【民事訴訟法入門1】最新の法改正にも対応!民事訴訟の手続を徹底解説
目次
この記事を読んで理解できること
- 民事訴訟の全体像
- 法改正によるIT化
この記事は、
- 民事訴訟の手続の全体像を知りたい
- 民事訴訟のIT化について知りたい
- 最近の法改正によって何が変わったのかを知りたい
といった方におすすめです。
民事訴訟法は「眠素」と呼ばれることがあるように、具体的なイメージをつかみづらいという人も多いと思います。
実務家になると日頃から当然のように接する法律ですが、受験生にとっては基本書だけで理解するのはなかなか難しいと思います。
さらに、最近では法改正により手続のIT化が進み、ますますわけがわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、民事訴訟の手続を、初学者の方にもわかりやすく説明します。
第1章で民事訴訟の全体像について解説し、
第2章で法改正によるIT化について解説します。
基礎知識をわかりやすく簡潔に説明しますので、初学者の方はもちろん、憲法をひと通り学んだ方のまとめ用にも最適です。
第1章 民事訴訟の全体像
まず初めに、民事訴訟がどのような流れで進んでいくのかの全体像をお示しします。
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【民事訴訟の全体像】 ↓ 被告に訴状送達(訴訟係属) ↓ 口頭弁論(答弁書を含む準備書面を陳述) ↓ 訴訟の終了(主に和解又は判決) |
それぞれ説明します。
1-1 原告が裁判所に訴状を提出
民事訴訟は私人の紛争ですので、当事者が訴えを起こさない限り、訴訟が始まることがありません。
そこで、まずは訴えを起こす側(原告)が裁判所に訴状を提出し、誰にどのような請求をするかを明らかにします。
訴状には、事件の当事者を特定した上で、
- 請求の趣旨
- 請求の原因
を記載する必要があります(民訴規則53条)。
「請求の趣旨」とは、裁判所に求める判決の内容を記載する、結論にあたる部分です。
【請求の趣旨の例】
1 被告は原告に対し、100万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え
2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。
「請求の原因」とは、請求を特定するのに必要な事実をいいます。
例えば、被告が原告から100万円を借りて、いつまでに返す約束をしたなど、請求の趣旨の根拠となる事実を記載することになります。
より詳細な記載例は、ヨビロン民事訴訟法の講座で公開しています。
1-2 被告に訴状送達(訴訟係属)
訴状にも訴え提起にも問題がない場合は、裁判長が第一回口頭弁論期日を定め、当事者の呼出しを行います(民訴法139条・93条)。
具体的な手続としては、呼出状とともに訴状副本が被告に送達され、この時点で訴訟係属、つまり原告と被告との民事訴訟が始まった状態となります。
1-3 口頭弁論(答弁書を含む準備書面を陳述)
原告と被告は、口頭弁論で自らの主張を陳述します。
このように、当事者の主張を口頭で述べる原則を口頭主義といいます。
もっとも、当事者がなんでもかんでも口頭で話す必要があると、裁判所は膨大な数の民事訴訟を処理することができなくなってしまいますし、口頭で話した内容を全て記録として残すのも無理があります。
そのため、当事者は口頭弁論を書面で準備すること、すなわち準備書面の提出が求められます(民訴法161条1項)。
被告が最初に提出する準備書面が「答弁書」であり、その後も当事者双方が準備書面で主張・反論を行うことになります。
実際の口頭弁論では、裁判所から「訴状を陳述していただきます」「答弁書を陳述していただきます」などと言われ、当事者が「はい」「陳述します」などと答えることにより、口頭で陳述したものとして扱われることが圧倒的に多いです。
【コラム】被告が当日出頭できないとどうなるの?
当事者が口頭弁論で相手方の主張した事実を争わないと、その事実を自白したものとみなされます(民訴法159条1項)。
そのため、第一回口頭弁論期日に被告が出頭しないと、その日のうちに口頭弁論が終結し、「被告は原告の主張した事実を全部自白した」という前提で判決が言い渡されることも珍しくありません(いわゆる欠席判決です)。
もっとも、第一回口頭弁論期日は、裁判所と原告が日程調整をした上で決まるのが通常ですので、基本的に被告の都合は確認されません。
では、被告が当日に別の予定が入っていて出頭できない場合、欠席判決になってしまうのでしょうか?
実は、そうならないための規定があります。
被告が事前に答弁書を提出していれば、第一回口頭弁論期日に出頭しなくても、答弁書に記載された内容を陳述したものとみなされるのです(民訴法158条)。
そして、二回目以降の期日については、あらかじめ原告と被告両方と日程調整をした上で決めていくことになります。
1-4 訴訟の終了
訴訟の終了は、大きく分けると「判決による場合」と「判決によらない場合」の2種類があります。
判決とは、口頭弁論終結後に言い渡される、裁判所が審理を終結させる裁判のことをいいます(民訴法243条1項、251条1項)。
当事者の意思とは関係なく、裁判所が強制的に結論を出す手続です。
判決の結論に当たる部分を「主文」といい(民訴法253条1項1号)、請求の趣旨に対応した内容が記載されます。
「判決によらない」訴訟の終了は、
- 訴えの取下げ
- 請求の放棄・認諾
- 訴訟上の和解
があります。
訴えの取下げとは、訴えそのものを撤回して、初めから訴訟が係属していなかったものとみなすことです(262条1項)。
つまり、訴訟がいったんはなかったものとされますので、また同じ内容で訴えることも不可能ではありません。
しかし、そうなると被告はまた一から訴訟につきあわなくてはいけなくなってしまいます。
そのため、被告が答弁書などの準備書面を提出したり口頭弁論で陳述したりした後は、被告の同意がなければ訴えの取下げは認められません(261条2項)。
請求の放棄・認諾は、相手方の完全勝訴と同じ状態にする訴訟の終了です。
請求の放棄は、原告が請求に理由がないことを認めるもので、請求の認諾は、被告が請求に理由があることを認めるものです。
相手方としてはメリットしかないので、訴えの取下げと違って相手方の同意なく行うことができます。
請求の放棄・認諾は、調書に記載されることで確定判決と同じ効力が発生します(267条)。
訴訟上の和解は、裁判官の面前で両当事者が一定の内容で紛争を解決して訴訟を終了させることに合意することをいいます。
請求の放棄・認諾と同じく、調書に記載されることで確定判決と同じ効力が発生します(267条)。
訴訟の終了の中で、訴訟上の和解は最も多いです。
実務上は、訴訟の係属中に、裁判所から和解をするように勧められることはよくあります。
第2章 法改正によるIT化
この章では、民事訴訟法改正による手続のIT化について解説します。
初学者の方は全てを暗記しようとするのではなく、第1章で説明した手続の流れに沿って、重要なポイントを押さえるようにしましょう。
2-1 電磁的記録による訴状提出
従来、訴状は紙媒体で提出する必要がありましたが、令和8年5月21日に施行される法改正により、電磁的記録(オンライン)で提出が可能になりました(民訴法132条の10第1項)。
委任を受けた訴訟代理人は、原則的にオンラインでの提出が義務付けられます(132条の11第1項1号)。
2-2 電磁的記録の送達
「訴状がオンラインで提出できるなら、被告への送達もメールとかで来るの?」と思われるかもしれません。
しかし、普段使っていないメールアドレスに知らない間に訴状が送信されて、気づかないまま第一回口頭弁論期日が来てしまったら大変ですよね。
そのため、電磁的記録については、これを出力した書面を送達するのが原則となります(民訴法109条)。
つまり、これまでと同様に、訴状は被告に郵送されてくるということです。
もっとも、送達を受けるべきものが届出をした場合には、オンラインでの送達も可能となります(109条の2第1項)。
2-3 オンラインによる口頭弁論
従来は、口頭弁論は裁判所に出頭して行う必要がありましたが、令和6年3月1日に施行された法改正により、ウェブ会議の方法で口頭弁論(ウェブ弁論)が認められるようになりました(87条の2第1項)。
裁判所への出頭が必要になると、どこの裁判所に訴えを起こすか(管轄)が重要になってきますが、ウェブ弁論であれば遠隔地でも問題なく対応できるようになります。
なお、口頭弁論とは別に、争点を整理するための弁論準備手続という期日も存在します。
従前も弁論準備手続はウェブ会議が認められてはいましたが、「当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるとき」という限定があり、しかも当事者の一方は出頭する必要がありました。
しかし、令和5年3月1日施行の法改正で「当事者が遠隔の地に居住しているとき」が削除され、さらに当事者双方のウェブ会議が認められるようになりました(民訴法170条3項)。
そして、従前は証人尋問も当然出頭することが原則でしたが、当事者に異議がない場合はオンラインによる尋問も認められるようになりました(民訴法204条3号)。
2-4 オンラインによる和解手続
従前は、和解期日も当事者の出頭が必要でしたが、令和5年3月1日に施行された法改正により、ウェブ会議による和解も可能になりました(民訴法89条2項)。
このように、従前は裁判所に出頭することが原則だったのに対し、今後はむしろ出頭せずに対応することが一般的になると考えられます。
第3章 まとめ
■第1章まとめ
民事訴訟は、主に以下の流れで進んでいきます。
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原告が裁判所に訴状を提出 ↓ 被告に訴状送達(訴訟係属) ↓ 口頭弁論(答弁書を含む準備書面を陳述) ↓ 訴訟の終了(主に和解又は判決) |
■第2章まとめ
民事訴訟法の改正により、オンラインによる手続が幅広く認められるようになりました。
特に、
- 訴状の送達がオンラインで可能(委任を受けた代理人は原則的にオンラインが義務化)
- 送達も届出をすればオンラインで可能
- 口頭弁論、弁論準備手続、和解期日が双方オンラインで可能
という点を押さえておきましょう。
この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しています。
判例などの詳細な解説や、実践的な答案の書き方を知りたい方は、ヨビロン民事訴訟法のテキストをご購入いただけると幸いです。


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