制限を付すと、株主が自由に株式を譲渡することができなくなり、会社が望まない者が株主となることを防止することができます。
譲渡制限の趣旨は、閉鎖的な会社において、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止する点にあります。
中小企業や同族会社では、株主構成を一定の範囲に限定することが望まれるため、譲渡制限株式の活用は実務上も広く見られます。
なお、定款で全ての株式について譲渡制限を設けている会社が「非公開会社」、それ以外の会社(一種類でも譲渡制限のない株式がある会社)が「公開会社」(2条5号)に該当します。
本記事の後の章で扱う株式譲渡の論点とも密接に関係する重要な区分です。
2-2 取得請求権付株式(107条1項2号)
取得請求権付株式とは、株主が会社に対して、その有する株式を会社が取得することを請求することができる株式をいいます。
すなわち、株主側のイニシアティブで会社による株式取得が行われる仕組みです。
取得の対価としては、金銭のほか、社債や新株予約権、他の株式などを定款で定めることができます(107条2項2号)。
たとえば、ある種類の株式を別の種類の株式に転換する仕組み(いわゆる転換株式)も、この取得請求権を活用することで実現できます。
2-3 取得条項付株式(107条1項3号)
取得条項付株式とは、一定の事由が生じたことを条件として、会社が株主から強制的に株式を取得することができる株式をいいます。
取得請求権付株式が株主側のイニシアティブによる取得であるのに対し、取得条項付株式は会社側のイニシアティブによる取得である点に違いがあります。
取得の対価については、取得請求権付株式と同様に金銭・社債・新株予約権・他の株式などを定款で定めることができます(107条2項3号)。
2-4 定款変更による特別の定めの設定
既存の株式について、後から定款変更によりこれら三種類の特別の定めを付す場合、それぞれ手続要件が異なります。
これは、各定めが既存株主の権利に与える影響の重大性に応じて、より慎重な手続が要求されているためです。
第一に、譲渡制限を付す定款変更には、株主総会の特殊決議(309条3項1号)が必要であり、反対株主には株式買取請求権が与えられます(116条1項1号)。
これは、譲渡制限が既存株主の投下資本回収の機会に重大な変更をもたらすためです。
第二に、取得請求権を付す定款変更は、株主総会の特別決議で足ります(466条、309条2項11号)。
株主に取得請求権を付与することは、株主の権利を強化する側面もあり、相対的に手続が緩やかとされています。
第三に、取得条項を付す定款変更には、株主全員の同意が必要です(110条)。
これは、取得条項が会社のイニシアティブで強制的に株主の地位を奪うものであり、株主に与える不利益が極めて大きいためです。
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定めの種類 |
定款変更の決議要件 |
反対株主の株式買取請求権 |
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譲渡制限(107条1項1号) |
総会の特殊決議(309条3項1号) |
あり(116条1項1号) |
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取得請求権(107条1項2号) |
総会の特別決議(309条2項11号) |
なし |
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取得条項(107条1項3号) |
株主全員の同意(110条) |
総会決議自体不要 |
第3章 種類株式──108条が定める九種類
108条1項は、内容の異なる二種類以上の株式を発行することを認めており、その対象事項として九種類を列挙しています。
種類株式を発行するには、原則として定款で当該種類株式の内容を定める必要があります(108条2項)。
もっとも、一定の重要事項を除き、定款には内容の要綱のみを定め、具体的内容は実際に発行するときまでに株主総会または取締役会で定めることもできます(108条3項)。
以下、九種類の種類株式の概要を順に確認します。
3-1 剰余金配当・残余財産分配(108条1項1号・2号)
剰余金配当または残余財産分配について、内容の異なる種類の株式を発行することができます。
配当または分配について他の種類の株主に優先するものを「優先株式」、劣後するものを「劣後株式」(後配株式)、両者が混在するものを「混合株式」といいます。
実務では、配当優先株式が広く活用されています。一般に、配当優先株式は議決権制限とセットで発行されることが多く、企業にとっては議決権を分散させずに資金調達を行う手段として有用です。
3-2 議決権制限株式(108条1項3号)
株主総会で議決権を行使することができる事項について、内容の異なる種類の株式を発行することができます。
一部の決議事項についてのみ議決権を有しないものや、すべての決議事項について議決権を有しない株式(無議決権株式)も発行可能です。
もっとも、公開会社では、議決権制限株式の数が発行済株式総数の二分の一を超えた場合、会社は直ちにこれを二分の一以下にする措置を講じなければなりません(115条)。
これは、多数の投資家が株主となり得る公開会社において、経営者が議決権制限を悪用して少額の出資で会社支配を維持することを防ぐためです。
3-3 譲渡制限種類株式(108条1項4号)
譲渡による特定の種類株式の取得について、会社の承認を要する旨を定める種類株式です。
前述した107条1項1号の譲渡制限が「全ての株式」を対象とするのに対し、こちらは「特定の種類」のみを対象とする点に特徴があります。
特定の種類株式のみに譲渡制限を付す定款変更には、株主総会の特殊決議(309条3項1号)に加えて、当該種類株式の種類株主総会の特殊決議(111条2項1号、324条3項1号)が必要となります。
さらに、反対株主には株式買取請求権が認められます(116条1項2号)。
手続が極めて重い点に留意が必要です。
3-4 取得請求権・取得条項付種類株式(108条1項5号・6号)
特定の種類株式について、株主から会社に対する取得請求権を付与し、または、一定の事由の発生を条件に会社が株主から強制的に取得できる仕組み(取得条項)を設けることができます。
両者の違いは、取得のイニシアティブを誰が持つかにあります。
取得請求権では株主が会社に取得を求めるかどうかを選択できますが、取得条項では株主に選択権がありません。
実務上は、ある種類の株式を別の種類の株式に転換するための仕組み(いわゆる転換株式)として活用されることが多くあります。
具体的な取得手続については、166条以下(取得請求権)・168条以下(取得条項)に詳細な規定があります。
3-4-1 取得条項付種類株式の付与における手続
既発行の種類株式に取得条項を付す定款変更には、当該種類株主全員の同意が必要です(111条1項)。
これは、107条1項3号の取得条項と同様、株主の地位を強制的に奪うことを許容する重大な変更であるため、当該種類株主全員の同意という極めて厳格な要件が課されているのです。
3-5 全部取得条項付種類株式(108条1項7号)
会社が株主総会の特別決議によって、ある種類株式の全部を取得することができる種類株式です。
取得条項付種類株式と似ていますが、取得条項付種類株式が定款で定めた一定の事由の発生を条件に取得が行われるのに対し、全部取得条項付種類株式は株主総会の特別決議によって取得が行われる点で異なります。
実務上、全部取得条項付種類株式は、かつて経営者による買収(MBO)や非公開化に伴うキャッシュアウト・スクイーズアウト(少数株主の締め出し)の手法として活用されてきました。
もっとも、平成26年改正により特別支配株主の株式等売渡請求(179条以下)の制度が新設され、現在ではキャッシュアウトの手法として複数の選択肢が存在します。
具体的な取得手続は171条以下に規定されており、取得対価の決定、株主に対する通知、反対株主の株式買取請求権など、株主保護のための詳細な規律が設けられています。
3-6 拒否権付種類株式(108条1項8号)
株主総会または取締役会の決議事項の全部または一部について、その決議のほかに当該種類株式の種類株主総会の決議を必要とする旨を定める種類株式です。
当該決議事項について、いわば拒否権を持つことになるため「黄金株」とも呼ばれます。
拒否権付種類株式は、創業者や特定の安定株主が会社の重要事項についてコントロールを維持したい場合や、敵対的買収防衛策の一手段として活用されることがあります。
もっとも、その強力な権能ゆえに、濫用された場合の弊害も大きく、実務上はその設計や運用に慎重な検討が求められます。
3-7 クラス・ボーディング(108条1項9号)
当該種類株式の種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨を定める種類株式です。
一般的な株主総会ではなく、特定の種類株主だけで取締役・監査役を選任できるという特徴があります。
もっとも、この種類株式は非公開会社のみが発行することができます(108条1項但書)。
公開会社で認めると、経営者支配の維持のために濫用されるおそれがあるためです(議決権制限株式の発行制限〔115条〕と同趣旨)。
3-8 九種類の種類株式の整理
以上の九種類を整理すると次のとおりです。
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種類 |
概要 |
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①剰余金配当(1号) |
配当について優先・劣後など内容の異なる定めができる |
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②残余財産分配(2号) |
残余財産分配について優先・劣後など内容の異なる定めができる |
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③議決権制限(3号) |
議決権を行使できる事項について制限を設ける(公開会社は二分の一以下) |
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④譲渡制限(4号) |
特定種類株式の譲渡に会社の承認を要する |
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⑤取得請求権(5号) |
株主から会社に取得を請求できる |
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⑥取得条項(6号) |
一定事由の発生を条件に会社が強制取得できる |
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⑦全部取得条項(7号) |
総会特別決議により全部を取得できる |
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⑧拒否権(8号) |
総会・取締役会決議に種類株主総会決議を要求できる(黄金株) |
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⑨クラス・ボーディング(9号) |
種類株主総会で取締役・監査役を選任できる(非公開会社限定) |
第4章 種類株主総会
4-1 意義
種類株主総会とは、種類株式発行会社において、特定の種類の株主のみで構成される株主総会をいいます。
種類株式発行会社では、ある種類の株主の利益が他の株主の決定によって不当に害される可能性があるため、当該種類の株主のみで構成される機関で別途の意思決定を行う必要が生じるのです。
種類株主総会の機能は大きく二つに分けられます。第一は、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある一定の行為を会社が行う場合に、当該種類株主の同意を確保する機能です。
第二は、特定の種類株式に重大な変更を加える場合や、拒否権付種類株式・クラス・ボーディングのように、種類株主総会自体が独自の決定機能を持つ場合です。
4-2 種類株主総会決議が必要となる場合
4-2-1 ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合
会社法322条1項は、種類株式発行会社において、一定の行為が「ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるとき」は、当該種類株主による種類株主総会の特別決議による承認がなければ、その行為の効力が生じないと定めています(324条2項4号)。
ここで「損害を及ぼすおそれ」の判断は、保有していた優先株式の従前の価値が損なわれるか否かを基準に行うとされています。
たとえば、配当優先株式を発行している会社が、新たに同順位の優先株式を発行することで、既存の優先株主の配当の取り分が事実上希薄化する場合などがこれに該当します。
もっとも、定款で当該種類株主総会の承認を要しないと定めることもできます(322条2項)。
この場合、種類株主は反対株主の株式買取請求権を行使することによって投下資本を回収することになります(116条1項3号)。
4-2-2 特定の種類株式に重大な変更を加える場合
特定の種類株式の内容について重大な変更を加える定款変更を行う場合、当該種類の種類株主総会の決議が必要です。
具体的には、ある種類株式に譲渡制限を付す場合は種類株主総会の特殊決議(111条2項1号、324条3項1号)、全部取得条項を付す場合は種類株主総会の特別決議(111条2項1号、324条2項1号)、取得条項を付す場合は当該種類株主全員の同意(111条1項)が必要となります。
譲渡制限と全部取得条項の場合は反対株主の株式買取請求権も認められます(116条1項2号)。
取得条項の場合は全員同意が要件であるため、反対する株主は同意しなければ済むので、買取請求権の制度は設けられていません。
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定款変更の内容 |
種類株主総会の手続要件 |
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特定種類株式への譲渡制限の付加 |
特殊決議(111条2項1号、324条3項1号)+反対株主の株式買取請求権 |
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特定種類株式への全部取得条項の付加 |
特別決議(111条2項1号、324条2項1号)+反対株主の株式買取請求権 |
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特定種類株式への取得条項の付加 |
当該種類株主全員の同意(111条1項) |
第5章 試験答案の構成方法
5-1 定款変更による株式の内容変更の答案構成
予備試験や司法試験で、株式の内容を後から定款変更により変更する事案が出題された場合、以下の流れで答案を構成することが考えられます。
【答案構成の流れ】
・問題提起:本件定款変更の手続要件は何か。当該手続要件を満たしているかが問題となる
・規範定立:株式の内容を変更する定款変更は、既存株主の権利に重大な影響を及ぼし得るため、変更内容に応じて段階的に厳格な手続要件が定められている
・判断基準:具体的には、(一)譲渡制限の付加→株主総会の特殊決議(309条3項1号)+反対株主の株式買取請求権(116条1項1号)、(二)取得請求権の付加→株主総会の特別決議(309条2項11号)、(三)取得条項の付加→株主全員の同意(110条)、(四)種類株式の場合は当該種類株主総会決議または当該種類株主全員の同意(111条)が併せて必要となる
・あてはめ:本件定款変更がいずれの類型に該当し、必要な手続要件を満たしているかを具体的に検討する
・結論:定款変更の効力を結論づける
試験では、特に「種類株式発行会社における定款変更」が問われた場合、株主総会決議に加えて種類株主総会決議が必要となる点を見落とさないことが重要です。
まとめ
株式の内容と種類について、本記事では以下の点を解説しました。
・107条は発行する全部の株式に共通する特別の定め(譲渡制限・取得請求権・取得条項)、108条は内容の異なる種類株式の発行を、それぞれ規律する制度である
・107条1項に基づき、会社は譲渡制限・取得請求権・取得条項の三種類の特別の定めを置くことができる
・108条1項に基づき、会社は剰余金配当・残余財産分配・議決権制限・譲渡制限・取得請求権・取得条項・全部取得条項・拒否権・クラス・ボーディングの九種類について、内容の異なる種類株式を発行できる
・議決権制限株式について公開会社では発行済株式総数の二分の一を超えてはならない(115条)など、種類株式の発行には濫用防止のための制限が設けられている
・既存の株式の内容を後から変更する定款変更には、変更内容の重大性に応じて、特別決議、特殊決議、株主全員の同意など段階的に厳格な手続要件が定められている
・種類株式発行会社では、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある行為や、特定種類株式に重大な変更を加える行為について、種類株主総会決議が要求されている(322条、111条等)


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