【令和元年司法試験をひも解く】別件逮捕・勾留について徹底解説

目次

この記事を読んで理解できること
- 別件逮捕・勾留とは何か
- 別件逮捕・勾留の学説
- 令和元年司法試験にチャレンジ!
- 実体喪失説の致命的弱点
あなたは、
- 別件逮捕・勾留の説対立がよくわからない
- 別件逮捕・勾留でどの説を採用すればいいか悩む
- 別件逮捕・勾留のあてはめの仕方がわからない
といったことでお悩みではありませんか?
別件逮捕・勾留は様々な学説が存在するので、混乱してしまう人も少なくないでしょう。
「実務は別件基準説だけど、学説は本件基準説が有力と聞いたことがある。試験ではどの説を採用すれば正解になるんだろう?」
といった疑問を持つ人もいると思います。
結論からお伝えすると、司法試験では「どの説を採用するのが正しいか」ではなく、「この事例で適法/違法の結論を導くには、どのような説に基づきどのように事実を評価するか」という個別具体的な検討が求められます。
そのため、どれか一つの説を暗記すればいいのではなく、説対立の本質を理解した上で、具体的な事例にあてはめる能力が必要なのです。
この記事では、
第1章で別件逮捕・勾留とは何かについて、
第2章で別件逮捕・勾留の学説の違いについて、
第3章で具体的な事例検討について、
第4章で第3章の事例を前提とした、実体喪失説の致命的弱点について
それぞれ解説します。
初学者の方でもわかるように、丁寧に解説していますのでご安心ください。
ある程度学習が進んでいる方は第2章から読んでいただいても問題ありません。
特に第3章と第4章を読めば、本件基準説と実体喪失説の決定的な違いが分かるようになり、別件逮捕の理解がより深まると思います。
最近受験生が好む実体喪失説には重大な弱点があるということを理解していただけたらと思います。
この記事を読んで、他の受験生と圧倒的な差をつけましょう。
【初級】第1章 別件逮捕・勾留とは何か
この章では、別件逮捕・勾留とは何かについて解説します。
別件逮捕・勾留とは、ある事件(本件)について被疑者を逮捕・勾留するための要件が備わっていない場合に、要件が備わった別の事件(別件)によって被疑者を逮捕・勾留した上で、もともと狙っていた本件についての取調べに別件の逮捕・勾留を利用することをいいます。
捜査官「A罪で甲を逮捕したいけど、証拠がない…」 ↓ 甲が軽微なB罪を犯す ↓ 捜査官「ラッキー!」 B罪(別件)で甲を逮捕 ↓ A罪(本件)についての取調べに利用 |
例えば、以下のような事例について考えてみましょう。
【例題】 司法警察員Pは、殺人罪(本件)の容疑で甲を逮捕したかったが、証拠が不十分であった。 そこで、Pは、本件とは無関係な、被害額1万円の占有離脱物横領罪(別件)の証拠を取得し、別件の容疑で甲を逮捕した。 甲が勾留された後、3日目までは別件の取調べが行われ、甲の自白調書が得られたが、4日目以降は専ら本件の取調べが行われた。 |
このような場合に、逮捕・勾留が違法になるか否かが、別件逮捕・勾留の論点になります。
次章からは、別件逮捕・勾留についての学説と、具体的なあてはめの方法を解説していきます。
【初~中級】第2章 別件逮捕・勾留の学説
この章では、別件逮捕・勾留が適法か違法かを判断する際の判断枠組みとして、どのような学説があるのかを紹介します。
2-1 別件基準説
1つ目は別件基準説です。
これは、「別件についての逮捕・勾留の要件が満たされていれば適法である」という考え方をいいます。
別件逮捕・勾留も普通の逮捕・勾留と同じように、犯罪の嫌疑や逮捕・勾留の必要性、期間制限などから適法性を判断すればよいということです。
ここでの犯罪の嫌疑や逮捕・勾留の必要性は、本件ではなく別件の方を基準とします。
第1章の【例題】では、占有離脱物横領罪(別件)についての犯罪の嫌疑や逮捕・勾留の必要性が認められれば適法になるということです。
最も単純明快な見解であり、一般的に実務は別件基準説を採用していると言われています。
ただし、予備試験や司法試験では必ずしも実務に従わなければならないわけではなく、「逮捕・勾留が違法であるという結論を導くための理論構成」を答えなければならない場合もあります。
したがって、別件基準説だけを覚えればいいのではなく、有力な学説もしっかり理解しましょう。
【補足】「新しい別件基準説」とは?
学説の中には、「新しい別件基準説」という見解もあります。
これは、「別件による逮捕・勾留中に専ら本件の取調べが行われ、別件の取調べがほとんど行われていない場合には、別件について、逮捕・勾留の理由又は必要性が欠けていると解すべきである」という考え方です。
ただ、この見解は結局のところ2つ目の本件基準説とほとんど変わらないものであり、現在ではあまり支持されていません。
2-2 本件基準説
2つ目は本件基準説です。
これは、「捜査機関が本件取調べを目的として別件逮捕・勾留をしたと認められる場合は、身体拘束の全ての期間が違法となる」という考え方をいいます。
本来、逮捕の必要性などは事件ごとに判断して令状が必要となるところ、本件の取調べを目的とした別件逮捕・勾留を認めることは、令状主義の潜脱になるということを理由としています。
第1章の【例題】では、
- もともと司法警察員Pは殺人罪(本件)で甲を逮捕したかったが証拠不十分だったこと
- 被害額1万円の占有離脱物横領罪(別件)という軽微な事件で逮捕・勾留していること
- 4日目以降は専ら本件の取調べが行われていること
から、本件取調べを目的とした別件逮捕・勾留と認められ、身体拘束の全ての期間が違法となります。
捜査機関の意図が判断基準になるという点が、他の学説と大きく異なるところです。
【補足】逮捕・勾留の要件を忘れずに!
当たり前ですが、本件基準説に立つ場合も、通常の逮捕・勾留の要件を満たしていることが必要です。
別件逮捕・勾留の問題を検討する前に、通常の要件を満たしているかを忘れずに検討しましょう。
令和元年司法試験採点実感でも、以下のとおり指摘されています。
「特に本件基準説に立つ場合、別件の逮捕・勾留の要件の具備以外の事情を考慮して適法性を判断するため、理論的には、上記要件の検討を経ることなく違法の結論を導くことも可能であり、実際にも本件基準説を自説とする答案にはこの点の検討を行わないものが多かった。しかし、別件逮捕・勾留の問題についていかなる立場に立とうとも、身体拘束の理由となっている被疑事実について刑事訴訟法上の逮捕・勾留の要件が満たされていなければ違法であることは明らかである以上、法律実務家としては、まずはその点の検討を行うことが適切であると思われる。」
2-3 実体喪失説
3つ目は実体喪失説です。
これは、「逮捕・勾留が開始された後、起訴・不起訴の決定がなしうる状態になったにもかかわらず、その後も本件の捜査のために身体拘束を継続することは違法となる」という考え方をいいます。
第1章の【例題】では、3日目までの時点で別件については甲の自白調書が得られ、4日目以降は専ら本件の取調べが行われています。
とすえば、3日目までには起訴・不起訴の決定ができるレベルに達したといえるため、4日目以降の身体拘束は違法となります。
本件基準説と違うところは、
- 捜査機関の意図ではなく客観的な捜査状況をみる
- 全ての期間ではなく途中から違法となる
という点です。
【補足】なぜ実体を喪失すると違法なのか?
令和元年司法試験採点実感では、実体喪失説を採用した答案について、どのような場合に実体を喪失したといえるのか、なぜ実体を喪失すると違法となるのかを論述していない答案が批判されています。
「刑事訴訟法の定める逮捕・勾留の要件(犯罪の嫌疑、身体拘束の必要性)を満たした別件による身体拘束が、どのような場合に、その「実体を喪失」したと評価されるのかの判断基準を示す必要があるし、そもそも、なぜ別件による身体拘束の「実体を喪失」したと評価されれば違法となるのかについての理論的根拠が必要であるが、これらの点にまで踏み込んで論述した答案は多くなかった。」
判断基準は前述したとおりですが、そもそもなぜ実体を喪失すると違法となるのかについては、以下の説明が考えらえます。
逮捕・勾留の要件である「必要性」とは、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれに加えて、「身体拘束を継続する必要性」も要件となります。
そして、起訴前の逮捕・勾留の期間は、その理由とされた被疑事実を捜査して起訴・不起訴を決定するまでの期間であるところ、起訴・不起訴の決定をなしうる状態になれば「身体拘束を継続する必要性」はなくなるため、その後も本件捜査のために身体拘束を継続することは違法となるということです。
【中~上級】第3章 令和元年司法試験にチャレンジ!
それではいよいよ、令和元年司法試験について検討していきます。
3-1 事例
以下のとおり、問題文を簡略化して掲載します。
【事例】 警察官は、甲の強盗致死罪(被害額50万円)について捜査を行おうとしたところ、嫌疑不十分であったため、何か別の嫌疑がないかと調査したところ、甲が軽微な被害額(3万円程度)の業務上横領罪(別件)を行っていることを、甲が勤務する会社社長Xから聴取できた。(社長Xは被害届の提出自体を渋っていたが、警察官が説得して提出させた。)。 そこで、警察官は、甲を業務上横領罪(別件)により逮捕し、その後甲は勾留された。3日目までは専ら業務上横領罪について取調べをしていたが、4日目以降は強盗致死罪(本件)の取調べ時間が多くなった。強盗致死罪の取調べ時間が40時間であるのに対し、業務上横領罪の取調べ時間は20時間であった。 しかし、強盗致死罪と業務上横領罪の取調べは並行して行われ、最終日まで業務上横領罪の取調べが行われた。 捜査によって、甲に金を貸していたYの存在が浮上し、19日目にYを取り調べ、Yが甲から借金の返済を受けた旨の供述調書を作成した。 甲は、別件について否認を続けていたが、19日目でようやく自白をした。 |
【捜査経過】
勾留日 |
甲の取調べ時間 |
その他の捜査 |
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業務上横領事件 |
強盗致死事件 |
業務上横領事件 |
強盗致死事件 |
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2日 |
3時間 |
スマートフォンのデータ精査 |
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3日 |
3時間 |
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4日 |
5時間 |
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5日 |
2時間 |
2時間 |
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6日 |
3時間 |
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7日 |
3時間 |
|
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8日 |
3時間 |
事件当日の甲の動向の 裏付け捜査 |
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9日 |
2時間 |
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10日 |
3時間 |
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11日 |
5時間 |
パソコン データ精査 |
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12日 |
5時間 |
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13日 |
3時間 |
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14日 |
3時間 |
事件当日の甲の動向の 裏付け捜査 |
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|
15日 |
3時間 |
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16日 |
3時間 |
Yの取り調べ |
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17日 |
3時間 |
甲の周辺者からの聞き込み |
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18日 |
3時間 |
|
||
19日 |
3時間 |
Yの取り調べ |
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20日 |
業務上横領事件で公判請求 |
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合計 時間 |
20時間 |
40時間 |
このように、警察官は、強盗致死事件(本件)で甲を逮捕したいものの、証拠がないので業務上横領の被疑事実(別件)で甲を逮捕しました。
設問では、身体拘束の適法性について、異なる結論を導く2つの見解を説明するよう求められています。
普通に考えれば、
- 適法の結論を導く見解→別件基準説
- 違法の結論を導く見解→本件基準説と実体喪失説
ですよね。
しかし、この問題の最大の特徴は、本件基準説では違法となるが、実体喪失説では違法の結論を導くことができないという点です。
詳しく解説していきます。
3-2 本件基準説のあてはめ
本件基準説では捜査機関の意図が基準となりますが、心の中を直接見ることはできないので、客観的な事実から意図を推認することになります。
(客観的な捜査状況は、判断基準そのものではなく間接事実として用いられるという点が実体喪失説と異なります。)
■ 別件と本件の罪質の差
本件が重大犯罪で別件が軽微な犯罪の場合、本件の捜査が目的であったことが推認されます。
本問では、業務上横領罪は一般的に軽微な犯罪とまではいえないものの、被害額は3万円程度であり、被害者であるX自身が被害届の提出を渋っていました。
他方、強盗致死事件の法定刑は死刑又は無期拘禁刑であり(刑法240条)、明らかに重大犯罪です。
■ 別件と本件の関連性
別件と本件の関連性が強いことは、違法性がない方向に働く事情です。
例えば、殺人の疑いがある被疑者を死体遺棄罪で逮捕したとしても、殺人と死体遺棄は密接な関連があるため、事件の全貌を明らかにするには殺人の取調べも行う必要があります。
このように、別件と本件が密接に関連する場合、「専ら本件の捜査のために別件で逮捕した」とは認められにくいといえます。
他方、本問では、業務上横領罪と強盗罪との間に密接な関連性は認められません。
■ 別件についての身体拘束の必要性
確かに、証人への威迫や逃亡のおそれはありますが、そもそも別件の逮捕は警察官に説得されたXが渋々被害届を出したことで可能になったものです。
そのため、本来であれば別件については立件するまでもなかったことから、身体拘束の必要性も低いといえます。
■ 別件と本件の取調状況
本件と別件の取調べは並行して行われているものの、本件の取調べ時間が大きく上回り、別件の取調べ時間は半分程度でした。
このことからも、捜査機関の狙いは本件であったことが推認されます。
■ 本件についての証拠
別件についての身体拘束時には、本件については嫌疑不十分でした。
そのため、捜査機関には本件を取り調べる強い動機があったといえます。
以上の事実を総合すると、捜査機関が本件の取調べを目的として別件逮捕・勾留をしたことが強く推認されるため、本件基準説では違法の結論が導かれます。
3-3 実体喪失説のあてはめ
次に、実体喪失について見ていきましょう。
前述したとおり、実体喪失説とは、起訴・不起訴の決定がなしうる状態になった後も本件捜査のために身体拘束を継続することは違法となるという見解です。
本件基準説と異なり、原則として捜査機関の主観は考慮しないので、客観的な取調状況と身体拘束の必要性があてはめのポイントになります。
■ 別件と本件の取調状況
確かに、4日目以降は強盗致死罪の取調べ時間が多くなっていますが、それでも業務上横領罪の取調べは継続しています。
また、表からも明らかなように、業務上横領罪の裏付け捜査も継続的に行われていました。
さらに、表の19日目を見てください。
公判請求の前日だけは、業務上横領罪の取調べしか行われていないのです。
つまり、本問の勾留期間は、業務上横領罪の取調べに始まり、業務上横領罪の取調べに終わっています。
それだけでなく、19日目の時点で、甲に金を貸していたYの供述調書を作成するなど、甲の取調べ以外の捜査も行っています。
取調べの時間などを考えると、捜査機関の主観としては本件を狙っていることがわかりますが、あくまで客観面だけを見ると、業務上横領罪の捜査は最初から最後まで継続的に行われていることが重要です。
出題趣旨でも「勾留期間中,甲の弁解に対応した裏付け捜査(パチンコ店の防犯カメラの捜査,甲のパソコンの精査,Yの取調べなど)が継続的に行われてり,捜査官の懈怠による捜査の遅延もない」ということが指摘されています。
■ 別件についての身体拘束の必要性
身体拘束の必要性についても、捜査機関があえて被害届を提出させたことなどは考慮せず、客観的にみて必要性があったかを検討します。
まず、証人(X等)に対する威迫のおそれがあります。
そのため、甲の身柄を確保したまま、捜査を進める必要が存在したといえるでしょう。
そして、ここでも重要となるのが19日目です。
この日にYの取調べが行われ、甲から借金の返済を受けた旨の供述調書が作成されました。
そして、甲は、別件について否認を続け、19日目でようやく自白をしました。
このように業務上横領罪について起訴できるかの証拠は、最終日になるまで十分に集まりませんでした。
そうすると、勾留期限ギリギリまで、甲の起訴・不起訴の決定がなしうる状態ではなかったといえます。
したがって、客観的な捜査状況としては、別件についての実体が喪失したとはいえないため、逮捕・勾留は適法ということになるのです。
第4章 実体喪失説の致命的弱点
以上のとおり、本件基準説では捜査機関の主観を考慮することで違法となりますが、実体喪失説では客観的な捜査状況だけを主に見ることになるので適法となります。
このように、形式的な違いは主観/客観の区別ですが、実は本問において実体喪失説では適法となるのは、この学説には致命的な弱点があるからなのです(本問はまさにそれを狙って出題されたものと考えられます)。
それは、実体喪失説は別件の捜査と本件の捜査がはっきり分けられている状態を想定しているということです。
上の図のように、
- 前半は別件の捜査
- 後半は本件の捜査
という形で別件の捜査と本件の捜査がはっきり分けられていれば、別件の捜査が終わった時点で身体拘束の必要性が失われ、実体が喪失したと評価できます。
これに対し、別件の捜査と本件の捜査が並行して行われた場合、客観面だけを見ると実態が喪失したとは評価できません。
上の図のように、最初から最後まで別件の捜査が行われた場合、実体喪失説では違法とはいえなくなってしまうのです。
本件と別件の捜査が重なり合っており切り分けが困難な場合に、別件についての逮捕・勾留は必要だったと主張されると、ほとんどの捜査において別件逮捕・勾留を違法と評価できず、令状主義や身体拘束期間の潜脱を回避することができなくなってしまいます。
このように、実体喪失説では本問の逮捕・勾留は適法となるので、違法の結論を導くことができる見解は本件基準説しかありません。
「本件基準説は学説だから覚えなくていいや」と切り捨ててしまった受験生は、この設問で大ダメージを受けることになります。
出題趣旨でも、「刑事訴訟法に関する基本的学識,適用能力及び論理的思考力を試すものである。」とあるように、刑事訴訟法は理論面についても深い理解が必要となるのです(刑事訴訟法以外の出題趣旨では「学識」という表現はあまり使われません)。
第5章 まとめ
■ 第1章のまとめ
別件逮捕・勾留とは、ある事件(本件)について被疑者を逮捕・勾留するための要件が備わっていない場合に、要件が備わった別の事件(別件)によって被疑者を逮捕・勾留した上で、もともと狙っていた本件についての取調べに別件の逮捕・勾留を利用することをいいます。
■ 第2章のまとめ
別件逮捕・勾留の適法性を判断する際の判断枠組みとして、主に3つの学説があります。
・別件基準説 →別件についての逮捕・勾留の要件が満たされていれば適法である。 ・本件基準説 →捜査機関が本件取調べを目的として別件逮捕・勾留をしたと認められる場合は、身体拘束の全ての期間が違法となる。 ・実体喪失説 →逮捕・勾留が開始された後、起訴・不起訴の決定がなしうる状態になったにもかかわらず、その後も本件捜査のために身体拘束を継続することは違法となる。 その際に、捜査機関の主観は原則考慮しない。 |
■ 第3章と第4章のまとめ
令和元年司法試験では、別件の捜査と本件の捜査が並行して行われました。そのため、実体喪失説では違法の結論を導くことができません。
本件基準説に基づいて、客観的事実から捜査機関の意図を推認することが必要となります。
以上のとおり、司法試験の刑事訴訟法は実務の運用を知っているだけではなく、学説についての深い理解も必要です。
具体的な論証についてはヨビロン刑事訴訟法に掲載する予定ですので、ぜひご参照ください。
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