【民事訴訟法入門2】民訴の大前提である訴訟物と要件事実を基礎から解説

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【民事訴訟法入門2】民訴の大前提である訴訟物と要件事実を基礎から解説
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この記事を読んで理解できること
  • 訴訟物とは何か
  • 要件事実とは何か

この記事は、

  • 民事訴訟法の基礎知識を身に着けたい
  • 訴訟物とは何かを知りたい
  • 要件事実とは何かを知りたい

といった方におすすめです。

民事訴訟法の基本書を読むと、多くの場合は当事者の特定や訴えの提起など、訴訟の時系列に沿った説明がなされています。

しかし、初学者の方にとっては、「そもそも民事訴訟では何を判断するのか?」がわかっていないと、個々の制度の説明を受けても理解できないことが少なくありません。

そこで、この記事では、民事訴訟法を理解する上で必要不可欠な、「訴訟物」と「要件事実」という概念について解説します。

第1章で訴訟物とは何か、第2章で要件事実とは何かについて説明します。

基礎知識をわかりやすく簡潔に説明しますので、初学者の方はもちろん、憲法をひと通り学んだ方のまとめ用にも最適です。

第1章 訴訟物とは何か

この章では、訴訟物とは何かについて解説します。

1-1 訴訟物の定義

結論から言うと、訴訟物とは、「民事訴訟において裁判所の審判対象となる、一定の権利又は法律関係」をいいます。

そう言われてもピンとこないという人も多いでしょうから、具体例を挙げて説明します。

【事例】
XとYは、令和8年2月12日に、XがYに甲土地を代金1000万円で売却する旨の契約を締結した。

Yが代金を支払わないので、Xは支払を請求したい。

この事例では、「令和8年2月12日にXとYとの間で締結された、甲土地の代金1000万円での売買契約に基づく、XのYに対する代金1000万円の支払請求権」が裁判所の判断の対象となる訴訟物です。

1-2 訴訟物の重要性

ここで、民事訴訟法の条文を読んでみましょう。

【条文】246条

裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。

これは「処分権主義」と呼ばれる原則です。

裁判所は、当事者が申し立てていない事項について判決をすることができないため、当事者の申立てが判断の対象を決定することになります。

このように、訴訟物は「裁判所が何について判断すればいいのか」を特定するために必要不可欠な概念であり、民事訴訟法を学ぶ上での大前提となります。

1-3 訴訟物の特定

では、個々の事案において、何が訴訟物なのかをどのように特定すればよいのでしょうか。

これは、権利の性質が債権的請求権物権的請求権かによって異なります。

債権的請求とは、契約や不法行為のような債権に基づく請求権であり、前述の売買代金請求も債権的請求権です。

この場合、

  • 請求権の主体と相手方
  • 権利の内容(給付の内容と発生原因)

によって特定するのが原則となります。

前述の事例でいうと、給付の内容が代金1000万円の支払であり、発生原因が甲土地の売買契約です。

物権的請求権とは、所有権のような物権について、妨害の除去を求めるための請求権をいいます。

そのため、

  • 権利の主体と相手方
  • 権利の内容(妨害等の態様に応じた権利の種類と具体的内容)

によって特定します。

例えば、X所有の土地をYが無断で占拠している場合、訴訟物は「XのYに対する、所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」が訴訟物となります。

【コラム】訴訟物論争とは?

前述したような訴訟物の特定方法は「旧訴訟物理論」といい、実務が採用している見解です。

これに対し、学説では「新訴訟物理論」という見解があります。これは、「相手方に一定の給付を求めうる法律上の地位」を訴訟物とする考え方です。

例えば、賃貸人が賃借人に対して土地の返還を求める場合、旧訴訟物理論によれば、「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」と「賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての土地明渡請求権」は別々の訴訟物となります。

これに対し、新訴訟物理論によれば、どちらも同じ土地の返還を求める法的地位が審判対象となるため、訴訟物は同一です。

このような見解の対立を「訴訟物論争」といいます。

実務は旧訴訟物理論が定着しているため、受験生が深入りする必要はありませんが、説対立があることは覚えておきましょう。

第2章 要件事実とは何か

この章では、要件事実とは何かについて解説します。

2-1 要件事実の定義

これも結論から言うと、要件事実とは「一定の法律効果を発生させる法律要件に該当する具体的事実」をいいます。

「主要事実」ともいいます(所説ありますが、ひとまず「要件事実」と「主要事実」は同義と考えましょう)。

「一定の法律効果」とは、権利の発生、障害、消滅、阻止のことです。

■権利の発生

例えば、売買契約の締結(民法555条)は、代金支払請求権という権利を発生させる事実です。

いったん権利が発生したら、原則的にはその権利が存続することになります。

前述の事例でいえば、「Xは、Yに対し、令和8年2月12日、甲土地を代金1000万円で売った」という事実が、代金支払請求権を発生させる要件事実となります。

■権利の障害

例えば、売買契約の締結が通謀虚偽表示(民法94条1項)であれば、代金支払請求権は発生しません。

このように、権利を発生させる事実があったとしても、権利の障害に該当する事実があると、そもそも権利は発生しないことになります。

■権利の消滅

例えば、売買契約が締結された後、無事に代金が弁済されれば、代金支払請求権は消滅します(民法473条)。

このように、過去の一時点において権利が発生しても、後に権利を消滅させる事実があると、現在はその権利が存在しないことになります。

■権利の阻止

例えば、売買契約を締結した後、売主が目的物を引き渡さない場合、買主は同時履行の抗弁(民法533)条を主張することができます。

このように、現在に至るまで権利が存在しているとしても、その行使を阻止する事実があると、権利はあってもこれを行使できないということになります。

2-2 主張立証責任

民事訴訟では、当事者がきちんと事実を主張していないことや、十分な立証ができないことがあります。

もし、裁判所が証拠を精査した結果、法律効果の判断に必要な事実が認められると判断しても、当事者がその事実を主張していなければ、裁判所はその事実を判決の基礎とすることができません。

このような原則を、「弁論主義第1テーゼ」といいます。

また、当事者が主張をしたとしても、立証が不十分なので、事実があるのかないのか結局わからないということもあり得ます。

しかし、このような場合も裁判所は「事実がわからないので判決は無理です」と言うわけにはいかず、一定の判断を下す必要があります。

そこで登場するのが、主張立証責任という概念です。

主張立証責任とは、ある法律効果を発生させる要件事実が主張されないことやその存在が真偽不明に終わったことにより、当該法律効果の発生が認められないという一方当事者の不利益又はその危険をいいます。

例えば、売買代金支払請求の場合、権利を発生させる売買契約の締結は、支払を求める原告側に利益があるので、原告が主張立証責任を負います。

つまり、売買契約について何も主張されない場合(さすがにそんなことはないと思いますが)や、売買契約があったのかなかったのかが不明に終わった場合、代金支払請求権という効果は発生しないことになります。

これに対し、売買契約が通謀虚偽表示であることや、既に代金を弁済しているといった事実は、権利の障害や消滅という利益を受ける被告側に主張立証責任があります。

2-3 要件事実に対する認否

当事者の一方が一定の事実(要件事実)を主張した場合、相手方当事者は認否をする必要があります。

認否の種類は、

  • 自白(認める)
  • 否認
  • 不知
  • 沈黙(認否を明らかにしない)

があります。

■自白(認める)

当事者が自白した(認めた)要件事実は、証拠を提出して立証する必要がなく、裁判所はこれを判断の基礎としなければなりません(民事訴訟法179条)。

つまり、裁判所が「え、違うんじゃない?」と思っても、当事者間に争いがないなら、それは前提として判断する必要があるということです。

このような原則を、「弁論主義第2テーゼ」といいます。

■否認する

相手方当事者が否認した要件事実については、真偽不明のままだと法律効果の発生が認められません(立証責任)。

そのため、要件事実の存在を主張する当事者が、証拠を提出して立証する必要があります。

このとき、裁判所は独自に調査をして「証拠を見つけたので事実を認めます!」と言うことはできず、あくまで当事者が提出した証拠から事実を認定しなければなりません。

このような原則を、「弁論主義第3テーゼ」といいます。

■不知

これは、要するに「知りません」ということです。

知らないというのは認めないということなので、否認した場合と同様に扱われます(民事訴訟法159条2項)。

■沈黙(認否を明らかにしない)

認否をしない、つまり否定も肯定もしないということです。

この場合、争う姿勢を明らかにしていないため、「擬制自白」といって、自白したものとみなされます(民事訴訟法159条1項本文)。

ただし、明示的に否定していなくても、弁論の全趣旨、つまり当事者の言動全般から争ったと認められる場合は擬制自白にはなりません(159条1項但書)。

第3章 まとめ

■第1章まとめ

訴訟物とは、「民事訴訟において裁判所の審判対象となる、一定の権利又は法律関係」をいいます。

裁判所は、当事者が申し立てていない事項について判決をすることができないため、民事訴訟において訴訟物の特定は非常に重要です。

訴訟物は、

  • 請求権の主体と相手方
  • 権利の内容

によって特定します。

■第2章まとめ

要件事実とは、「一定の法律効果を発生させる法律要件に該当する具体的事実」をいいます。

「一定の法律効果」とは、権利の発生、障害、消滅、阻止のことです。

これらの事実が主張されなかった場合や真偽不明になった場合に一方当事者が受ける不利益又はその危険を「主張立証責任」といいます。

要件事実に対する認否の種類は、

  • 自白(認める)
  • 否認
  • 不知
  • 沈黙(認否を明らかにしない)

があります。

この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しています。

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