【民事訴訟法入門5】訴えの利益について徹底解説!~訴えの3類型からのアプローチ~

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【民事訴訟法入門5】訴えの利益について徹底解説!~訴えの3類型からのアプローチ~
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この記事を読んで理解できること
  • 訴えの利益の定義と3つの訴訟類型
  • 将来給付の訴え
  • 確認の利益

この記事は、

  • 訴えの利益とは何か知りたい
  • 将来給付の訴えについて知りたい
  • 確認の利益について知りたい

といった方におすすめです。

訴えの利益は、訴訟要件に関する重要論点の一つです。

訴訟要件が認められないと、本案(訴訟物の有無)について判断するまでもなく、訴えは却下となります。

訴えの利益は判断基準が抽象的なので、なんとなくわかったような、わからないような…という人もいるでしょう。

後で解説するように、訴えの利益はすぐに判断基準を暗記しようとするのではなく、訴えの3類型を理解することが非常に重要です。

そもそも訴えにはどのような類型があるのかをきちんと理解した上で、将来給付の訴えや確認の利益といった個別の論点を勉強すると、理解度が一気に上がります。

そこで、この記事では、

1章で訴えの利益の定義と3つの訴訟類型について、

2章で将来給付の訴えについて、

3章で確認の利益について、

それぞれ解説します。

基礎知識をわかりやすく簡潔に説明しますので、初学者の方はもちろん、憲法をひと通り学んだ方のまとめ用にも最適です。

1章 訴えの利益の定義と3つの訴訟類型

1-1 訴えの利益とは何か

まずは定義から説明しましょう。

訴えの利益とは、「審判対象たる特定の請求が、本案判決による争訟の処理に適するかどうかの判断基準」を意味します。

簡単に言えば、「それって裁判所が判決を出す意味あるの?」という判断をするための基準ということです。

例えば、「猫がかわいいことを認めてください!」と訴えたとしても、裁判所はどうすることもできません。

【民事訴訟法入門4】重複起訴の禁止でも解説したように、裁判所は国民からの税金で動いており、マンパワーにも限りがあります。

そのため、本当に裁判所が判決を出すに適した事件だけを対象とする必要があるのです。

訴えの利益が認められない場合、本案(訴訟物の有無)の判断に立ち入ることなく、訴えは却下されます。

1-2 訴えの3類型

では、どのような請求であれば訴えの利益が認められるのでしょうか。

これを考える際には、訴えの類型を理解しておくことが非常に重要です。

訴えには、大きく分けて以下の3類型があります。

  • 給付の訴え
  • 確認の訴え
  • 形成の訴え

給付の訴え

給付の訴えとは、被告に作為や不作為を命じることを裁判所に求める訴えのことをいいます。

「被告は原告に対し、100万円を支払え」などが典型例です。

訴えの利益との関係では、現在給付の訴えではあまり問題になりませんが、将来給付の訴えではほぼ必ず検討が必要となります。

現在給付の訴えとは、被告に現在の履行を求める訴えであるのに対し、将来給付の訴えとは、現在は履行を求める地位にないが将来のある時点での履行を求める訴えのことをいいます。

現在給付の訴えの場合、原告は「今すぐ給付を求められる地位にあるのに給付を受けていない」として訴えているわけですから、裁判所が判断するに適しており、原則的に訴えの利益が認められます。

これに対し、将来給付の訴えの場合、「今すぐ給付を求められる地位にはないが、将来に備えてあらかじめ判決を出してほしい」ということなので、本当にその必要があるのかを吟味する必要があるのです。

詳細は次章で解説します。

確認の訴え

確認の訴えとは、一定の権利や地位などを確認することを裁判所に求める訴えのことをいいます。

例えば、不当解雇された労働者が、「原告が、被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する」という判決を求める場合などが挙げられます。

【民事訴訟法入門4】重複起訴の禁止で解説した債務不存在確認訴訟も確認の訴えです。

確認訴訟では、訴えの利益(確認の利益)が問題になることが多いです。

何を確認するかというのは無数に想定されるため、本当にそれを確認することが紛争の解決につながるのかを慎重に検討する必要があります。

■形成の訴え

形成の訴えとは、判決の確定により法律関係の変動を求める訴えのことをいいます。

例えば、夫婦の一方が離婚届の提出に協力しない場合であっても、離婚訴訟において、「原告と被告とを離婚する」という判決が出れば、判決の確定をもって離婚したことになります。

形成の訴えは、訴えの利益が問題となることはほとんどありません。

通常であれば、離婚訴訟のように形成の訴えとして法律で認められているものに限り提訴されるため、法律の要件を満たすのであれば、原則的に訴えの利益が認められます。

ただし、「取締役選任の株主総会決議を取り消せ」という訴えの進行中に、当該取締役の任期が満了した場合は訴えの利益が認められない(最判昭和45年4月2日)といった例外もあることに注意しましょう。

  • 給付の訴え

→現在給付の訴えではあまり問題にならないが、将来給付の訴えではほぼ必ず検討が必要。

  • 確認の訴え

→問題となることが多い。

  • 形成の訴え

→ほとんど問題にならないが例外あり

2章 将来給付の訴え

2-1 総論

この章では、将来給付の訴えについて解説します。

先ほど説明したとおり、将来給付の訴えとは、現在は履行を求める地位にないが将来のある時点での履行を求める訴えのことです。

では、将来給付の訴えの訴えは、どのような場合に訴えの利益が認められるでしょうか?

民事訴訟法の条文を読んでみましょう。

(将来の給付の訴え)

第百三十五条 将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。

135条の「あらかじめその請求をする必要」がある場合に、訴えの利益が認められます。

具体的には、

①現時点で給付判決をしておくべき必要性

②給付請求権の内容が現実化する蓋然性

の2つが認められなければなりません。

2-2 現時点で給付判決をしておくべき必要性

これは、「本当に今すぐ判決を出す必要があるのか?」という問題です。

将来権利が発生するなら、権利が発生してから請求すればよく、今はまだ判決を出す必要はないのではないかを検討する必要があります。

必要性が認められるケースは、いくつか典型例があるので押さえておきましょう。

①定期行為(民法542条1項4号)

「特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合」であるため、履行が少しでも遅れると給付に意味がなくなってしまいます。

そのため、あらかじめ権利を確定しておく必要性があります。

②扶養料請求・養育費請求

生活や子供の養育に関わる権利であり、履行遅滞による損害が甚大であるため、必要性が認められます。

③義務者が既に義務の存在又は態様を争っている場合

権利が発生する前から「自分にそんな義務はない」と言われているのであれば、実際に権利が発生した時点で履行してもらうことは期待できません。

そのため、あらかじめ訴えておく必要性が認められます。

ほかにもいくつか該当する事例がありますが、初学者の方はこの3つを押さえておきましょう。

論文試験では、③を論証することが多いと思われます。

2-3 給付請求権の内容が現実化する蓋然性

これは、「本当に将来権利が発生するのか」という問題です。

いったん判決が確定すれば、将来権利が発生した時点で、原告側は強制執行ができるようになります。

もし、将来権利が発生しなかった場合や権利が消滅した場合は、被告側は強制執行を止めるために請求異議という訴えを起こさなければなりません。

このように、あらかじめ判決が確定してしまうと、実際には義務がない場合も被告側に負担が生じてしまうので、本当に原告が訴えている権利は将来発生する蓋然性が高いのかを検討する必要があります。

この蓋然性が問題となることが多いのは、

  • 将来の損害賠償請求権
  • 将来の賃料請求権

の2種類です。

それぞれ、重要な最高裁判例があります。

■将来の損害賠償請求権

国際空港での飛行機の離着陸に伴う騒音被害について、将来の損害も含む国家賠償請求がなされた事案として、大阪空港公害訴訟があります。

  • 昭和56年12月16日(大阪空港公害訴訟) 百選20

(判旨)

継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。

最高裁は、以上のとおり判示した上で、本件については損害の有無や程度をあらかじめ明確に把握することは困難であり、将来の損害賠償請求は認められないと結論づけました。

(最高裁の判断基準)

  • 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係の存在とその継続が予測されること
  • 債務者に有利な事情の変動があらかじめ明確に予測しうる事由に限られること
  • 請求異議の訴えを起こす負担を債務者に課しても格別不当とはいえないこと

■将来の賃料請求権

賃料請求の事案では、以下の最高裁判例があります。

  • 最判昭和63年3月31日

(事案)

XとYが共有する土地について、YがAに駐車場として賃貸した。XはYに対し、その収益のうちYの持分を超える部分を不当利得として返還請求した。

(判旨)

右請求については、その基礎となるべき事実上及び法律上の関係が既に存在し、その継続が予測されるものと一応いうことができる。しかし、右賃貸借契約が解除等により終了した場合はもちろん、賃貸借契約自体は終了しなくても、賃借人たる訴外会社が賃料の支払を怠つているような場合には、右請求はその基礎を欠くことになるところ、賃貸借契約の解約が、賃貸人たる上告人の意思にかかわりなく、専ら賃借人の意思に基づいてされる場合もあり得るばかりでなく、賃料の支払は賃借人の都合に左右される面が強く、必ずしも約定どおりに支払われるとは限らず、賃貸人はこれを左右し得ないのであるから、右のような事情を考慮すると、右請求権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動が予め明確に予測し得る事由に限られるものということはできず、しかも将来賃料収入が得られなかつた場合にその都度請求異議の訴えによつて強制執行を阻止しなければならないという負担を債務者に課すことは、いささか債務者に酷であり、相当でないというべきである。

最高裁は、3つの判断基準のうち、

  • 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係の存在とその継続が予測されること

は一応認めたものの、

  • 債務者に有利な事情の変動があらかじめ明確に予測しうる事由に限られること
  • 請求異議の訴えを起こす負担を債務者に課しても格別不当とはいえないこと

の2つが認められないとして、将来の賃料請求を認めませんでした。

しかし、この事案は駐車場の賃貸であり、通常の家屋の賃貸には判例の射程が及ばないという指摘もあります。

3章 確認の利益

最後に、確認の訴えにおける訴えの利益、すなわち確認の利益について解説します。

前述のとおり、確認の訴えにおいて何を確認するかというのは無数に想定されるため、本当にそれを確認することが紛争の解決につながるのかを慎重に検討する必要があります。

具体的には、以下の3つの基準により判断されます。

  • 確認対象の適否
  • 方法選択の適否
  • 即時確定の利益

それぞれ説明します。

3-1 確認対象の利益

これは、訴訟物の適否の問題です。

具体的には、現在の法律関係については確認対象の利益が認められやすいですが、過去や将来の法律関係や、法律関係ではなく事実関係の確認については原則として否定されます。

3-2 方法選択の適否

これは、本当に確認の訴えが適切なのかという問題です。

具体的には、給付の訴えが可能であれば、あえて確認の訴えにする必要はないため、方法選択が適切でないとされます。

例えば、XがYに金銭を貸したのであれば、貸金返還請求という給付の訴えを起こすべきであり、貸金返還請求権が存在することの確認の訴えを起こす必要はないということです。

3-3 即時確定の利益

これは、紛争の成熟性の問題です。

例えば、遺言無効確認の訴えは、遺言者の生存中は即時確定の利益が認められません(最判平成11年6月11日 百選24)。

遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり、生存中はいつでも撤回できるため、遺言者が生存している間は紛争が成熟したとはいえないからです。

まとめ

■1章まとめ

訴えの利益とは、「審判対象たる特定の請求が、本案判決による争訟の処理に適するかどうかの判断基準」を意味します。

訴えには、

  • 給付の訴え
  • 確認の訴え
  • 形成の訴え

の3類型があり、それぞれの特徴を押さえておくことが重要です。

■2章まとめ

将来給付の訴えは、「あらかじめその請求をする必要」(民事訴訟法135条)がある場合に、訴えの利益が認められます。

具体的には、

①現時点で給付判決をしておくべき必要性

②給付請求権の内容が現実化する蓋然性

の2つが認められなければなりません。

■3章まとめ

確認の訴えにおいて何を確認するかというのは無数に想定されるため、本当にそれを確認することが紛争の解決につながるのかを慎重に検討する必要があります。

具体的には、以下の3つの基準により判断されます。

①確認対象の適否

②方法選択の適否

③即時確定の利益

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しています。

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